「同じ想いの人に代わり、私が動いた。」ふむふむさん
このマガジンではクラウドファンディングを成功させた方々に、プロジェクトへの情熱や人の心を動かせた理由をインタビューし、ご紹介しています。
今回ご紹介するのは、イベント開催にあたってのゲスト3人分の「交通費(飛行機代)」を集めるというクラウドファンディングを成功させたふむふむ(@pxZcNBVrWVa3G6E)さん。
フォロワー数が100人ほどだったふむふむさんの『飛行機代支援Polca』。
「イベント企画のため」ではなく「イベントに来るゲストの交通費」が目標という、一風変わったクラウドファンディングでしたが、結果は見事成功。
成功に至るまでには「人」を大切にし行動したふむふむさんの濃密なストーリーがありました。
ふむふむさん / アウトプットLAB下読み会マネージャー。サイボウズ式第2編集部、書くンジャーズにも所属し、日曜日に毎週決まったテーマでnote執筆中。普段はNPO法人、ライター業に従事。「やれることをやっていったらどんどん増えていった」と語る。
なぜ、ゲストの飛行機代を支援しようと思ったのか
――イベントの開催ならわかるのですが、イベントに来るゲストの交通費を支援というのは珍しいですね。何がきっかけだったんでしょうか。
ふむふむさん:2019年8月10日に福岡で開催された「『未来のチームの作り方』新刊トークイベント」がきっかけです。
――どんなメンバーが登壇したイベントだったんですか?
ふむふむさん:「《働きやすさ》を考える メディアが自ら実践する「未来のチーム」の作り方」著者であるサイボウズ式編集長の藤村能光さん、藤村さんが参加されているWasei Salon 主催の㈱Wasei代表の鳥井弘文さん、Wasei Salonメンバーの平山高敏さんをゲストに迎え、アウトプットLABの池松潤さんがモデレートを務められたイベントでした。
――このイベントの何がそんなにふむふむさんを惹きつけたのでしょうか?
ふむふむさん:トークセッションが素晴らしかったのはもちろんですが、その後の交流会が言葉で言い表せないほど心に残っていました。生き方や仕事論についてフラットな関係で飲みながら話す会が、とても心地よかったのです。
――「もっと話を聞きたい」と思ったわけですね。
ふむふむさん:はい。すばらしい交流会の場で思ったように話すことができなくて、「もっと話せば良かった」という後悔が残りました。そこで「もう一度”福岡で“交流会がしたい!」と思ったことがクラウドファンディングのきっかけです。
経験ゼロ。最初は情熱だけで走り始めた
当日のイベント会場
――次の機会を待つのではなく「企画したい!」と思われたんですね。
ふむふむさん:実は最初から「企画しよう」とは思っていませんでした。しかし「Polcaで飛行機代を集めたら、またゲストの皆さんも来てもらえるかもね」という話があった時に誰からも手が挙がらず……。
――なかなか自分から「やろう」とは言い出しにくいですもんね……。
ふむふむさん:でも、その時思ったんです。「私はやっぱり、あの時の皆さんともう一度話がしたい!」と。そして「自分でやるチャンスかもしれない」と思い、手を挙げました。
――すごい勇気ですね! クラウドファンディングやイベント企画に慣れていらっしゃったんですか?
ふむふむさん:クラウドファンディングどころか、イベントを企画するのも初めてのことでした。
――本当に最初は情熱だけで走り始めたんですね。
ふむふむさん:最初のイベントで話せなかった後悔が本当にとても強かったんです。「こんなに近くでゲストの方とお話する機会があったのに、なぜ話さなかったのか」と。
――それで、また福岡の地でイベントをやろうという気持ちになったんですね。
ふむふむさん:「このイベントを福岡で行うことに意味がある」と思っていました。地方であるからこそゲストと近い距離で話せるという醍醐味があると思っていたからです。そしてこれをきっかけに福岡を盛り上げていきたい。この地でこのイベントをしたい! そういう想いをnoteに綴り続けました。
――イベント開催資金ではなく、ゲスト3人の方の交通費という形でクラウドファンディング自体を行ったのはなぜですか?
ふむふむさん:わかりやすいからですね。最初は交通費+イベント代で一口5,000円も考えましたがそれは高いと思い、やめました。
――結局、一口いくらで目標金額はいくらに設定したんですか?
ふむふむさん:来ていただく日の飛行機代を調べると92,000円が必要でしたが、一口当たり2,000円設定が高額だと思い、まずは目標金額を60,000円に設定しました。その目標を達成してから、最終目標を92,000円にしようと考えました。
――目標達成しなかった場合はどうするつもりだったんですか?
ふむふむさん:「目標金額に達しなければ中止」という約束でした。お三方の都合がつく日を提示していただき、Polca決行のnoteを確認してもらった際に、3人のうちのお一人の鳥井さんからそう言われたのです。
――厳しい条件ですね……。どんなお気持ちだったんですか?
ふむふむさん:この時の私は既に腹が決まっていて「必ず集めるので、飛行機を手配して待っていてください」と啖呵を切ったのです(笑)。今回のPolcaはこうやってスタートしました。
強い想いがしっかり伝われば拡がっていく
イベント当日の様子
――クラウドファンディングはどのように告知していきましたか?
ふむふむさん:私はTwitterもnoteもどちらもフォロワー数が100名ほどでした。そこでまずは8月のイベントに参加された方や、Twitterやnoteでイベントに興味を持ってくださった方、応援してもらえそうな方に片っ端から。もう本当に片っ端から伝えて、RTをお願いしました。
――反応はどうでしたか?
ふむふむさん:出足は好調で「ぜひ参加したいです!」という方が次々と支援してくださり、最初の不安は少し軽減されました。
――スタートは順調だったんですね!
ふむふむさん:しかし、フォロワー数が少ないということは圧倒的に拡散力が落ちるということです。支援がひと段落すると、動きが止まってしまいました。
――なるほど。やはりそんなに簡単ではないんですね……。
ふむふむさん:しつこいほどにリツイートしていたので「もう飽きられているのではないか」と不安になりました。そんな時に、前回のイベントで主催された池松潤さんからアドバイスをもらいまして。
――おお! どんな内容だったんですか?
ふむふむさん:「タイムラインは流れ続けているから、一度や二度ツイートしたところでインパクトには残らない。むしろもっと情報を出し続けなければ見てもらえない」というアドバイスでした。
――「飽きられている」よりむしろ「まだ足りない」と。
ふむふむさん:そうです。もっと発信を続けて、よりフォロワー数の多い、影響力のある人にRTしてもらい、まだ目にしてもらっていない人にも見てもらえるようにする必要があると痛感しました。
――アドバイスを受けて、どんなことを実践したんですか?
ふむふむさん:1人1人に想いを伝えようと思い、それぞれDMを送りました。会ってお話しした方や、noteに反応してくださった方で、大体30人くらいだったでしょうか。現状と「想いをnoteに書いたので、読んでください」といった内容です。
――効果はありましたか?
ふむふむさん:ありました。DMを受け取った方々がご自分の言葉を加えて、拡散してくださったのです。ただの告知ではなくて、お手紙みたいだと感じました。想いが伝播していくのを感じました。
――ふむふむさんの想いが、人を動かしたわけですね。
ふむふむさん:「またあの3人との交流会を!」という想いだけがありました。経験や自信がある人は「こうしたら動く」ということがある程度わかっているかもしれませんが、私には本当に何もなくて。本当に「想い」だけですね。
「同じ想いの人に代わり、私が動いた」
――目標金額を達成したのはいつ頃でした?
ふむふむさん:Polca最終日の1週間前に目標金額を達成しました。しかしイベント自体はまだでしたので、喜ぶことはできませんでした。本当に実感が湧いたのはイベントが終わって1週間後くらいでしたね。
――実感がわいてきて、どう思いました?
ふむふむさん:LINE Payで飛行機代を支払った時には「あぁ、終わったんだな」と寂しさが出てきましたね。
――クラウドファンディングで多くの支援を得られたことに対し、どのように思っていますか?
ふむふむさん:人のつながりを感じ、感謝してもしきれない想いでいっぱいです。今回支援してくださった方の約半数は遠方の方でした。ご自分はイベントに行くことができないのに「ぜひ」と言って支援してくださったのです。本当に嬉しかったです。
――それは嬉しいですね。
ふむふむさん:私のことを知らない人からも応援していただけました。私もこれを機に「自分の好きな人が何かしようとしたら応援したい」という想いになりました。
――目標達成まで、どんなことを意識していましたか?
ふむふむさん:支援の動きがいったん止まってからは「自分の行動を見せる」ことを意識していました。
――具体的にはどのようなことをしていたんでしょうか。
ふむふむさん:現状を伝えたり、支援してくださった方にお礼を伝えたり、その方の紹介をnoteでしたり。あとはゲストの3人に進捗状況を伝えたり、とやらなければいけないことはいろいろありました。
――このクラウドファンディングが成功した要因は何だと思いますか?
ふむふむさん:自分のためだけじゃなくて、周りの人のためにもなっていたからだと思います。参加された方からは、「前回のイベントの際に、私も話したいけれどうまく話せなかった」「やってくれてありがとう」「ふむふむさんがやってくれたから私も前に進めた」という声をいただきました。
イベント当日の様子
――ふむふむさんと同じ思いの方がたくさんいらっしゃったんですね。
ふむふむさん:同じ想いの人に代わり、私が動いたんだと感じています。
――たくさんの人に支えてもらった、という実感もあったんじゃないですか?
ふむふむさん:そうですね。前回イベントの主催者である池松さんにイベントのやり方や足りないところを教えていただきました。またゲストのお一人で「未来のチームの作り方」著者でもある藤村さんにも告知noteの内容を添削していただきました。
――ゲストにもアドバイスをもらっていたんですね!
ふむふむさん:あの時は必死過ぎて自分の立ち位置がよく分かっていませんでしたが、ゲストになんということをさせてしまったのか……と今では冷や汗ものです。
――いやいや、いいと思いますけどね!
ふむふむさん:そんな藤村さんはご自分のTwitterにて「ふむふむさんの勇気、そして行動。本当に#未来のチームの作り方福岡をやってよかったです。ポルカ、絶対に成功させましょう!」と紹介いただきました。本当にありがたい限りです。
――おお! よかったですね!!
ふむふむさん:その他にも本当に多くの方から温かい助言をいただいたり、応援の言葉をいただきました。そうやってやれることをただやってきた、という感じです。
「見たかった世界」がそこに
――イベント当日はどんな感じでした?
ふむふむさん:前日までバタバタしっぱなしでした(笑)。前日まで大赤字の予定でしたが当日現金払いOKにしたら、なんと当日7人来てくださって。
――それは嬉しいですね!
ふむふむさん:5時間のイベントは入退室自由でしたが、席替えタイムを設けてゲストの方も含めて全員が満遍なくお話しできるように配慮しました。
――前回の教訓を生かしたわけですね!
ふむふむさん:ゲストの方とフラットな関係で本音で語り合えて、近い距離で話せること、他の参加者の方ともつながれるように意識しました。それぞれが意見を言い、掘り下げたい部分はどんどん切り込んでいく。
――話が盛り上がると、そうなりますね。
ふむふむさん:年齢、性別、職業、そういったものを取っ払った「そこに集う人々」がただ本音で話していく。肩書も、有名無名も関係ないフラットな世界が生まれていました。そしてこれこそが「私が見たかった世界なんだ」と実感しました。
――イベント終了までを振り返って心に残っていることは?
ふむふむさん:言っているだけの人と、少しでも行動に移せる人とでは、大きな差が出てくるんだということを実感しました。何にもできないし、自信もない私でしたが「やりたい!」と表明したことで仲間ができました。
――一歩踏み出す勇気が大切なんですね。
ふむふむさん:そして人の力を借りてでも「やる」ことに意義があるんだ、と感じました。素直に教えてくださいと伝え、手伝うよと言ってくださる人には手伝ってもらい、様々な場面で意見を聞かせてもらって。自分一人の力は小さかったけれど、みんなの助けを借りて大きなことができました。
――「チーム」で動いていた感じですね。
ふむふむさん:決まったチームメンバーで取り組んだわけではありませんが、確実に「チーム」でした。「言葉で伝えてくれる人」「行動で見せてくれた人」「声をかけて人を連れてきてくれた人」それぞれの得意分野で動いて、そしていろんな人が関わって成功に導いてもらえました。
――ふむふむさんの熱量、勇気、想いがこもったクラウドファンディング、そして企画でした。
ふむふむさん:フォロワー数は少ない私でしたが、数ではなく深さなんだと感じました。想いを真剣に伝える、すると言葉をのせて何度も何度も拡散してくれる皆さん。「あと少し、応援しているよ」と掛けてくれる声、これらが私の励みでした。皆さんに感謝です。
――こういったことをまたやりたいと思いますか?
ふむふむさん:「またやりたいな」と思います。イベントのゲストの鳥井さんから「福岡に移住してみたい」という衝撃発言がありましたので、歓迎イベントなどいいなと思っています(笑)
――最初は話せなくて後悔したというゲストの皆さんと関係性ができてよかったですね。
ふむふむさん:鳥井さんに対しても、最初は緊張もあり怖いと感じていたのですが、このイベントを通じて普通に話せるようになりました。普通に生活していたら出会うはずのなかった人とお話しているのも、自分で驚きであり嬉しいことです。
――今度はどんな感じでやってみたいですか?
ふむふむさん:イベントに限らずですが、私は「志が同じチームだといいな」と思っています。目の前のことだけでなく、未来もみんなで考えていけたら、と。
――志が同じ人が集まると、大きなパワーになりそうですね。
ふむふむさん:一人一人動ける量が違っていたとしても、想いがあって皆が同じ方向を向いて走っていったら支え合えるはず。そしてそれが大きなものにつながっていくと思います。そんなチームで動いていきたいですね。
――本日は貴重なお話をありがとうございました!
「応援連鎖」の起点になろう
8月のイベントでゲストの方から「自分さえよければ」という気持ちが全く見えず、人の心をつなぎ合わせる、ということを感じたと話されていたふむふむさん。
今回の挑戦で誰よりも、ふむふむさん自身がその在り方を体現されていました。
多くの人に応援されたと感じているふむふむさんは「次は大切な人や好きな人が頑張っていくのも応援したい」という気持ちで溢れていました。
つながっていく応援の連鎖。次のその起点は、この記事を読んでくださっているあなたなのかもしれません。
執筆/井上いほこ