「スイングメイクより、スコアメイクを」 世界一を輩出する“ジョーンズ・イズム”

2020年は、男女ともに若手選手の活躍が際立つ1年となった。特にここ数年で目覚ましい実績を残しているのが、ナショナルチームメンバーの経験がある選手たち。男子では金谷拓実、中島啓太、女子では古江彩佳、西村優奈らを筆頭に、アマチュアの世界大会をはじめ、プロツアーでも優勝、そして優勝争いを演じてきた。

その面々を導いてきたのが、2015年からナショナルチームのヘッドコーチを務めるガレス・ジョーンズ氏。就任時に感じた日本人選手のメンタリティについて聞いてみた。

■スイング作りよりも、スコアメイクのメンタリティを
「2015年の就任時、選手の行動、練習の様子や環境を観察した。その中で気づいたのが、ロングゲームが中心の練習になっていたということ。ドライビングレンジでの練習がメインで、ショートゲームの時間配分が少ない。

統計的には、100ヤード以内のショットがゲームの6割を占める。スイング作りのメンタリティよりも、スコアリングのメンタリティを植え付けるために、より強調してショートゲーム65%、ロングゲーム35%のコンセプトを話し始めた」

■就任当初、金谷をはじめ懐疑的だった選手たち
「ショートゲームとひとことで言っても、色々なクラブで打つ技術が必要になる。世界的に活躍するためには、国をまたいだコースコンディションに順応する技術の引き出しが必要。日本では58度のサンドウェッジを多用する傾向があるが、オーストラリアやイギリスでは、グリーン周りが硬く、ピッチエンドランや転がす球が必要。ハイブリッドや4番アイアンで打つ引き出しも持たないといけない。

就任してすぐ、畑岡選手や金谷選手もチームにいたので観察していた。当時、日本の選手にとっては挑戦的な課題をぶつけていくので、慣れていなかったと思う。とくに金谷選手は同年に17歳で「日本アマ」に勝って、そのまま「ノムラカップアジア太平洋アマチュアゴルフチーム選手権」に出場して活躍。かなり私の話を疑っていたと思う(笑)。それでも、同時期に畑岡選手が私のアドバイスを全て吸収して活躍する姿を見て、徐々にドアが開いてきた流れがあった」

■インポジション・コンセプト
「また、チームの哲学として導入しているのが『インポジション・コンセプト』(※後述)。これはコースへの戦略の準備への考え方で、カップが切られる位置から逆算して、ティショットの置き場所から戦略的に考えていくもの。成功している選手の大半はこのコンセプトを実行しており、コースに対して非常に詳細な情報を集めて、戦略に落とし込む能力に長けている。より活躍する選手ほど、細かな情報を活用している」

※インポジション・コンセプト…コース戦略を立てる際の概念。パッティングの際、カップに対して入る確率の高い上りの真っすぐのラインのことを『ゼロライン』といい、このゼロラインにつけやすい場所のことを『インポジション』という。ナショナルチームの選手たちは、コースメモにゼロライン、インポジションのほか、グリーンの傾斜を水平器で測って細かく書き込んでいく


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