「たんたん拍子」vol.2内企画「黒猫歌会記」に勝手に参加してみた
「たんたん拍子」といえば、若枝あらう氏を代表とし、榎本ユミ/草薙/小俵鱚太/toron*/中嶋港人の各氏を含めた歌人6人からなる短歌サークルである。今年の東京文フリで売っていた同人誌「たんたん拍子」vol.2も買わせていただいて、面白く読んだ。
その中で、サークルが定期的に行っている「黒猫歌会」の第六回が記録として残されていた。歌会記録は面白い。人が歌について感じたことを読めるのは嬉しい。んだけど、いいなあこういう形に残るのうらやましいなあと思って、歌会記録を読む前に、詠草一覧だけ読んで僕も選をした(特選一首と並選二首)。しかも、「たんたん拍子」の会場ブースでした。そのとき確か榎本さんとtoron*さんはおられて、ちょっとはしゃべったんだけど、なんかそれしか言ってないの、アレだなって思ったから、書く。
なので申し訳ないが、「たんたん拍子」vol.2を持っていない人からしたらこの文章は意味不明だと思う。歌も引かない。あくまでそれぞれについて思ったことを、書く。持っている人からしたら、ちょっとしたおたのしみになっていたらいいなと思う。
ということで、以下の通り。
①の歌:その「まで」怖くない・・・? 言い終わったらどうなるんやろう、の、「言ってる間」が「虹」で、「言い終わった後と言いだす前」が「鬱」なんじゃないの、って、腑に落ちたから、なんか安心した。腑に落ちないと本当に安心しない。いやこの読みがあってるわけじゃないけど。この構造はぐんにゃりしていて面白いけど、短歌って韻律的にはシンメトリーではないから、そのへんの韻律が邪魔してる気はした。なんだろう、短歌、57575だったらよかったな、って思う歌やな。
②の歌:ちょっと、は、やったんやな・・・で、関係性が歌として立ってるな。ただ、「的なやつ」は雑かな・・・具体的なエピソードの「的なやつ」だから、そのエピソードそのものは、薄れるなぁ。でもこういうエピソードを「的なやつ」としてがっとまとめられるんだったらいけるか。でも「もうちょい」やりたかったってことは、そんなにはできてないんよなあ。そのバランスが心として伝わりにくいところはあるけど、感じはいい歌やな。
③の歌:あーこれすごくいいなー。たぶんとるなー。「鼻先」ってちゃんと言っているのがいいんだよな。ただ単にかぎつけているんじゃなくて、かぎつけはじめである、ってことがよーくわかって。景としてどういうストーリーなのかは拾いきれないし、誰の「嘘」なのかもわかんないけど、「嘘」があった瞬間と、においを拾い出す瞬間と、時間の「点」がバシッと描かれているんだよな。あとは読み手がなんとなくストーリーを拾うんだけど、きっとどう拾っても心が動くんやと思う。
④の歌:げーっこれもいいなー。とるなー。この人、「池上線」の名前だけ知ってる人なんだよな、たぶん。で、知らない駅を言われてそれは池上線だった、じゃなくて、池上線という大きな話題があって、そこからの個別の駅なんだよな、きっと「まあわかんないと思うけど・・・」みたいな前フリとかあったんだろうな。で、わかんないし、そこの「暮らし」もわかんないんだけど、これがわざわざ倒置的に強調されることで、あっこの今「しゃべってる相手」の「暮らし」、「そこ」か・・・? みたいな気持ちになれて、心やな。
⑤の歌:お風呂じゃん、があるんだよなあ。で、たぶん、「お風呂じゃん」は想定内なんやろうと思って、下句で「お風呂だよね?」にさせる結句だな、っていうのが、すごく面白い。んだけど、「全ての」がすごくいいすぎちゃったなーという気持ちがある。残念ながら、「全ての」って言うほどの「ヒント」じゃないんだよなー。どっちかっていうと「裏があるよ」って示し方がこの「お風呂だよね?」につながるんじゃないかって思った。
⑥の歌:韻律、というか、韻、は、がっつり狙ってる感じがあって、ちゃんと成功していると思う。「tanka」の「歌」じゃなくて「song」の歌なんだな、って、後から分かってくる。ただ短歌で「歌のごと」っていっちゃうと「歌じゃん」ってなっちゃいそう。モンパチの「ひびーけーこいのうた、」と一緒っちゃそうなんだけど、なんだろう。引っかかるな。この「るる」は、「歌未満」なんじゃないかな? それを細かく言葉でひろってほしいかもなあ。
⑦の歌:ああーいいなー。とろうかな。ツタヤは主体にとってはレンタルのための場所だけど、という「おもしろ」だけで歌が成り立ってるように一見見えるんだけど、この人の言う「慣れたっていい」は、「自分もそういう風に思うことに慣れる」じゃなくて「きみがそういうことに慣れる」まででしかない、この正直さが、心だな。微妙に上から目線というか、「まあこっちが正しいけどね」感があって、でもツタヤはまだ、レンタルだから・・・! 嫌じゃない。この上から感が嫌じゃない。地元がツタヤ発祥の地だからツタヤの歌には甘くなってしまう・・・
⑧この歌は・・・「路線が」までは今まで読んだ中で一番いいけど「過去を」で申し訳ないけどガクッと落ちてしまう・・・「過去」雑だな・・・この、細かいところによく目をつけてくれましたありがとうございます、が、「過去」というぶっといものを「なぞる」の、そりゃそうなんだけど、これは心としては「過去」の「どこ」よ、まで、言えたんじゃないかなあと思う。むしろそこを通るのはすごくレアなんだから、「過去」でまとめちゃうのはすごくもったいないと思う。
⑨ぺこぱ、か、、、? 「叫びたくなる」で、いや叫んだらよろしいやん、と思って、「ほど」で、あーそれくらいの比喩なのね、そういうことね、で、「入道雲」が出てきてなるほどって思ったら「目指して」るだけかい! みたいな。いや、たぶん「入道雲」はそこにあるんやろうけど、なんか「叫んだらええやん」「入道雲、そこにあったらええやん」という手ざわりのなさが・・・もしかしてすべては夢なのか・・・?
⑩の歌:うわーきれーなー! と思って、このきれいさのあまりにとられへんな、と思ってしまったな。すごいきれい。いい瞬間を見せてもらって、「ひかりが濡れる」とかめっちゃかっこいいなあとおもって、これが「一回性」に強いもん、と思いすぎてしまった。だから僕にとっては相性が悪い。というのも、「また世界は」とつながることでこの「きれーなー」がほかにもある気がしてしまった。その一瞬が「ないない」寄りだったのに「あるある」にまとめられた感じ。これは人によったらいいと感じるやろうとは思う。
⑪の歌:親目線、だとしたら、子をなんか恐るべきものみたいな感じでとらえているのがぞっとしていい歌やな。とろうかなー。しかし「瓶の開け方を覚え」ただけでここまで思うのすごくない? 僕の心的にはちょっと共感はできん。それが憑依的っぽくて迫力があって、結構刺さる歌になってるなーって感じはある。わが子かわいい、みたいな歌じゃないのが。『エスター』みたいな子供なんとちゃうやろか。ちゃうんやろう。だからこそ、この「怖さ」は全部主体に跳ね返ってくる。
⑫の歌:これは、このテンションで「ホスト」に言うことはできないんやろうなあ、というのがあるから、ただの受け狙いの歌に終わってないって思う。いい歌だなー。「ホスト」が「左手に見えます」距離にいるから、これは心の中のモノローグとしてしか作用していない気がする。それがおもろい。あとは、バスガイドの言い方をしているから、あたかも通過しそうなんやけど、この人的にここを通過するわけにはいかんのな。それが、いちばんおもろいかもしれん。
ということを思って、結局特選を「3」、並選を「4と7」にした。ちょっと「12」は迷った、感じ。
そして実際の参加者の投票具合を見てたら、なんと「3」の歌が同率首席になっておる。ってことは僕の票をあわせて実質的に首席ですね。おめでとうございます。嘘ですすいません。
でもいい企画だなって思いました。なので勝手に参加しました。ちなみに黒猫歌会にはおよばれしたことがあるので、「僕も呼ばれたいよチクショー」みたいなひがみは全くないんですけど、でも、ここにもいたかったよチクショー! 嘘です。サークルの方々がこれからも面白いことをやっていただけることを願いつつ結びとします。
注:本文を書くにあたって、サークルのメンバーからの許可は、誰からも得ていません。書くと伝えてもいません。
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