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56th ALBUM "ZIGA" セルフライナーノーツ

~はじめに~
はじめに、と書きつつ別にここは読まなくても良いのですが、一応今作は46thアルバム"EGO"の続編的な立ち位置で制作を開始したはずだったアルバムであり、がしかし途中からどんどんその意図とズレた曲を作り始めて、結局のところ精神性的な観点で言えば引き継いでいるとも言えないことも無い別のアルバムになったので、これは続編ではなく別のアルバムです。


01. In The Dusk/黄昏の中で

1曲目に2曲目っぽい曲を配置したら何周か回って面白いかもしれないと思って作りました。しかも今回のアルバムのコンセプトから完全に外れているのでいよいよ意味が分からない。コンセプト外にある存在がアルバムの冒頭を飾っている謎さを楽しんで頂けたら嬉しいです。

系統としてはアニサKISSに近いかな。ペラッペラの紙切れみたいなギターリフで作るソフトでもハードでもない気怠いロック。夕焼けバックにちんたら演奏してるイメージ。どっちつかずなロックって何故だか魅力的に感じてしまいます。周回遅れ過ぎて一番先頭を切っているように見えるそのダサさがカッコいい。

ギターの音作り、ここ最近は結構数種類重ねてエフェクター嚙ませたりして凝っていたのを今回はやめました。重ねて重ねて太くするのは他の曲でやっているし、In The Duskはウナギじゃないっていうか、焼き鳥缶、串にすら刺さってない焼き鳥。

仮テイクの段階では音階を担当する全てのパートがほぼ左チャンネル、真ん中にリズム隊、右ががら空き、という凄く偏ったMixにしていたんですけどちょっとあまりにもあんまりだったので右にチュービーなシンセサイザーを追加して一部Mixを変更しました。

フレーズとフレーズを繋ぐような「ドゥドゥパァッ!」ってドラムのリズムに製作中萌えに萌えてしまって(一時的なマイブームが到来)一度全ての繋ぎ目に入れてみたところ、該当箇所が来るたびに頭の中に謎のドヤ顔ぽっちゃりおじさんドラマーが浮かんでくるようになり、しかもそやつがずっとこっちを見てくるので嫌になってやめました。


02. My Stubborn Heart/強情ゆえ

弛いハードロックに民族音楽的なタム回しのリズムをぶつけて、和風出汁と一緒にタジン鍋にぶち込んで小1時間煮込みました、というような楽曲。どこの国の料理なのかよく分からない。

作り方としてはIn The Duskとほぼほぼ同じなのですが、こちらのほうが後半部にかけて明確な盛り上がりパートを設けてあるので気持ち派手めに聴こえるかもしれません。シンセレスなのでより野性的な雰囲気でもあります。

一部ギターパートを逆再生して重ねてあったり。この手法はここ最近のアルバムでは必ずと言って登場する手法です。その箇所だけ時空が歪んだ感覚になるので面白いかなぁと思ってつい使ってしまいます。

ちなみにタイトルは直訳すると"私の頑固心"になりますが、えげつないくらいダサいので異訳的に"強情ゆえ"にしました。頑固心(がんこしん)て。


03. Dancing Light Bulb/踊る電球

スパッとサクッと終わるタイプの小品枠。コードとメロディー2つがあればそれで成り立ってしまうそうゆう小賢しさのないものが欲しかったので作りました。メロディーが単調な分、リズムには拘っています。

ジャンルとしては一応テクノポップを意識しました。これがもう少し重たい音になるとテクノディスコに片足突っ込み出す、というのが私の認識ですが間違っていると思うのでその手のジャンルに詳しいかたごめんなさい。怒らないでね。

最後の最後だけサンバ調になったと思いきやそのまま速攻終わるのが個人的お気に入りポイントです。あそこからリズムだけ残してそのまま続けていってまたメロディーが戻ってきて、とやれば延々続けられるタイプの楽曲だと思うのですが私はそうはしない(確固たる意志)


04. Nonsense/つまらないわ

「手の届く範囲に存在するものを集めて丸めた泥団子どすえ」をやってみたやつです。要するにメロディーにしてもリズムにしても新しさを求めちゃいけない、オール手癖で作らなきゃいけない、という縛りのもと生み出したのがこれです。考えないことがこれほどまでにつまらないとは。そうした想いからタイトルがNonsenseになりました。

これの最大の問題は、メロディーが超直近作のColorful Insultsと駄々被りしている点です。Demo製作段階から完全にそのことに気づいてはいたのですが、それを意図的に直してしまうと縛りに反するため見て見ぬふりをして完成系まで持っていきました。

流石に全部焼き増しになるとニューアルバムに入れる意味が皆無なので、ギターのブラッシングを幾つか重ねて厚みを出しました。この概念としてのギタリスト達は延々と同じ箇所をブラッシング(厳密にはブラッシング奏法とは微妙に異なるけれど表現しにくいのでご勘弁を)し続けています。何が彼らをそうさせるのか、若干怖いですね。


05. Factory/工場

イチオシです。プリミティヴ(原始的)なテクノはこれまでにもたくさん制作してきましたがその中でも一番お気に入りかもしれない。ずっと出したかった音をやっと出せたかなみたいな。

キックを3つ重ねて、自作のリズムパターンを2倍速にして乗せて、仕上げに効果音的な要素を加えて完成させています。効果音的な要素はフリーの環境音サンプリング等を使うのではなくて、シンセやドラムマシーンでそれっぽい雰囲気のものを鳴らしています。

53rdアルバムに収録されていた"Inorganic"の上位互換といった趣がありますが作っていた最中は特に意識していませんでした。


06. Ziga/自我

アルバムタイトル曲ですが完成したのは一番最後です。バランサーが1つ欲しいなぁと思ってスルスルっとツルっとパパっと作りました。その割には結構良い出来なのではないかと個人的には思っています。リラックスして制作に臨んだのが良かったのかもしれません。ある意味では4曲目のNonsenseに近いかも。ちゃんとしている版Nonsense。

リズムは4つ打ち、メロディーはオリエンタル、音使いはトランス、この3つは私の作品では定番で、その定番をやりつつ少しだけ新しい空気も感じて頂けるようにプチ工夫を施したのがこのZigaです。ダンスミュージック過ぎない仕上がりというか、リズムに引っ張られ過ぎて、メロディーを活かしいきれませんでしたとならないように作っています。

シンセサイザーに意識がいきがちですがギターも結構鳴っています。結構どころか終始渋いリフを引き続けています。元々はこの渋いギターリフをメインにしてCyber Punk Societyってタイトルで曲を作る予定でしたが1曲丸ごと主役張るには地味なリフだったので、相性が良さそうなこちらのZigaに支え役として引っ張ってきました。

最後のドリルみたいなアウトロはハイハットを2種類重ね合わせてから細かく刻んで連打させたもの。この部分だけマスタリングしていないので凄く尖った音になっています。次曲に繋ぐならばこれぐらい突き放さないと駄目な気がして。ぶち壊されて終わるような。


07. As An Experiment/実験として

"人間の都合で実験として感情を受け付けられたロボット達が人間の都合で海に廃棄されていく世界"がテーマ。55th公開後に所用で帰郷する機会があってその時に思いついたアイディアでした。帰郷理由があんまり明るいものでは無かったこともあり、ダークな世界観になっています。

憂いのトランスミュージック的なモノには11thアルバムぐらいからずっと挑戦し続けていて、これがその最新型です。センチメンタルでノスタルジックなトランスなのだけれど、静かに燃えている、何処かに怒りを感じ取れるような音楽が作りたくてずっとチャレンジしていますしこれからも恐らくチャレンジし続けるはずです。

元となったのは練習がてらポチポチ打ち込んでいたメタルパーカッションの作曲ファイル。USBを漁っていたら出てきたファイルで、2021年のもの。多分金属的な新曲を作ろうとして途中で投げたと思われますが、聴き返したら中々良かったので膨らませてみることにしました。

メロディー、コード、リズム、それぞれが相性が良いか悪いかのスレスレに位置しているというか、合致しきらずに捻じれたまま進行していくような構成になっています。リズムに関していえば、BPMが一定であろうとパートごとの音数やその重なりによって、耳で聴いた際のテンポ"感"が揺らぐというのは往々にして起こりうることだと思いますが、そうした現象が随所随所で発生しているのがこのAs An Experimetです。

あと、これは楽曲そのものの話ではないんですけど、この曲はジャケットが未だかつてないほど抽象的でした。あれは世界観と関連する液体を連想させるものとして考え付いたものです(燃料/涙/海/涙以外の体液など)。ロボットの視点で考えると鬱屈としたモチーフであることが分かります。


08. Abyss (ZIGA Mix)/深淵

カトリさんにジャケットを担当して頂く事ありきで制作した楽曲。もしそうゆう話になっていなかったら同タイトルの全然違うものになっていた可能性が高いと思います。めちゃめちゃ雰囲気もののAbyssやハードロックAbyssが生まれていたかもしれません。

カトリさんジャケ曲となれば、サイバーorスチームパンクをニューレトロフューチャーよろしく味付けしたものにしたい。43rdや51stの要素も感じられるものにしたい、という考えがあるのでその辺を露骨に意識しながら作りました。ピアノの循環するフレーズとか51st収録のMedusaだし(Medusa自体はジャケット担当して頂いていないんですけどね)

ちなみに先行版とはミックスが違うアルバムバージョンです。こちらのほうがスネアの主張が抑えめ、あと新たにハイハットのパターンが追加されています。今となってはこちらをオリジナル版として発表したかったなぁと思ってしまいますが、なんか焦っちゃってたからしょうがない。もうジャケット誰にも描いてもらえないと思ってたからなんか焦っちゃった。

先に完成していたAs An Experimentが言い方悪いけど結構小賢しい作風だったからそれに続く曲は分かり易いほうが良いかなと思って、先行版は全部ベタ踏みで鳴らしているようなリズムにしていたんですけど、流石にスネア連打しているのは無骨にもほどがあるので気持ちボリューム下げて、音数を減らしました。

機械的なパーカッション、循環ピアノ、歪んだヴァイオリン、ニュートロなシンセのメロディー、この辺が揃えば大体43rdっぽく、51stっぽくなるので全部詰め込みました。全部乗せ。

ちなみにですが、5~8曲目までは"人間の都合で実験として感情を受け付けられたロボット達が人間の都合で海に廃棄されていく世界"のお話が時系列で並べられています。若干As An Experimentが回想っぽいけど。頭の中で色々とイメージしながら聴くと6曲目のアウトロがより一層怖く聴こえるはず。


ということで56thアルバムのセルフライナーノーツでした~。
ここまで読んでくれてありがとう。またね~('ω')ノ

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