【観劇録】鳴らして楽しむミュージカル『セロ弾きのゴーシュ』
2024年8月17日、RaiBoc Hall (市民会館おおみや) にて上演された、鳴らして楽しむミュージカル『セロ弾きのゴーシュ』の感想をお届けします。
前回の投稿から4ヶ月以上も空いてしまいました。
この間にもたくさんの現場があって下書きがいくつかあるのに、なんとか書き上げられたのがこれだけという……
この作品は9/21から10/14まで有料で動画配信もされていて、それを見てからの方がこの文章の意味がよくわかると思う。
つまり、大いにネタバレを含みます。
公演オフィシャルホームページはこちら↓
↑配信のPVも上がりました!
前書き
だらだら長い上に自分の過去ツイ引用ばっかりしてるので飛ばしても大丈夫です。
このミュージカルが発表されたのは、7月15日。
小さい頃から大好きなミュージカル出演に人一倍意欲を持っていた竹内黎さんの主演作品が、まさかこのタイミングで決まるとは思わず。おめでとうと驚きが一気に押し寄せました。
竹内黎(Ray)さんの所属する龍宮城は7/22から8/21まで全国ライブツアーが決まっており、その合間にも複数のライブイベントへの出演があるにも関わらず、その最中の公演。
これはとんでもない覚悟で掴みに行ったチャンスなんだろうなと、こちらも必ず見届けなければと(チケット発売に臨む)覚悟を決めた記憶。
公演の説明文の始めはこうでした。
こども向けの作品っぽい!
楽器一緒に作って鳴らしながら見るの!?
大きなお友達(龍宮城ファンの大半のこと)が一緒に見てお邪魔にならないだろうかとちょっとだけ心配。
でも何より嬉しかったのは
原作がかの宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」であり、主演の竹内黎さんがゴーシュ役であるということ。
チェロを弾く演技をする可能性が大いにある。
実は中学〜大学の途中までずっとチェロの演奏に熱中していた人間だったために、突如浮上した好き(チェロ)×好き(竹内黎さん)のコラボにまあびっくりした。
それと同時に危惧していたのが、自分が少し弾けるだけに細部が気になっていちいち指摘するとか野暮な行為をしないかということ……(ほぼ杞憂でした)
次に、ゴーシュの個人ビジュアルが発表されました。
うん、最初はちょっとだけ右手の弓の持ち方とか、左手が猫の手になってるのとか気になったりはした。
すぐ撤回。
そして元気にフォーチュン(=見たことないのに勝手に予想すること)をかます。
説明しよう。
チェロはバイオリンの約2倍の大きさを持つ弦楽器で、バイオリンと同じ形をした木製の楽器の下からエンドピンと呼ばれる金属の棒が出ています。演奏者は自身の体の大きさや演奏しやすさに合わせてエンドピンの長さを調節します。
チェロを弾く時は椅子に座って足を軽く開き、自分の胸・両膝の内側の3点にチェロを当てるように構えます。床に接するのはエンドピン。
さっきのツイートで何が言いたかったかというと、黎くんの身長の高さ(おそらくすでに180cm超え)と脚の長さでは普通のパイプ椅子だと座面が低くて弾きにくいから、座面の高さが調節できるピアノ椅子が適してるんじゃないかということ。
またそれに付随してエンドピンの長さも長くなるんじゃないかな……ということ。
その後もあまりの反響の多さに座席数がちょっと増やされたり、後日映像でのアーカイブ配信が決定されたり、公式グッズのオンライン販売(事前・事後どっちも、受注生産あり)と嬉しすぎる展開が続き、なんとかチケットをマチソワ2公演とも確保して。
公演3日前にはスタンドフラワーを贈れることが判明し、愛溢れるフォロワーさんの企画に参加させてもらったりもして。
ようやく公演当日のことを書けます。
会場入り
さて当日。
楽器作りワークショップも参加することにしていたので、受付でその旨を伝えて会場入り。
入ったら紙皿でつくる「おさらタンバリン」と紙コップでつくる「ホイルシェイカー」のどちらを作るか選び、まずは材料を受け取ります。
最初はタンバリンにしてみました。大人だけど材料選びは本気。使うモールの色やマスキングテープの柄、飾りつけ用のシールを選びます。童心に帰るってこういうことなのか?
客席は前方がおこさま同伴者エリアで桟敷席に。
後方の固定席部分が通常チケットの席になってました。
席に着いてしばらくすると、ステージに楽団員役の淺場さんが登場。桟敷席のみんな(おこさまもたくさん)としりとりをしながら少しずつ雰囲気を作ります。思いついた言葉を臆せずしっかり発表できていたみんな、尊敬。
楽器作りワークショップ
ついにワークショップがはじまる!
ステージ上に語り部役の原田さんと楽団員の皆さん(なんと10人もいる)が合流。
おさらタンバリンとホイルシェイカー、交互に作り方を教えてもらいます。
それぞれの席で真剣に取り組む参加者たち。
作り方がわからなくなった人や困った人は、近くの楽団員の先輩(のちに先輩と判明する)に聞けばやさしく教えてもらえる親切設計。
私はマチネでおさらタンバリン、ソワレでホイルシェイカーを作りました。
難易度としてはこんな感じ。
おさらタンバリン→★★★★✩ (ややむずかしい)
ホイルシェイカー→★★✩✩✩ (ややかんたん)
(個人の感想です)
あの日作った人ならわかると思うんだけど、どちらもマスキングテープでいろんなものを留めるんですね。
マチネは私の選んだテープの粘着力が弱かったために(見た目の可愛さで選んじゃった……)全然紙皿を固定できなくてほんとに焦った。今となってはテープ替えてもらえばよかったんじゃ?と思うけど。
最後の飾り付けの工程を楽しむ余裕もあんまりなく、とりあえず作ったよね。シールとかこだわればかなり可愛く作れると思う!
逆にソワレのホイルシェイカー作りは、くっつきそうなマスキングテープ選んだし作り方も把握してたのでスムーズにできました。要はマラカス。こっちの方が頑丈だし音も鳴らしやすいので好き。
私のお友達は余裕ありすぎて、ついていけなくなっちゃった近くのお友達 (初対面) に作り方教えてあげててやさしかった。大きいお友達同士でも協力しあえる雰囲気、すごい。
実際作った楽器のレシピはこちら!
ホイルシェイカーの材料はおうちにありそうなものばかりなので、せっかくなら作ってから配信観るのも楽しいのでおすすめ。
当日の様子を撮影した動画もあるよ。
作り方を少しずつ言葉で説明してくれるからわかりやすいです。
一生懸命取り組む大きなお友達もたくさん映っていて良い雰囲気。
本編
金星音楽団入団
ワークショップ参加者は自分で作った楽器を。そうでない人はレンタルした楽器(マラカス?)を手に席に着いて準備万端。
ようやく本編がはじまります。
ステージ上手にチェロとピアノ、下手にはパーカッションの布陣。なんと全編生演奏、豪華すぎる。チューニング(音程を合わせること)してるチェロの音がよく響いていて静かにテンションが上がる。
華やかなドラムロールが響くと笑顔の楽団員たち総勢12名が登場!それぞれの打楽器を手に思い思いのポーズでキメ、インパクト十分。
とか思って見てたら
いつのまにか新入団員にさせられてた。審査って何?
余談ですが「活動写真に音楽をつける」ってどういうことなんだろうと思って調べたら、活動写真=昔の映画(もちろん音声はついてない)ってことらしい。オペラの時ピットで演奏してるオーケストラみたいなイメージか。
そして今は町の音楽会の10日前。
新入団員のわたしたちは楽器を鳴らす練習をしなくてはいけません。
まずはパーカッション熊谷さんのリズムにみんなで合わせる練習。
すでに先輩楽団員たちの話し方や表情のつけ方、振る舞いがしっかり子ども向けですごかった。慣れてらっしゃる?
次に体を動かしながら音を鳴らす練習。
通称オノマトペの歌に合わせながら6つの短い動きを順番に教わるんですが、子ども向けと侮るなかれ。普通に初見だと難しくて焦る。
全部劇中に出てくる動きから選ばれてるらしくて、どこの動きかわかると結構たのしい。
ひとつめ、トントン。トントン。
ドアをノックする動き。
ふたつめ、ぐるぐる、ぐーるぐる。
「この形に腕をセット!」って示された姿勢がとある曲の振り付けと似てて客席がザワザワしたの忘れない。おてもと真っ二つ🎶
みっつめ、ごくごく、ぐんぐん。
ゴクゴク水分チャージ!を思い出すなど。
よっつめ、コッコッ、バタバタ。
カッコウのはばたきらしいけどハトかと思った。「この動き、なんの鳥さんかなー?」って聞かれた小さなお友達が間髪入れずに「カッコウ!」と答えていたの、予習が光っていてかっこよかった。
いつつめ、ポンポン、トントン、ちょろちょろ、ふーくふく。
たぬき、ドアノック、ねずみ、ふくろうの4つ?
この辺から覚えられない大きなお友達が音を上げはじめる。
むっつめ、ぐーぐー、ぞろぞろ、パチパチ、がーぶがぶ。
もうだめだ……
ここまで全部つなげてやってみよう!にざわめく客席。でもみんな頑張っててよかった。チェロのヌビアさんとピアノの塩原さんもやってくれててうれしい。
で、練習が厳しいと噂の楽団長が客席から登場。気難しげにしてるけど、ちいさな新入団員たちの手作り楽器をニコニコで褒めてくれて優しさ溢れ出しちゃってます。
ゴーシュ登場〜本番10日前
練習に遅刻して登場、我らが竹内黎改めゴーシュ。
「すみません!」大慌てで言い訳しながらくしゃくしゃの楽譜とツギハギだらけのセロを手にパーテーションから飛び出してくる姿、眩しかった……
想像より黎くんの足が長くてエンドピンも長くてびっくりした話はあとで何回もする。
正直言うと子ども向けミュージカルに黎くん目当てで来た大人の自分にちょっと後ろめたさを感じてて、おとなしくスンってしてようと思ってたけどダメだった。待ってました!って言いたくなるくらいに胸の中がざわってなった。
弓とセロを左手でまとめて持っている様がもうチェロ弾きって感じでまた嬉しいー。あと眼鏡掛けててびっくり。
全員揃ったところで練習するのは第6交響曲。ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」冒頭の有名なあのメロディーを軽快にアレンジしてる!
↓これは世界的に有名なベルリンフィルの「田園」第1楽章
宮沢賢治の原作に出てくる「トォテテ テテテイ」、この劇中では田園に何度も登場する印象的なメロディーから取ったフレーズだったのに気付くとすげー!となります。そんな読み方自分じゃ絶対思い付かないんだけど。
さて、肝心のゴーシュのセロ。
音程は合ってないわ、リズムに追いつけてないわで楽団員みんなずっこける。
「音が遅れる」「音が外れる」「感情が足りない」楽長からどんどん指摘が飛んでくるから必死で食らいつこうとするけど追いつかない。自分でもあちゃーって顔してセロの音から目を背けちゃってる。
(この下手くそな演奏をやり切るプロのチェリストヌビアさんも相当すごいよ!)
ゴーシュ、たぶん練習はめちゃくちゃしてるから演奏技術だけはそこそこあるけど、自分のことしか考えてなくてアンサンブルに向いてないタイプだ……
頭の中では何言われても「うるさいうるさいもうやってんだ」って思ってるけど絶対言葉にはできてないんだろうな。内弁慶。
音楽に真面目でプライドが高いけど不器用で頑固なゴーシュ像が見えてくる。原作ではちょっと乱暴で自分のセロのことしか見えていないゴーシュだけれど、黎さんが演じることで繊細さが感じられる。自分だけが狙い澄ましたように指摘され続けることで全員から責められてるように感じて被害妄想が膨らみ、傷ついて余計に意固地になってる感じもするから不思議。
ここまで楽団員みんなの表情もすごいんだよね。ゴーシュのセロに聞き耳を立てるところ、呆れた顔、こりゃダメだと頭を抱える表情……役作りはご本人たちの考えたものとのちに知って、役者さんすごいとなりました。
ここで新入団員参加タイム。必死に練習に食らいつくゴーシュと一緒に、音に合わせて楽器を鳴らせます。さっき習ったやつだ!
「心を込めて音を鳴らす」のちに大事になってくるワード出てきた。
観る側としては忙しすぎたのであんま記憶ない。配信で見ると、真剣な表情で指揮する楽長の方を見つめたり客席を見たりしながらセロを弾くゴーシュがいる。
ここまでの黎さんのチェロを弾く演技のすごさについてはあとでまとめて書きますね。
セロ弾きながら歌う黎さんの歌声の響き方がまさにミュージカルって感じで、言葉がとても聞き取りやすかった。
ここのセリフ言い回しちょっと難しいんだけど、原作がそのまま再現されてて嬉しかった!
ゴーシュと動物たちダイジェスト
練習終了後、去っていく楽団員たち。
1人残ったゴーシュは楽譜を見つめ、うつむいて眼鏡を外して静かに涙をこぼす。気を取り直し、セロを手に、観客に背を向けて腰掛ける。眼鏡を掛けて、大きく弓を回して構える。
ここのゴーシュの背中と舞台後ろのスクリーンに映る影がとってもかっこよかった。最初に載せた公式PVでもちょっと見れます!
こちらに立ち上がって笑顔でセロを弾くゴーシュもまたとんでもなく眩しい……足も長い…
かと思ったら順に登場する三毛猫、カッコウ、子たぬき、ねずみの親子!
あとから見たら、それぞれの動物のテーマに合わせて彼らとの出会いのシーンのダイジェストみたいなつくりになっていて秀逸。曲のつながりも好きです。
それぞれのシーンの感想を簡単に↓
三毛猫→楽しそうにやってきた三毛猫になんだこいつ?と怪訝な顔をするもちょっと笑顔でノリノリになっちゃったり、なんでこいつが俺の指揮を取ってんだ!?ってブチ切れちゃうゴーシュが楽しい。
カッコウ→バレエのようにくるくる舞い踊る学校に合わせてセロと弓を大きく回す動きがきれい!
子たぬき→2人とも笑顔がはじけててノリノリでかわいい。
ねずみの親子→最初からねずみたちへの尊重の目つきしてて、ゴーシュの成長を感じちゃう(ネタバレ?)
曲の最後、パーテーションの横から姿を見せる動物たちがかわいくてすごい好き。
第一夜 みけねこ
ここからはまるで絵本のように原田さんのやさしい語りが入ります。
自分の小屋に帰ってきたゴーシュ。バケツの水をコップですくってごくごく飲む。現地で見た時は嚥下の音まで聞こえるようですごい演技上手かった。
一息付いたらくしゃくしゃの楽譜をにらむように確認して、セロを弾き始める。音程もリズムもまあひどい。うまくいかない焦りと自分への苛立ちがそのまんま音に出てる感じ。
とても尋常ではない様子で(ここも原作再現の竹内黎がすごかった)セロを弾き続けるゴーシュの元に訪問者。ホーシュ君って誰なの。
訪問者は人間ではなくでっかいみけねこ。今まで5、6回見たことあるってところがなんか警戒しきれなくていいよね。
ここ大好き。関根さんのいい声が無駄に発揮されてて(無駄とか言うな)
余談ですが三毛猫のオスって確率的にほとんどいないと言われててもの凄いレアなんですけど、宮沢賢治はそれを知ってて…?まあいいや、話を戻します。
長くなりそうだから好きシーン羅列する。
・思わず猫に話しかけたら人間の言葉が返ってきて「しまった、寝不足が祟ったらしい」とか言うお疲れゴーシュ
・追い払っても近付いてきてはいたずらしてゴーシュの反応を楽しむみけねこ、まじで猫そのもの
・コップの水飲んでビール飲んだおじさんみたいな反応するみけねこ
・セロ触られた時のゴーシュの焦り方、みけねこがセロをぱっと離した瞬間に駆けつけるところ
・頭抱えるゴーシュの足の下をくぐって登場するみけねこ(竹内黎の足が長すぎる件)
・気持ちが大事とか言いながらゴーシュの畑の青いトマトお土産に持ってくるの、ほんと猫
・セロについてわかったような口を利く、トロメライを弾けと指図することでゴーシュの地雷踏みまくるみけねこ
・「ぼくは先生の音楽好きですYO」ラッパーみけねこ
・ゴーシュの怒り方が楽長に似てると指摘する鋭いみけねこ なんで楽団の練習風景知ってるの?
みけねこの煽りが上手すぎてなんか押しちゃいけないスイッチ入っちゃったゴーシュ。生意気だと憤るがはたと何か思い付く。ドアの鍵を閉め、カーテンを閉め、灯りを消す。ここ、明らかにヤバい表情にゾクゾクする。
戸惑うみけねこに、印度の虎狩という狂った曲を披露するゴーシュ。みけねこへの苛立ちとこれまで自分を認めてくれない人たちへの怒りを存分にぶつけてる。
みけねこが目や額から火花を出すところ、エフェクトとかじゃなくて自前のモーションでほんとに面白かった。あと小ネタで"そんなの関係ねえ"やってたのもほんとにww
苦しそうなみけねこを見て楽しそうなゴーシュ、悪い顔しててめっちゃいいです。これ以上言葉重ねるのは自重。
さて、ここからが問題のシーン。
優しげな声を出してみけねこに近付くゴーシュ、後ろ手にマッチとランプ。
みけねこに出させた舌を引っ張って、猫のザラザラの下でマッチを擦る。
原作ではこの火でゴーシュにタバコを吸うんですけど、今回はランプに火を灯す。
このアレンジが、観る側への気遣い含め本当に最高でした。ありがとうございます。
そのあともすったもんだあって、命からがら逃げていく三毛猫。運動量半端ないな。
「このあとも楽しんでってねー」言い残して退場していく関根さん、急にメタくて笑った。
本当に楽しそうな顔をするゴーシュが見られた夜。積もり積もった感情をようやく出せた、日常のうさ晴らしができたってところでしょうか。
ちょっとすっきりした顔で伸びやかな音を鳴らしながらも寝落ちるゴーシュ、船を漕ぐ様が良い。
ある日の練習後
練習場を出ていく楽長を見送り、片付けを始めるゴーシュ。
寒色で暗めの照明に照らされ、ゴーシュのことを話しながら心底おかしそうに馬鹿にする楽団員たち。(ちょっと悪口言い過ぎじゃない?って思ったけど、後に脚本の葛木さんがXのスペースでこれはゴーシュの心の中で聞こえた声って教えてくださり、ようやく合点が行きました。)
実は1人だけ、仲間たちの調子に合わせずゴーシュのことを心配そうにしている楽団員がいたのでした。そのことにマチネであれ?って気付いて、ソワレではその人を注目して見るようにした。
ゴーシュが毎日練習してることを最初に褒めて、彼が落としてしまった楽譜を拾い集めて。でもゴーシュにはまるで届いてない。心を閉ざしてるから。
ゴーシュの「足を引っ張らないように!……頑張ります」最後のボソッとした言い方が本物でびっくりした。あれは「え!?」って聞き返されるわ。
第二夜 かっこう
前の晩よりはマシになったけど、まだ音程が外れるゴーシュの演奏。訪問者の立てる音に調子が狂う。
かっこう登場。バレリーナのようにお辞儀をしたかと思えば、鳥にしては(?)丁寧な挨拶。でもなんか変。
「音楽を学びたい」と言い出すかっこう。いい意味で人の話を聞かないというか、自分の主張を絶対曲げずにグイグイいくところが言葉は話せるのに話が通じないというか。この違和感がすごく良かった!
ここからまた好きなシーン羅列していきますね
・大真面目にカッコウの鳴き方の違いを熱弁し、ドレミファを教えてほしいとうるさく付き纏うかっこう
・呆れた顔でかっこうの本気を問うゴーシュ(足が長い)
・手(翼)を離したY字バランスがうつくしいかっこう(かっこうってバレリーナなの?)
・かっこうの真似をするゴーシュの長い手足 弓も体の一部
・ゴーシュよりよっぽど音楽とは何たるかを理解してそうなかっこうの熱弁(熱唱)
・いい加減なドレミファを弾くゴーシュに異を唱えるかっこう「あっ違います違います、そんなんじゃないんですぅ〜」のかわいさ
・得意げにドレミファソラシドの音階で「カッコウ」を披露するかっこう
・"あなたの音は素晴らしいけれど少し違う"と指摘され憤るゴーシュ
・ぐるぐる回りながらハイトーンボイス維持のかっこうの意地がすごい
・自分の音がドレミファにはまっているか考え始め、かっこうははまっていると気付いてしまい苛立つゴーシュ
苛立ったゴーシュに食ってしまうぞと脅されたあとのかっこう、一気に言葉の通じない動物に戻ってしまったようで変貌ぶりがいっそ恐ろしかった。子どもの頃見たら怖かっただろうな。
出血を表現する赤い布のアイデア、天才です。
窓を開けようとするゴーシュの焦った表情と長い手足……(この先は自重)
赤い照明に照らされ、狂ったように逃げ回るかっこうと追うゴーシュ。一瞬のリフト、まるでフィギュアスケートのような迫力。夢かと思った。
あとガラスを蹴破るゴーシュの長い足がさあ(それしか言うことないのか?)
第三夜 たぬき
いつのまにか客席に現れる子たぬき。どこか緊張感のない間の抜けた喋り方が子どもそのもの!
前の方のお客さんにゴーシュさんのおうちがどこか尋ねます。
親切なお友だちが「うしろ」って教えてくれて喜ぶ子たぬき、かわいすぎる。応援しちゃう。
ゴーシュの小屋の戸を叩く子たぬき、そろーりそろーりしてんのに待ち構えてたゴーシュに余裕で気付かれててかわいいし驚き方もかわいい。
邪気のまったくない子たぬきに毒気を抜かれるゴーシュ、思わず笑ってしまう。こんな存在には脅すほうが無駄だもんね。
好きなシーンはこちら
・バチをごそごそしながら探して取り出すたぬき 弾いてほしい譜面まで用意してきてえらい
・満面の笑みで小太鼓じゃなくセロを叩くたぬき(なのにゴーシュに怒られない)
・ゴーシュのセロのよくないところに気付く鋭いたぬきとその指摘を素直に聞き入れるゴーシュ
・たぬきに合わせるうちに他人とリズムを合わせるコツがわかったゴーシュの笑顔
・ひたすら「ぽんぽんぽん ぽんぽこぽん」ばかりの歌詞、文字にすると狂気感じるけど実際の様子を見るとなんとも可愛らしいので不思議
・たぬきと一緒にセロを弾きながらぴょんぴょん跳ねるゴーシュが楽しそうでなんともかわいい
第四夜 ねずみ
眠いけど訪問者を素直に招き入れるゴーシュ。ねずみたちの動きがちっちゃいねずみそのものでなんかおかしい。
好きシーン
・ご丁寧に栗を持ち寄って丁寧な言葉遣いで演奏を懇願する母ねずみの真剣さと子ねずみの「ちゅうぅー」の対比 なんとも言えない味がある
・ちゃんとねずみの目線に合わせて話をするゴーシュ、成長している
・大袈裟に嘆くねずみ親子のオーバーリアクション、コミカルで好きすぎる
・母ねずみさんの歌が歌詞も声も本当に良くて圧倒的優勝 ミュージカル女優さん?
・ねずみの言葉を信じてセロを弾くことを決意するゴーシュ
・子ねずみをセロに入れるときのゴーシュの手つき チェロのf字孔から中に入れるねずみって一体どんなサイズ?(宮沢賢治に聞いてみたらいいと思う)
・母ねずみが返事をする時の「チュウ」本物だった
・なんとかラプソディの途中で一瞬出てくる子ねずみ、音の大きさやリズムを変えてお客さんを飽きさせない工夫
・音に乗って音楽を楽しんでるゴーシュの優雅な動き
・病気が治って飛び上がって喜ぶねずみ親子の動きがシンクロ(滞空時間も同じ)
「お前たちパンは食べるのか?」って聞かれたあとの親子の"滅相もない!!!"みたいな様子だいすき 「おパンというものは〜美味しいものだそうでございますが」って具体的な感想述べちゃう母ねずみを"ちょっと!パン食べたことあるって思われるよ!"みたいに小突く子ねずみ、何回見ても面白い。
そしてパンを差し出すゴーシュの手つきが丁寧……
ゴーシュの手を慈しむかのように取って目を合わせる母ねずみ、真心を感じる。あたたかい。
ねずみの歌を思い返すゴーシュにも、ねずみの真心は伝わったようです。
ゴーシュがたぶん作中ではじめて寝床で寝てて、ちょっと安心した。
町の音楽会当日
それから6日が経過、音楽会の日。
超満員の客に沸き立つ楽団員たち、1人セロのエンドピンを長めに調節するゴーシュ(ここ好き)
楽団員に喝を入れたあとお客さんにもエール送ってくれる楽長、やさしさが溢れちゃってる。
演奏がはじまると、10日前とは別人のようなゴーシュのセロに驚く一同。弓も根本から先まで使えているし、本当に弾いてるようにしか見えない。
ここから、最初の歌と歌詞が対応してる!
曲調も心なしか明るくなっている。
ゴーシュの顔つきから自信がみなぎってる。
そのあと動物たちが出てきて、それぞれの曲が次々と繋がっていく流れ胸熱すぎる。少年漫画?
演奏を褒められて「僕だけではない 僕だけでは」と言えること、音の表情の大切さを理解していること。ゴーシュがこの10日間で成長したってことだ。
客席含めて全員参加で音を鳴らす空間、今見るとあったかくて泣いちゃいそう。音楽会は大団円。
一旦舞台から捌ける金星音楽団。嵐のような拍手の音がさらに大きくなってちょっと怖いくらいになるの、ライブハウスで聞いた経験ありますね。
司会者さんがパーカッションと1人2役なのすごい好き。唐突なでっかい白リボン。
アンコールの担当として白羽の矢が立つゴーシュ。馬鹿にされているとしか感じていない。そこは変わっていないのか。
憤りと共に「印度の虎狩」を弾くことを決意するゴーシュ。ここからはチェロ奏者としてのヌビアさんの意地と、役者竹内黎の音と魂の共鳴に心を奪われた。両者頭を振り乱して狂ったように弾き続ける。
この曲の凄まじさについては次からの章の最後(⑤)に書きます。
見事弾き切ったゴーシュに圧倒され、拍手すらできなかった客席。集中していた証だと思った。
舞台裏で褒め称えられても、怪訝な顔をするゴーシュ。
私はこのセリフをそっくりそのまま竹内黎さんに言いたい。
自分の小屋に帰ってきて、割れた窓から飛んでいったかっこうを思い謝罪するゴーシュ。
なんとも言えない複雑な表情を残したこの終わり方、原作の通りで好きです。
カーテンコール
"おしまい"の文字が表示されると大きな拍手が沸き起こり、カーテンコール。
黎さんの表情がゴーシュから舞台の上の竹内黎へ。他の共演者たちを見送ったあと、笑顔を見せて深く一礼。
大切そうにセロを置き、絵本を立て掛ける。
これでミュージカル『セロ弾きのゴーシュ』は完成。
いいものを見せてもらったなって気持ちでいっぱいになりました。
役者竹内黎の"セロ弾き"ぶりについて語りたい
ここまでの感想では抑えていましたが、チェロを弾いていた人間としてゴーシュのセロの凄さについて語らせてほしい。そこそこ長いので見出しつけました。
こちらのXにも書きました↓
まず今回のミュージカルは主演の竹内黎さんがゴーシュ役として歌と演技を担当。小道具のセロは実際に弾くためのものではなく、実際は舞台上手のチェロ奏者ヌビアさんの生演奏に動きを合わせ、セロを弾いているかのように見せる形でした。
前提として、チェロはなるべく早くから始めた方が良いと言われるヴァイオリンほどではないにしろ、しっかり音を出すための基礎的な動作(特に弓の使い方や力の掛け方)が難しく、レッスンではこの基礎にかなりの時間を費やす楽器。付け焼き刃で弾き真似ができるものではありません。
なのでおそらく演奏経験がない黎さんが短期間でどこまで仕上げてくるのか、勝手ながら心配はありました。
蓋を開けてみると、黎さん演じるゴーシュ(竹内ゴーシュ)とヌビアさん(以降赤ゴーシュと呼びます)のシンクロ率の高さに圧倒されました。眼鏡と髪型もすごい寄せてる。写真見てください。
①弾き始め
ゴーシュがセロを弾き始めるときは大きめにブレスを吸って入り、赤ゴーシュはそれを合図に完璧に合わせにいく。チェリストの演奏とか見てるとこのブレスの吸い方は馴染みあるものなのですが、黎くんがそれをやってるところに驚いた。
あと右手に持った弓を楽器の上に構えるときにかなり大きめに弓を振りかぶる動作、実際にチェロを弾くならオーバーだけれど、舞台によく映えてました。弓がまるで自分の体の一部かのように操っていて、魅せる動かし方が素晴らしい。
②ボーイングの巧みさ
ボーイングとは右手の弓の運び方のこと。チェロはボーイングが一番難しい(とわたしは思います)。
竹内ゴーシュを見て驚いたのが、弓の角度が弦に対してずっと垂直なこと。
弓を左右に動かす上で、力の掛け方を一定に保たないと均一な音が出ないため、弓は弦に対して垂直に保つのが基本。でも弓の根本とか先ではそれがぶれちゃったりして難しいんですよね。
今回の竹内ゴーシュは弓の真ん中あたりを使うことが多かったのでそこまで難易度高くなかったのかもだけど、それでも垂直が常に意識されてたのがすごい。
もう一つ、ボーイングと言えば弓のアップダウン(弾く方向のこと)を他の演奏者と合わせることも大切。合奏する際はみんなであらかじめボーイングを決めて楽譜にメモしたりもします。
ゴーシュのボーイングは驚異的に赤ゴーシュのボーイングとシンクロしていたんです。
(このシンクロは後に黎さんに与えられたオーダーだったことが明らかになります)
チェロ経験のある私ならこういう時はこういうボーイングになるって感覚でなんとなくわかるんですが、そんなに弾いたことのない黎さんがあそこまで合わせられるってどういうことなんだろうと……ヌビアさんの演奏してる動画とか見て練習したのかな。
ちょっとだけ、0年0組の頃に先生のお手本ダンス動画と自分たちのダンス動画を見比べて細部まで調整していた黎さんの姿を思い出しました。
どれだけの努力をしていたのか計り知れない。
③他の演奏技法のはなし
チェロは基本的には狙った音の出る位置で左手で弦を押さえ、右手に持つ弓で音を出します。
それ以外にも左手でビブラートを掛けたり、右手で直接弦をはじくピチカートなど。
竹内ゴーシュは右手の弓だけじゃなく左手も適度に指を動かしたり、ポイントでビブラートを掛けたりもしてました。
たぬきの曲ではピチカートが印象的に使われていて、その様が軽やかでよかったなー。
あとこれは演奏の話じゃないけど、冒頭の楽団練習で音程の狂いを指摘されたときに、セロ上部のペグを回す仕草を一瞬入れてたのがすごかった。
大きく音程がずれてる時はペグを回して音程を合わせます。チューニングとも呼ぶ。
④舞台に映える演奏
まず目立つところから。
セロを立って弾く場面が多くて大変舞台映えしてました!立ちながらチェロを弾くって、パフォーマンスとしては目立つのでかっこいいんだけど力の掛け方が座ってる時と違って難しいんだよね。
立って弾くシーンでは曲に合わせてセロをくるっと一回転(エンドピンを支点に一周)させるパフォーマンスが派手でよかった!
あと子たぬきと一緒に踊る時チェロの前後をぴょんぴょん飛び跳ねてた竹内ゴーシュさんが最高にかわいくって、あのシーンのGIF欲しいです。もはやセロと一緒に踊ってたね。
あとこれずっと言いたかったんだけどさ、エンドピンがめちゃくちゃ長い。
もちろんご本人の足が長いのに合わせてってところもあるんだけど、真の理由はセロを立って弾くのに合わせてエンドピンも長くしたってところでした。
それにしてもセロと並ぶ黎さんの足が長すぎて、セロのエンドピンの長さに驚いて、また足の長さに驚いての繰り返し。頭がバグるほどの竹内黎の驚異のスタイル。助けてくれ。
⑤「印度の虎狩」で見せた2人のゴーシュの共鳴
チェロ演奏の見せ場は間違いなく終盤の「印度の虎狩」、なんとヌビアさんのオリジナル楽曲。
マチネはゴーシュというより赤ゴーシュの方から、気合いというにはあまりに濃い気迫の込もったブレスが聞こえたように思えた。
超絶技巧のチェロ独奏。ボーイングが合っているだけでも驚きなのに、ゴーシュの抱える怒りや悔しさ、負の感情を叩きつける様がシンクロする。
役者の黎さんがチェロ奏者のヌビアさんと、チェロ奏者のヌビアさんが役者の黎さんと、それぞれの本分に達するほどに深い表現、同じ色の気迫を見せてきたことに圧倒されました。
ヌビアさんがこの曲の前に眼鏡を外していたところにチェロ奏者としての本気を見た。
ちなみにこの曲、実際の楽譜が販売されています。その難しさを確認したくて、自分が弾くわけでもないのに譜面購入しちゃった。
譜面見て笑っちゃったよね、鬼みたいな重音(2つ以上の弦をほぼ同時に弾くこと)と半音の嵐。目まぐるしく変わるリズム。情緒心配になるレベルだけど、弾けたらめちゃくちゃかっこいい……
技術的に今の私は弾ける自信のないレベルの譜面なんですが、ゴーシュは赤ゴーシュと並んでも遜色ない表現の深さに辿り着いていました。本当に凄い。
これは余談ですが。
練習中に試しに黎さんがヌビアさんのチェロを弾かせてもらったことがあったそうで、初心者にも関わらず良い音が出ていたとのこと。
いつか本当にチェロを弾いてみてほしいなと願わずにはいられないです。あれだけのボーイングを見せていたんだから、きっとすごいものが見られると思うんだよなー。
あとがき
本当はゴーシュ配信の宣伝を兼ねて配信終了までに書き上げるのを目標にしていたのですが、ギリギリ間に合いませんでした。無念。
でもこのミュージカルのおかげで初めて黎さんにお手紙を書くことができたし、みんなで素敵なスタンドフラワーを贈ることができました。
何よりミュージカル初主演の竹内黎を目撃できたことが本当に嬉しいです。
自身の夢を口にし続けて見事チャンスを掴み取り大成功させる黎さんの、まっすぐ突き進む光みたいな生き様をこれからも見続けたいなと思いました。
ここからは私の願望なのですが。とにかく曲と歌詞がよかったので、サウンドトラックが欲しい。
あとは映像化ですね。期間限定の配信があったのも嬉しかったけれど、永遠に見られるようにしたいという願いは止められないじゃないですか。まあその辺は公式アンケートに書きましょうね。
この作品に携わったすべての皆様に、ありがとうを言いたい気持ちです。
このミュージカルをきっかけに、素敵なご縁がまたどこかで繋がりますように。