短歌連作「12月 雑感」
じゃないもの 枯山水のレシピとか 冬の真昼の帰り道とか
足元もスマホも見ずに変わってる青信号に気づかないとき
手袋のまま蝶結びは無理だけど試すだけ試した冬の朝
足元をすくわれるって紐なのか鞭なのかたくさんの手首なのか
沈黙をいい天気すねで埋めたあと雲ひとつなくっておどろいた
さよならが大事だったな さよならが大事だなとはならなかったが
その昔、公衆電話 そんで今はフリーWi-Fi、と 思い始める
シューゲイザーが好きだった僕とシューゲイザーが好きな僕のふるえる喉仏
ツイートでやれば済むネタいじくって短歌にしもうツイートはない
雨か鰐かを選ばされれば雨だけどもしかして今落ちているのか
徒歩圏で殺しがあるとやってくるマスコミだよね壁じゃないよね
もう、友達じゃないとは思う 夕方がすこんと抜けた日だった どうだった?
むかし自分で書いたミステリ小説の名探偵の頭がいいな
包丁を自分に はなく、アイロンは分からないままワイシャツをゆく
いくつからカウントダウンするつもりなのかは話し合いたい 縄だ
あれは自分の川に放った蛇だからぐるぐる巻きをやってあげねば
自分への投資がなにもないままに名前を言ってもいいこのわたし
遅起きの妻がばっちり決まってた 僕は夫になりついて行った
服とかを好きに評して芸人の返しかたをパクって暮らしてる
【全部俺】ふるいにかけた粉だからいつかの夢を裏切ってみた
好きな人が嫌いな人を責めていて その通りだし でも ネット上だし
鍋つかみと言いつつ鍋敷きのつもりで、それであなたが持つ熱い鍋
寒風で向かい風だけど走らなきゃあの電車まで工場ゆきの
街の波 弊社はそういう口コミにやりがいがないって書かれてる
目が悪いなりにわかったトナカイのオブジェが近づけば小さいな
もしかしてレコードよりもCDが先に滅びる? メリークリスマス
めげるまで竹刀を振った過去があり、今はあるだけ 年越し蕎麦か・・・
赦すけど雪の砂漠のオアシスは凍っているだろう魚ごと
かつて僕はメールの歌を高評価されそのときの白いガラケー
夕焼けがカレー鍋へと溶けてゆく 世渡りって言葉、深いな
水没のめがね乾かしきったのでもうちょっと、走らせてもらっていいですか?
人生ちゅきちゅきちゅき妖怪をやってみよう冗談だけど比喩ではなしに
スピッツのライブは未来のスピッツの新曲を思わせる躍動感
妻と手をつなげば少しあたたまる妻か僕かの結婚指輪
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