三月の雨 (ジョビンに捧ぐ)
三月はまだまだ肌寒い。
一雨ごとに、春が潤ってゆく。
もう数日で、三月ともおさらばだ。
なんたって、四月始まりの国、
日本で、桜の季節に、高揚しないわけにもいかない。
なのに、この世は、いまだばかげた喧騒が
ダラダラと長引き、治まりそうもなくて、
なかなか本格的な春が拝めない、
というのは、うそっぱちだ。
春は手を伸ばせばそこかしこにある。
心の問題だな。
すでに、そこかしこに来日しているのだ。
ウエルカム、Mr&Mrs HARU。
ぼくはあまり大勢で大騒ぎする習慣がないし、
別に、桜の樹の下で大騒ぎしたいとも思わない、
でも、したい気持ちはわかるし、
したい人にはさせてあげればいいと思うんだけどね。
もちろん、最低限度のマナーはあってしかるべきだけどネ。
さて、まだ三月が終わらないうちに、
書いておきたいことかある。
それは、アントニオ・カルロス・ジョビンの曲「三月の水」のことだ。
ジョビンに思いを馳せながら、
この希望なき世にサウダージに託す。
ジョアンのささやきも大好きだけど、
あえてジョビンとエリス・レジーナのバージョンを聴く。
歌詞は実に散文的、と言うか言葉の羅列だけど、
実に情感が浮かんでくる、最高に詩的なナンバー。
考えてみれば、ブラジルは南半球だから
秋ってわけよね。
なので、今の季節感に合わせて、
詩のようなものをジョビンにささげたいと思います。
Untitled for Antônio Carlos Jobim
雨 傘 桜
枝 重力 言葉
見る 聴く 奏でる 三月の雨
擦る 瞑る 瞬き
桃色 淡い とても とても
水色 透き通る とても とても
歩く 止まる 歩く
知らない道 記憶違い 繋がれた犬
眼差し くもり 空
落ちる 差し出す 手
水 雨 透明 微睡
午後 隠れた太陽 微笑
歩く 止まる 歩く
川沿いの道 すれ違う
見知らぬ人 勘違い 野良猫
人の気配のない家 窓 屋根
優しさ 愛おしさ 無関心
流れる水 不透明
時間 微熱 吐息
思う 思われる
地面 揺れる 勘違い
水面 揺れる 音
重さ 深さ 静けさ
地球の反対側 めまい
知らない 知っている
回る 回す 地球儀
終わる 終わらない
時間 記憶 匂い ささやき 勘違い
永遠 僕の永遠 僕の人生
永遠 僕の永遠 僕の命
見る 聴く 奏でる 三月の雨