腐女子が見たOMORI
※こちらの記事はOMORIのネタバレを大量に含みます。本作はネタバレによるプレイ感の変化が大きいため、必ずクリア後にお読みください。
※こちらの記事には腐女子カルチャーが大量に含まれます。
先日、OMORIをプレイした感想をプレイ済みの友人に話していたところ、非腐女子の友人と腐女子の私との間で一部の解釈が異なることが発覚しました。
そこから腐女子の目線で見た時のOMORIに対する所感をまとめることが、考察される方への一助となるのでは?と思いつきました。
つきましては以下、腐女子の目線がてんこ盛りの文章が並びます。お読みになる方はどうぞご容赦ください。
また、以下の考察はあくまで一腐女子の解釈であり、腐女子を代表する解釈ではないということをご承知ください。
目次
①バジルからサニーへの感情について
②スイートハートについて
③その他、腐女子的あるあるポイント
まとめ
①バジルからサニーへの感情について
友人と私で最も意見が分かれたのがこちら。
私の目から見ると、バジルからサニーへの感情は、サニーがバジルへ感じている友情とは異なり、恋かそれに近い感情です。そして、惚れた人と惚れられた人という強い権力勾配が二人の間にありました。
恋をしているので、サニーが殺人をしてしまったかもしれない状況で、バジルは真っ先にサニーの保身を考えます。自らの手を汚すことも厭いません。
むしろ、殺人とその隠蔽という大きな秘密を二人で共有することで、二人はより深く精神的に結びつく。咄嗟の判断ながら、深層心理的にはそうした打算もあったかもしれません。
そして、秘密を抱える見返りにずっと一緒にいる事を約束させるのです。策士ですね。腐女子的にはこの辺りの流れはもはや婚約と同義です。
ところが、サニーは自分のしたことを全て否定してしまいます。その際、隠蔽に関わったバジルのこともまた、彼の中では忌まわしい記憶として封印され、忘れ去られるべきものとなりました。ブラックスペースで何度もバジルを殺すのは、もしかするとバジルが隠蔽を提案しなければこんな状況にはならなかったはずだ、という責任転嫁と怒りが含まれているかもしれません。いずれにせよサニーは引きこもり、バジルと一緒にいるという約束を破ります。
バジルからするとこれは誤算です。特別な人を繋ぎ止めるために悪事に手を染めたのに、むしろ離れ離れになった。隣にサニーがいれば、自分が何のために手を汚したのかを忘れず、罪悪感さえ飲み下せたかもしれません。しかし現実には会えなくなった。このことが見捨てられたという悲しみと絶望に繋がり、彼の危うい心の均衡を乱し、罪悪感に押し潰されるという本編の状況へ繋がりました。
つまりサニーが約束通りずっとバジルのそばにいれば、バジルがサニーの分まで罪を背負い、恋心の力で罪悪感をねじ伏せ、事故は明るみにならなかった可能性もあります。しかしサニーはバジルの特別な感情には気付かず、どうしてバジルがサニーのために殺人の片棒をかつぐという献身を見せたのかもよく分かっていないため、アフターケアの必要性に(当然ですが)気付けなかった。その上バジルには直前まで知らせずに引っ越すことになり、それがバジルの見捨てられたという感情に油を注いで爆発させてしまった。
あと1日…の夜のやり取りの裏側や、意味深に月を見上げるバジルの内心については、恋という補助線を引くと理解しやすくなる点が多くあります。
②スイートハートについて
本筋とは関係ないように見えるスイートハートのパートについて。
結論から言うと、スイートハートは「一部の腐女子が好きがちな破天荒な魔法少女キャラ」であり、彼女のパートはサニーの内面の考察にはあまり寄与しない部分だと考えています。
あるいは何らかのフリーゲームのオマージュなのかもしれません。いずれにしても、サニーの心の中の楽しい妄想の部分であり、それにしては長尺取ってるな〜という印象です。
ここからはゲームの話というより、一部の腐女子にとってのあるある話になるのですが、腐女子の中には破天荒な魔法少女(っぽい)キャラが好きな層がいます。
世界の理からは外れた所にいて、何でも魔法で実現することができ、めちゃくちゃな理論で無茶苦茶するけど多くの人から愛される、そんなキャラを好む層がいます。私もそうなのでよく分かります。
こういう子が好きな腐女子は、たいてい好きな男性キャラを女体化してそういう魔法少女にする創作を行ったりします。推しが好き放題やって誰からも愛される世界、見てみたいですからね。
そういう腐女子心理を濃縮したエッセンスをスイートハートには感じました。相方のスペース船長が振り回される役回りなのもすごくそれっぽい。
③その他、腐女子的あるあるポイント
その他に感じた腐女子的なあるあるについて書き散らすパートです。
・幼馴染みんなサニーのことが好き
総受けの構図です。なんなら人助けをすることで街中の人がサニーを好きになるので、街の住人×サニーみたいなところがあります。
・花
腐女子は花言葉好きがち。花を特定キャラの象徴にするのもすごく女性らしい感性だと思いました。
・女性キャラとの恋愛の可能性が少ない。
プレイにあたって必須の女性キャラはマリとオーブリーしかいません。RPGにしては少なめ。
マリは可愛らしい女性として描かれているものの、パーティーには同行しないし、そもそもサニーの姉なので恋愛の可能性は排除されています。
オーブリーは攻撃力が高く、しかも作中でグレるので、女性でありながらも男性的な暴力性を内包するキャラとして描かれていて、実質的に準男性のような立ち位置にあると思います。
なので女性らしいキャラとの恋愛の可能性は少なく、その分ヒロイン役はバジルが担っている感じになっていて、この構図はかなり腐女子謹製の感じがあります。
まとめ
腐女子から見るとかなり「腐女子創作のあるある」が詰まった作品となっているのですが、それをちゃんとストーリーのある一本のRPGとして仕上げている点が素晴らしいと感じました。作者のOMOCATさんの情熱を感じます。
また、非腐女子の友人がそういった要素に気付かずに最後まで楽しめたことから、うまいこと腐女子の萌えを創作に取り入れつつ、腐女子ウケに偏らない作品になっていることも非常に良い点だと思いました。
分かる人には分かるけど、そうじゃない人にも楽しめる作品としてとても完成していると思います。こういう作品が作れるんだなという衝撃を受けた作品でした。面白かったです。
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