もわっとしているものと、新しい可能性

今年の春、音大を卒業した。

「音大」と一概に言っても私は音楽だけ必死に学んだわけではなく、音大生としてはめちゃくちゃ拗らせた4年間を過ごした自覚がある。

前提としてどうしてファゴットを始めたかとか、なんで音大に行ったかとかはのちに別の記事にまとめるとして、

音大に入学する前の段階から、音楽だけやって食べていくことの厳しさをなんとなく察していた。

というものの、地元である山形県鶴岡市で過ごした高校時代(自称進学校の理系落ちこぼれ)まで、周りに音楽家なんて一切いなかったし、音大に行くなんてもってのほか、みたいな環境だった。

つまり「厳しさをなんとなく察していた」というより、「全く想像がつかなかった」。

逆にそれがすごく好奇心をそそった。

ファゴットを自ら好んで始めたように、そんな未知の未来を突き進もうとしてしまう性なんだとそんな端的なまとめで一旦終わるとして。



よくある音大生にとって卒業後の選択肢といえば

院進学、留学、就職、音楽活動をしながらバイト、ニート・・・

とかだろうか。卒業してすぐプロになる人なんてほんのひと握りだし。

入学してすぐ、いろんなことを考えた。でもなんかどれもいまいちピンと来なかった。ロクに楽器の練習もせずに、じゃあ自分が成し遂げたいことってなんだろうって考えて考えて考えて、なんか無謀そうなでっかい夢はあるのに、どうやって実現して良いかが全然わからなくて「とりあえず行動だー!」ってなった気がする。


そんでもって大学1,2年の頃は大学のことは最低限のことでおさめ、積極的に音楽とは関係ない別の大学の友達を作ったりいろんなコミュニティに顔を出したり、「音楽」だけに価値観が固まらないように行動していた。

今思うと滑稽だけど、1年生の頃にリクルートスーツさえ持っていないのに興味本位で大規模な就活イベントの運営スタッフをやったりもした。

怪しい学生団体に入って、携帯売ったり、仮想通貨売ったり、情報商材売ったり、投資したり、学生イベントの企画運営したり。まあいろんな偏見があると思うので詳しくは割愛するとして。

そういえば海外リゾート開発のお手伝いしたり、とある地下アイドルを東南アジアで売り出すための運営したりもしたな。


そうやって、音大にいながら音楽の世界を避けるようにフィールドを広げていった。

多分、その頃から「楽器で食べていくのは難しい」という未知な危機感と焦燥感に駆られていたのだと思う。だから必死に音楽以外のことにも目を向けて、視野を広げようとした。

それによってプラスもあったしもちろん弊害もあった。今は書かないけど!



そして2年生の後半から3年生になったあたりから流れが変わり、「真面目に音楽に向き合う期」が到来した。

1,2年生で音楽から目を背けていろんな経験をするうちに気づいたのは、自己実現のためには「ちゃんと音楽を学んで大学を卒業すること」は必要条件なんだなということ。

理由は、「音楽が好きだから」。

ずっと音楽に携わっていたいから。

自分の心に正直に、すなおに、音楽に向き合わないと、やりたいことは何も実現できないって気付いた。そうしないと絶対後悔するって。

好きって偉大だなと。

通常の音大生にはあまりない価値観を少し携えた状態で、「ちゃんとした音大生」になる努力をした。あれ?皮肉?





時をぴょ〜んと飛ばして今。

紆余曲折ありながらも無事音大を卒業し、いざ社会に放たれたが世はコロナ、なかなか思うように動けない。現実逃避をめちゃくちゃしたあと、現実に戻った時に結構リアルに死にかけた。

環境を思い切って変えてみたものの、どこか満たされなくてストレス溜まって、でも動けない、みたいな。

幸いにも、楽器ができる環境はあった。もしなかったら多分楽器売ってた(苦笑)



1ヶ月半くらい前のある日、一つの依頼があった。

「演奏会のフライヤーを作ってほしい。」

何もやることがなかった時にダメ元で登録していたサービスで、初の依頼が入った。メルカリのスキル版みたいなやつ。


好奇心旺盛マンたかはる、仕事にするしない関係なく楽しそうだからって在学中になんとなくはじめたコンサートフライヤー制作、MIX、動画編集などなど、持ち前の飲み込みの速さで()なんとなく習得してたスキルがあった。


最初は、「え、お金払って依頼してくる人がいるの・・・?」みたいな感覚。

納期が短かったものの、イイ感じに仕上げて納品。

そしたらそのクライアントの方がよほどに感動してくださって。

プログラムにチケットデザインに立て続けに依頼をいただいて。

それだけかと思ったら、「演奏してほしいです!」と。

物理的に遠い距離の方だったので、演奏会の一部で使用するという流れで演奏動画を納品したら、これまたベタ褒め。

「演奏は心癒されるとともにその音色に大きな魅力と将来性を感じました。演奏家としてだけでなく様々なスキルを駆使して顧客ニーズに応える演奏会オールインワンサービスという新たな形で、今後の演奏家のロールモデルになってほしい。」

というありがたいお言葉をいただきました。

そして、「リアルコンサートにも出演してほしい」と。


・・・これか。と。

今までもわっとしていた部分が少し晴れた。なんかまだうまく言葉にできない。

でも、やりたいことを実現するために自分が今できることを着実に、少しずつでも、こなすしかないと思った。



私は本当に人に恵まれていると思う。

一つの小さな依頼だと思っていたものが、大きな可能性に気付かされた出会いだった。

今は楽器に対して、音楽に対して、すごく前向きなれている。

正攻法とかない。完璧じゃなくていい。

自分なりの方法を探っていきたい。


今回ファゴットについて面白いくらいに触れなかったけど、ファゴットという楽器に対しての私の愛情は深い。その話はまた今度。



髙橋遥

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