民法改正の施行で、賃貸物件の「勝手に修繕」トラブル増?
2017年に民法の一部を改正する法律が成立し、今年、施行される予定ですが、不動産賃貸借においても変更点は少なくありません。本記事では不動産会社で資産コンサルタントとして活躍する髙木弘美氏が、不動産オーナーが押さえておきたい、民法改正のポイントを解説します。
2020年、民法改正で「債権法」が変わる
日本では、明治維新後に近代的な法体系が整備されました。太平洋戦争に負けた後、一部の法律や制度はGHQ(米国)の指示で大幅に変更されましたが、民法に関しては1896年に制定されて以来、約120年間大きな変更はありませんでした。
しかし、21世紀に入り時代にそぐわなくなった部分も増えてきたため民法改正の機運が高まり、2017年に民法の一部を改正する法律が成立し、2020年に施行される予定です。
そもそも民法は一般市民の間の権利や義務について定めた法律であり、個人間の権利争いなどの多くは民法に則って解決されることになっています。民法は、主に財産に関する規定(財産法)と家族に関する規定(家族法)に分けられますが、今回は財産法の中の「債権法」と言われる部分が改正されました。
債権とは、特定の人に対して特定の行為や給付を要求する権利のことです。賃借人が契約に則って不動産への居住を求めること、不動産の買主が物件の明け渡しを求めること、また瑕疵(傷や不具合)があった場合に補償などを求めることも債権です。このように、不動産投資は債権法との関わりが深いのです。
賃貸借契約時の具体的な改正内容
債権法が改正されたことで、不動産の賃貸借にどのような変化が起きるのでしょうか。具体的に見てみましょう。
●原状回復義務
一般的に不動産の借主は、賃貸借契約を結ぶことで退去する際に原状(借りる前の状態)への回復を求められる「原状回復義務」を負うことになります。国土交通省が発行したガイドラインはあるものの、原状回復義務に関する法律上の規定はなく、費用負担などを巡ってトラブルになることも少なくありませんでした。
今回の改正民法では原状回復義務が明文化され、借主の故意や過失による損傷は借主負担で修復されることになりました。ただし、「経年劣化による損傷は借主の原状回復義務から除かれる」ことも明記されています。
●連帯保証人
不動産の賃貸借契約では借主が連帯保証人を立てることが一般的ですが、その保証額には制限がありませんでした。そのため、保証額が高すぎる場合に保証人と賃貸人の間にトラブルが発生するケースもしばしば見られました。
しかし今後は事前に保証の極度額を決めて、賃貸借契約書に記載することが求められるため、保証人はあらかじめ保証の最高額を把握した上で契約を交わすことができるようになります。
●物件の修繕
これまで借主は、物件やその設備に損傷などが生じても、勝手に修繕をすることができませんでした。改正民法では、借主が修繕の要望を出したにも関わらず対応してもらえなかった場合や急な事情がある場合、自ら修繕を行い、その費用を後日貸主に請求することが認められます。
借主にとってはメリットが大きい改正ですが、緊急性や修理の必要性の有無を巡って貸主とトラブルに発展する可能性もあります。
●賃借物の一部使用不能時などの家賃減額
日本は地震や水害などの災害が多く、それが原因で借主が入居している不動産の一部が損傷することがあります。これまでは、借主からの要求があった場合のみ、貸主は家賃の減額に応じる必要がありましたが、改正後は請求がなかったとしても、損傷が発生した時点で貸主に減額の義務が生じます。
また、現状では部屋の一部「滅失」のみが対象であるのに対し、「使用及び収益できなくなった場合」も含まれるようになるため、減額規定の対象範囲が広がったと言えます。
引用:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200205-00025318-gonline-bus_all