減価償却費の摩訶不思議
今は昔、徒然なるままに、日暮し机に向かひて(さすがに硯に向かうほど昔ではない)財務諸表論を勉強し始めた頃の話。
「減価償却費には資金をプールする機能がある」みたいなことがテキストに書かれていて、しばし理解に苦しんだ。
たぶん、会計士試験の試験委員が使っていた表現をそのまま使ったんだろうけど、初心者にはわかりにくい表現。
「キャッシュ・アウトを伴わない費用だから、会計上の利益よりも多くのキャッシュが手元に残ることになる。」
というくらいが適当か。
それでも胡散臭い話のように聞こえてしまうのはなぜだろう?
と考えると、「キャッシュ・アウトは先に(投資した時点で)発生してしまって、あとから減価償却費が発生する」という半ば当たり前の仕組みの説明を端折っているからだと思い当った。キャッシュ・アウトを伴わないわけではなくて、投資(資産の取得)という損益計算に反映されないところでキャッシュ・アウトがあるわけだ。
だから、「会計上は赤字だけど、償却前利益は出ているから大丈夫」的な言い方には気を付けないといけない。投資を回収するだけの利益がないってことだから、設備投資のために調達した借入金の返済原資がないってことは大いにありうる。
償却前利益が出てるってことは、利払いはできる、というに過ぎないんだよね。支払利息は損益計算に含まれるけど、元本部分の返済は損益計算に含まれないキャッシュ・アウト要因だから。