あこがれてサンドウィッチ
ホームステイとは戦いである。己の常識を疑い、文化の違いで一瞬納得しそうになり思いとどまる。とくに食事。
その1 ランチ
ホームステイをする前、楽しみだったこと。お弁当である。サンドウィッチとリンゴ、あとスコーンとか。洋画の中のワンシーン。おぉアメリカだぁみたいなランチセット。
アメリカじゃないけどね。
さあいよいよ、初めての登校の日。
今日のお昼は、、、サンドウィッチとクッキー。
おっふ this is America. これですよ。サンドウィッチのソースがおいしい。
家に帰って、あのソースおいしかったよと伝えた。この時はほんとにおいしいと思っていたんだ。
基本的に、お昼はハムとレタスとソースが入ったサンドウィッチ一つとお菓子(クッキーとか)。ホストマザーがごはん作る気力がないとき(割と頻度高い)は冷凍庫に入ってる冷凍ブリト―を持っていく。ちなみに、語学学校にはレンジがロッカーみたいに並んでて、お昼になると、みんな持ってきた弁当とかを温めていた。
最初の二か月は洋画とかアメリカンドラマへの憧れみたいなのも手伝ってかお昼は五分で食べ終わっていた。
サンドウィッチ生活も三か月に入った頃、サンドウィッチを食べきる所要時間がどんどん増えていく。
そして、いつしか30分のお昼休み中には完食することができなくなった。
終わらない咀嚼。拒絶する喉。みんな、水筒はもったか?
ううぅサンドウィッチのソースの味が濃すぎるんだよおおおおおおおお...
いや、このソースおいしいね!て言ったら二か月ずっと同じものだとか思わないじゃん... しかも、薄味なら二か月続いても食べれたけど味がめっさ濃い。正直キツい...
水で流し込むと口いっぱいに広がるソースの味。
うーん ゲ ボ り そ う☆
母に叩き込まれた出されたものは体調が悪いとき以外は全て食べきるというもったいない精神全開のポリシーが、残すことを許さない。
意地でも食べる。ちくしょう。
減らないサンドウィッチ。
死んでいく目。
時計に目をやる。
あれ?なんでもう昼休み終わってるの?
最終的には、ホストマザーに頼んでソースを入れないようにしてもらった。この頃には、憧れマジックが全てとけ、あんなにおいしいと思っていた冷凍ブリト―の生地がまるで新聞紙。上から食べても下から食べても新聞紙。
ソースなしのサンドウィッチ、美味しいか?あのソースよりまし。以上。
そして気づいた素材の味…
うーん、、、食パン、ぱっさぱっさだなぁ。しかも唾液で粘土のように歯にくっつく。
なんだこのしなしなレタスは。
ハムは、ハムですね。うん。
ちなみにこのずっと同じおいしくないサンドウィッチ問題はホームステイ留学生の共通の悩みであるらしく、語学学校のゴミ箱からサンドウィッチがのぞいていることも珍しくなかった。もったいないね。
新たな道を模索する者もいる。
私の友人のメキシコ人はサンドウィッチにポテトチップス挟んで食べてたよ。まねしてみたけど、わりと美味しかった。
「いつも同じクッキー食べてるね。それ好きなの?」
うん。違うよー? 最初はお菓子がランダムで入っていたのだが、この国特有、まあカナダなのだが、ねんかね、ねっちょねっちょするの。歯にこべりつく。
そしてガツンと喉にくる甘さ。甘さのストロングゼロですかつって。このチョコチップクッキーがねー、一番食べやすく、腹も膨れるのだ。
なので、いつもこのクッキーを台所の棚から取って持って行ってた。
クラスメイトの私の認識がいつもチョコチップクッキー食ってるやつになる程度にはクッキーを食っていた。
そして気づいてしまった真実。
洋画の学校の食事シーンででてくるサンドウィッチがピーナッツバターなのは、あれくらいシンプルなものの方が飽きないし食べやすいからだ。
ちなみにホストマザーの息子さんのサンドウィッチはピーナッツバターだった。
なんでや。
わ“だじも”ぞれ“が よ”がっっだ….
今回の教訓。
憧れブーストは二か月もたない。
留学に行った反抗期の息子は母の弁当の偉大さに気づくであろう。
たかが昼飯、たかがサンドウィッチ、されどもサンドウィッチ。