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ビアトリクス・ポターが初めて湖水地方で滞在した館、レイキャッスル
今も世界中で愛されている、ピーターラビットの絵本シリーズ。1902年に出版されてから120周年を迎え、日本でもイベントが催されていますよね!
その作者ビアトリクス・ポターは、ヴィクトリア時代にロンドン・サウスケンジントンの裕福な中産階級に生まれ育った女性。
当時、良家の子女は学校などに通わず家庭教師に教育を受けるのが常識だったため、ほとんど家の中で弟と一緒に過ごした少女時代でした。
知的好奇心と美術への関心がとても高く、とくに自然観察には大人顔負けの意欲と情熱を注いだビアトリクス。
豊かな中産階級だったポター家では毎年、夏は3か月ほど風光明媚な土地で家を借りるのが定番でした。
ビアトリクスが5歳から15歳まではスコットランドのダンケルドにあるダルギーズハウスという邸宅を借りて長い夏季休暇を過ごし、そこで彼女は自然界への愛に目覚めたのです。
風景や花、野鳥、動物たちをスケッチしたり、弟バートラムと一緒に昆虫などを顕微鏡で観察したり。退屈で閉塞感のあるロンドンとは全く違う、豊かな自然に囲まれた日々を心から慈しみました。
しかし或る年からダルギーズハウス所有者の事情により、夏季の長期滞在に借りることが出来なくなったのです。
そこでビアトリクスが16歳の夏には、湖水地方にあるレイキャッスル(Wray Castle)を借りて過ごす事になったポター家。
ゴシック様式を模したこの大きな館は、ウィンダミア湖のほとりにあります。
現在では景観や史跡保護のチャリティ団体ナショナル・トラストが所有および運営しています。
パッと見、すごく古い中世のお城みたいですが・・・実は1840年にジェイムズ・ドーソンというお医者さんが、資産家ご出身の奥方と一緒に建てた「なんちゃって古城」。笑
しかしレイキャッスルが19世紀の成金趣味で建てた豪邸で終わらないのは、ドーソン氏の亡き後。
甥エドワード・ローンズリーが相続し、やがて高級貸別荘としても利用されるようになって・・・16歳だったビアトリクス・ポターが家族とともに夏の休暇を過ごした、というのがポイントなのです。
そして彼女は初めて訪れた湖水地方をすっかり気に入っただけでなく、当主エドワードのいとこハードウィック・ローンズリーらが構想を練っていた地元の自然保護運動(ナショナル・トラストの前身)に大いに共感!
彼女と湖水地方の運命を大きく変えたのが、このレイキャッスルで過ごした夏季休暇とも言えるわけです。
そうして築180年足らずの「なんちゃって中世ゴシック城」も、今ではビアトリクス・ポター聖地の一つ。
湖水地方へ旅行する際には、ぜひ立ち寄ってみて下さいね!