オタクあいそれーてぃど
課題徹夜中午前三時ごろ
A宅にて
B「課題終わりそう?」
A「ああ、あとちょっと」
カタカタカタカタ
B「...なぁオタクってなに?」
なんだ急に。Bは目をパソコンから離さないまま。
A「なんかをすごい好きな人だろ。まあ大体、アニメとか漫画とかを好きな人を指していると思うけど」
B「なんか最近、前にお前が勧めてきた漫画のアニメ流行ってるじゃん。何か映画化もされてすごい経済効果になってるって」
A「あぁあれな。おもしろいからな。やっと興味出たのか? 漫画貸すぞ?」
B「あぁ課題終わったらな。それでさ、コスプレとかしている人いるじゃん」
A「めっちゃクオリティ高い人とかいるよな」
B「コスプレはしないの?」
A「いや、しないけど」
B「なんで?」
A「コスプレは見るだけでいいや。やろうとは思わないなぁ」
B「それはお前がブサイクだからか?」
A「おぅ?喧嘩なら買うぞぉ?」
B「もしお前が衣装を自作出来て、カメラ、化粧の技術もあるイケメンならコスプレする?」
A「...しないな」
B「なんで?」
A「俺は別にキャラになりたいとかは思わないからなぁ」
B「お前さ、グッズとかもあんま買わないじゃん」
A「画集とか設定資料とかは持ってるよ」
B「でも、フィギュアとかポスターとかはないよな。この部屋」
A「まあな...」
B「なんか、SNSとかで見るオタ活みたいなの、大体グッズこんなに買っちゃったとか、コラボカフェ行ったり」
A「そうだな、推しが出るまでランダムのガチャ回したりな。あれはあれで楽しそうだけど」
B「お前はオタクと言えるの?」
うっ。課題を進める手が止まってしまった。
A「まあ、好きにはいろんな形があるし言えると言いたいとこなんだけど、それマジで最近悩んでるからあんま突っ込まないで...」
B「あ、そうなの?ごめん」
A「いや、いいよ。 ...なんかSNSとかでそういうのを見るたびにさ、自分と同じ作品好きな人がたくさんいるんだなぁてうれしくなると同時にさ、オタクはこうじゃないといけないって押し付けられてる感じがして」
B「そうなのか?」
A「まあなぁ。特に、グッズとかにお金をいっぱい使ったりすることはなぁ。どうしても特定のキャラのグッズが欲しいとかはないし、自分の部屋を好きなキャラに囲まれたいとかもあんまないんだよね...」
B「まあグッズの金の一部は作者に行くと思うから作者に貢献というか還元できるしな」
A「いやそうだよ?そうなんだけど...ちゃんと単行本は買ってるし...」
単行本が一番作者の利益になるし...
A「てかお前やたら聞くね...なんかあったの?」
B「...いやほら、最近ニュースとかでも話題になること多いじゃん」
A「そうか...いや買おうかとも思うことはあったよ?缶バッジとか。でも何ていうか特別好きなキャラがいるわけじゃないし...」
B「推しってやつか。いないの?」
A「いや、まあその推しっていう文化もよく分かんないんだけどさ」
魅力的なキャラがいるのは分かる。ただ、その熱に圧倒されて自分もこのキャラが好きって言えなかったことがある。
A「キャラというより、その漫画の世界そのものが好きなのよ。作者さんの描き方がすごいなぁて思ったり、世界観とか設定とか調べたりして妄想するのが好き」
だから設定資料や画集は持っている。
B「ふーん?」
A「あと、ただ単に人に見られているっていう感覚が苦手だからあまりフィギュアとかポスターは部屋に置きたくない」
B「そんなもんか」
A「金をいっぱい落としたら偉いのかな?とか確かに好きだっていう気持ちが目に見えて伝わるからなぁとか。そんなこと色々考えてたんだよ... でもよく分かんなくて...」
昔、好きだった漫画がアニメ化してヒットした。雑誌に一話が掲載されたときに心を奪われその世界に引き込まれた。それから、毎週その雑誌が出るのが楽しみだった。次はどうなるんだろうとか展開を予想するのも楽しかった。アニメのおかげで人気が爆発的に増えたとき、自分のことのように嬉しくなった。SNSでその漫画の話題で盛り上がっているのを眺めてニヤニヤしていた。ただ、人気がでるにつれ周りの雰囲気についていけなくなった。SNSではコラボカフェで欲しいキャラのコースターが出るまで引いたりする人がたくさんいた。キャラの誕生日を祝うケーキを作ったり、推しへの愛を叫んでいた。
そういうのを見ていたら、俺なんかがこの作品のオタクといってもいいのだろうかと思ってしまった。
俺は愛が足りないんじゃないかと。
B「いや、なんかごめん。思ったより真剣に悩んでたんだな」
A「いや、いいよ...」
オタクあるあるがあんまり自分に当てはまらなくて勝手に落ち込んだこともあったなぁ...
B「まあ、あんま偉そうなことは言えないけどさ。愛って目に見えないしいろんな形があるじゃん」
A「うん、まあ」
B「そして愛にもいろんな種類がある。例えば恋愛でもさ、あるカップルにとっての愛の示し方とか関係性が他のカップルのそれらと同じかっていえば違うじゃん」
A「うん」
B「それにどっちが正しいかという話ではないわけで。問題は、本人たちが好きかどうかだから」
A「お前彼女いたことないのによくそんなこといえるな...」
B「うるせえ。まあ自分の好きが間違っているってことはないんじゃないの?少なくとも、お前は違法サイトとかで読んでるんじゃなくて単行本ちゃんと買って読んでるんだろう?」
A「うん」
B「それにおれはお前が漫画好きだっていうのは話してて伝わってくるし、それで読んでみたいなと思ったしな。お前は立派なオタクだよ」
おぉ友よ、お前のその言葉で俺は救われ...
B「だから、そのいまアニメ化で話題の漫画貸して」
A「ん? 課題は?」
B「終わった」
???
B「いやさぁ、お前そろそろ終わりそうだったからさ。俺より先に終わるのなんかイラつくから話ふって手を止まらせようとしました。ゴメン☆」
A「おい...」
B「いやぁわりとマジで悩んでたみたいだったからそれはほんとゴメン」
A「...」
Bはパソコンを閉じ立ち上がった。
B「コンビニ行ってくるけどなんかいる?」
A「え?おま」
B「おっ いまコンビニであのアニメのコラボ商品あるらしいな」
A「え?ちょ」
B「コラボアイスあったら買ってきてやんよ」
玄関を開けて出ていくBを口をあんぐり開けたまま見送る。
A「...いや俺のしっとり回想パート返せぇええええええ!!!!!!」