
「見られているのは、主催者の真剣さ。」ヒミツキチ「コダテル」濱田規史さん
このマガジンではクラウドファンディングを成功させた方々に、プロジェクトへの情熱や人の心を動かせた理由をインタビューし、ご紹介しています。
今回ご紹介するのはクラウドファンディングで集めた資金を基に、愛媛県八幡浜市にみんなで企てるヒミツキチ『コダテル』を創った濱田規史さん(@nokkun1230)さん。
クラウドファンディングは達成率112パーセントという結果で大成功を収めました。
どのような想いでコダテルを創ろうと思ったのか、そして目標達成のためにどのような手段で活動をしたのかお話を伺いました。
濱田規史さん / 『NPO法人八幡浜元気プロジェクト』代表、WEBマガジン『greenz.jp』ライター、地域口コミ情報サイト『KITONARU』編集長。 複数の仕事(事業)をこなす、パラレルワーカー。人とまちの“魅える化”が得意で、主に地域活性・NPOの中間支援を行っている。愛媛県八幡浜市生まれ。山口大学卒。
企てたい人が集まる「コダテル」が目指す社会
――濱田さんがクラウドファンディングで創られたコダテルとは、どんな場所なんですか?
濱田さん:コダテルは『企て』という言葉をベースに生まれた、愛媛県八幡浜市にある秘密基地のような場所です。古民家を活用して作りました。会員は小学生から70代まで幅広く、世代を超えた多種多様な”企てたい人”が集まって活動しています。
――古民家を活用した秘密基地……何だかワクワクする響きですね! コダテルではどのような活動が出来るのですか?
濱田さん:コダテルにはコワーキングスペースの他に、学習スペースや宿泊スペースもあります。学んだり、遊んだり、働いたり、八幡浜を観光したり。どのように利用するかはみなさんにお任せしています。
――様々な活動が出来る場所なのですね! コダテルで目指していることは何ですか?
濱田さん:「心掻き立てる企てが起こせる社会をつくりたい」という理念があります。現代は、個人が自由に「企て」を口に出しにくい世の中になってしまっています。いいアイデアがあったとしても、心に留めてしまって消極的になってしまう場面も多いと感じています。
――たしかにそういう場面はありますね。
濱田さん:コダテルを通じてそんな社会を変えていき、企てにワクワクできる「企て人」を全国に増やしていきたいと考えています。
――コダテルのプロジェクトを始めようと思ったのはなぜですか?
濱田さん:地元を元気にしたかったからです。地元が大好きで、高校時代からまちづくりや地域活性化に携わってきたので。あとは、金融機関に勤めていた時の出来事も影響しています。
――金融機関時代にどのような出来事があったのですか?
濱田さん:金融機関に勤めていた時は融資の担当が長かったのですが「アイデアだけではお金は貸せない」という現実に直面しました。せっかくいいアイデアなのに、根拠が無かったり事業計画書が書けなかったりして、お金を貸せないことが何度もあったんです。
――そういうことがあるんですね……。
濱田さん:そのようなエピソードに共通していたのは「どう企てるか、どうお金を使うかという計画が不足している」ということでした。
――企画や予算に関する計画が不足していると、金融機関でお金は借りられないんですね。
濱田さん:もちろん、金融機関のことを否定している訳ではありません。でも、僕自身は金融機関が融資する手前の「アイデアを育てる部分と向き合いたいな」と思いました。
クラウドファンディングの成功がもたらした「お金以外のもの」
――コダテルを立ち上げるにあたって、なぜクラウドファンディングに挑戦したのですか?
濱田さん:想いに共感してくださる方がどれくらいいるのか試したかったからです。そして、より多くの方から「志金」をお預かりして、実行資金として使いたい気持ちがありました。
――なるほど。どれほどの人が賛同してくれるのかを確認したかったわけですね。
濱田さん:他にも、クラウドファンディングをきっかけにコダテルのことを知ってもらい、返礼品を使って遊びにきて下さる関係性をつくる狙いがありました。
――たしかにクラウドファンディングは関係性がつくれるのもメリットですよね。ほかにクラウドファンディングを行ってよかったことってありますか?
濱田さん:クラウドファンディングのページは、期間終了後も引き続き使えるプロジェクトの紹介ページになりました。いまでも、ページを見て問い合わせをしてくださる方がいらっしゃいます。
――なるほど。クラウドファンディングが終わった後も、プロジェクトの魅力を伝え続けてくれるわけですね。
濱田さん:また、目標達成した実績は、助成制度を利用する際などに対外的にも評価を得られやすいので、挑戦してよかったです。
――クラウドファンディングに成功した実績というのは、そういう部分でも好影響があるんですね。
濱田さん:手数料はかかりますし、返礼品の費用も含めると支援金がそのまま手元に入る訳ではありません。それでも、やったことは無駄にならないと感じています。
成功させた3つのポイント①SNSと日記の配信
――クラウドファンディングを成功するために必要なことは何だと思いますか?
濱田さん:まずはSNSや日記を継続して配信することですね。
――SNSや日記ではどのようなことを発信されていたのですか?
濱田さん:SNSはプロジェクトをまだ知らない人へ向けた内容に、日記は実際に支援してくださった方へ向けて更新するようにしていました。
――それぞれ使い分けをされていたのですね。まず、SNSではどのようなことを発信されていたのですか?
濱田さん:SNSでは拡散してもらうために、思わずシェアしたくなるような内容を発信していました。
――シェアを目的にした発信ということですね。
濱田さん:プロジェクトを支援するとどのようなメリットがあるのか明確にしたり、支援してくださった方の顔写真を一覧にして載せたりしました。顔写真を載せた方は積極的にシェアしてくださいました。
――日記にはどのようなことを書かれていたのですか?
濱田さん:支援してくださった方へ向けた内容なので、コダテルの活用方法やクラウドファンディングの進捗の報告をメインに更新しました。
成功させた3つのポイント②「盛り上がっている感」を見せる
――ほかに工夫されたことはありますか?
濱田さん:計画的な話題づくりですかね。「盛り上がっている感」を見せるのが大事です。
――「盛り上がっている感」ですか! どのようなことをすれば盛り上がっている様子を見せられるのでしょうか?
濱田さん:第三者の声を大切にしました。プロジェクトを立ち上げた本人が伝えるより、自分以外の人の声の方がより説得力が増すと思いませんか?
――たしかに、第三者の方が説得力がありますね。具体的にはどのようなことをされたのですか?
濱田さん:自分以外のコメントを投稿のソースにしたり、写真は参加者が笑顔のものを積極的に使ったりしました。客観的に見ても「楽しそうだな」「自分も参加してみたいな」と思っていただけるような発信を心がけました。
――計画的な話題作りはどのようなスケジュールで行ったのですか?
濱田さん:3ヵ月のプロジェクト期間の中で、1週間単位でやることをあらかじめ決めていました。慌ててしまわないように、その場の思いつきより事前に計画を立てることをオススメします!
成功させた3つのポイント③オフラインでの積極的な活動
――クラウドファンディングはWebだけでやるものだと思っていました! オフラインでの活動はどのようなことをされたのですか?
濱田さん:アナログな方法ですが、A4の申込用紙を作って知り合いに配布しました。そして、代理でクラウドファンディングのページから申し込みをしました。
――代理申込みとはすごいですね。なぜオフラインでも活動しようと思われたのですか?
濱田さん:都会ではないので、そもそもクラウドファンディングを知らなかったり、サイトへの登録方法がよく分からなかったりする方もいらっしゃるんですよ。
――そのような方にはどのように説明していたんですか?
濱田さん:クラウドファンディングという言葉を使わずに「こういう事業をやるので応援してもらえませんか」と伝えていました。
――オフライン活動はどれくらい効果がありましたか?
濱田さん:知り合いを中心に回ったのですが、結果として全体の2割の方がオフライン活動がきっかけで賛同してくださいました。
――2割もですか! すごい……。かなり影響が大きいですね。
濱田さん:知り合いとの関係性が深いほど、大きな金額を支援してくれたり口コミで広めてくれたりしました。SNSのフォロワー=クラウドファンディングの成功率ではない世界があるのだと身をもって知りました。
最後まで絶対に諦めない「本気度」のある人が支援される
――コダテルでは、最近どのようなことをやっていますか。
濱田さん:「TEAMKIT」というサイトを通じて、コダテルに宿泊した感想をメディア(ブログ)に書いていただくモニターを期間限定で募集しています。※TEAMKIT コダテルモニター募集ページ
――それはどういうものなんですか?
濱田さん:コダテルに宿泊し、体験記事を書いていただくと宿泊料が無料になるんです。実際にいくつかモニター記事が生まれています。
――もっとたくさん、コダテルの魅力が広がっていくといいですね。
濱田さん:そうですね。このような「外からの風」は会員さんにとっても刺激になっていますので、続けたいですね。
――濱田さんとお話して、Web上でページを立ち上げてSNSに投稿するだけで支援が集まるわけではないことがよくわかりました。
濱田さん:クラウドファンディングとはいえ、自分の足を動かすことが大切です。知り合いに協力してもらったり、チラシを配って回ったりした方がより多くの方に広めることができます。
――そうなると、一人だけでのチャレンジより、大勢でチャレンジの方がよさそうですね。
濱田さん:私は時間的な都合もあり個人で挑戦しましたが、できれば仲間を作って取り組むことをオススメします。複数人の人脈がある方が効果的ですし、アイデアがより広がりやすいと思います。
――なるほど。仲間を集めたうえで、大勢の方に支援してもらうには何が必要だと思いますか。
濱田さん:そのプロジェクトをなぜやるのか、目的を明確にすることです。現在、クラウドファンディングは乱立状態にあるので、他のプロジェクトとの差別化を明確にしたほうがよいでしょう。
――たしかに個性のあるプロジェクトの方が、多くの方に支援してもらえるでしょうね。
濱田さん:そして、一度始めたら、最後まで絶対にあきらめない。クラウドファンディングが失敗しても「とにかく『やる』ことは決まってるんだ」というくらいの本気度で取り組まないと伝わりません。
――やはり情熱が大切なんですね。
濱田さん:見られているのは、主催者の真剣さだと思います。自分の熱い想いをしっかり伝えましょう!
――本日は貴重なお話をありがとうございました!
プロジェクトの成功は信念があってこそ
お話をうかがい、「絶対にクラウドファンディング達成させる」という濱田さんの強い信念があったからこそ、プロジェクトが成功したのだと感じました。
また、時にはオンライン上だけの活動にとどまらず、オフラインでも地道に声かけをすることも大切ということが分かりました。
たとえインフルエンサーでなくても、そして日本のどこに居ても想いを貫けば共感してくれる人はいるはず。
成し遂げたいものがある方は、濱田さんのようにぜひ一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
執筆/有延里歌