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ユトサトリ。VOL.6「だいたいみんな踊ってる2024」@小劇場楽園

 こんにちは、りおねるです。記念すべき、観劇記録1本目は、ユトサトリ。さんの「だいたいみんな踊ってる2024」について記します。


 最初に書きます。めっちゃおすすめです!!
クラファンでぜひDVDゲットして観てください!!!


とても手繰りで始めますので、追記・編集ありうべしです。

<公演期間・観劇回>

 2024.9/11-16の全9公演
 うち3回(9/11、9/14マチネ、9/15ソワレ)観劇

<一言感想>
 会話の応酬がとても好み。初見の団体では、近年で一番ハマった。

<観劇のきっかけ>

 先日、月刊「根本宗子」15周年記念公演があり、根本さんの過去作の役者さんの出演情報をチェックしている中で、石澤さんのSNSから知る。
「バチクソ会話劇」「議論は激化」といったフレーズに惹かれ、観劇。

<ストーリー>
 オフィスを舞台にしたワンシチュエーション、実時間分の長さを描くお芝居(上演時間100分で、劇中でも100分経過)。

 ほたる(入社5年目)、樹里(ほたるの同期)、佳(ほたるの後輩)、ゆかり(ほたるの上司)、朝霞(ゆかりの上司)、北園(税理士、月一で来る)の6人が、週末に迫るゆかりの結婚式をきっかけに、会話の応酬を繰り広げる。

 台本を購入しており、クラウドファンディング(↓9/24(火)〆切)で公演DVD・台本をリターンとしているため、詳細は記載せず。
※クラウドファンディングのページに、作・演出家の大竹さんが、あらすじ・作品の趣旨について記されています、この文章自体が演劇やコミュニケーションに関するもので、とても面白いです!
クラウドファンディング - MotionGallery (モーションギャラリー) (motion-gallery.net)

<感想>
 職場の日常会話から、結婚・恋愛などにおける各々の価値観の話になって、一人がこだわり・怒りの感情を発し、、たかと思えば、脇道にそれたりしながら、段々と秘密が判明し、核心へと向かっていく。最終的に、会話ではどうにも収集がつかず、「躍る」ことで着地する。現実では、思っていても言語化されずに各々抱えて終わってしまうものが、引っ張り出されて、代弁して成仏させてくれる。そんな会話劇の醍醐味を味わえたというのが全体的な感想。

 登場人物それぞれに、他の人にはあまり理解されないような「こだわりのポイント」があって、はたから見ると滑稽で「笑い」になるのだが、本人はいたって真剣。それが現時点で、社会規範的に認められているかに過ぎない。「LGBTQ+」は「研修」されるから何も言えないが、華道の流派の違いやデーティングは理解されない。「お煎餅を持ってきて、皆で食べること」や「お祝いのダンスに真剣になること」のかけがえのなさ。6人全員に対して、「分かるよー」となったし、少しずつ「分かるけどさー」となった

 それぞれに正義がある。できる限りお互いに尊重できたら良いのだけど、そもそもその個人の正義を口に出すとは限らなくて。言わせるのが必ずしも正しいわけではなくて。お互いそう思いながら、あるいはそこまで考えることなく、少しずつすれ違っていき、距離ができていってしまう。現実にはそういうことが多いと思う。というか、そういう経験があるので、痛い。

 一番重心がある台詞は、ほたるの「みんなズルい、勝手に悩んでしゃべって、人のこと認めた気になって、納得して、また悩んで自分の事で。いいな、スッキリして」。登場人物全員、こだわりや怒りを表明しているが、ほたるに比べると一瞬で鎮火している。ほたるからすれば、「皆は飲み込み・割り切りが早い」と思い、「置いていかれる感覚」のようなものがあるような気がした。こういう感覚になることが多いので、自分に重ね合わせた。

 ほたるvs.樹里を中心に、6人の間で論争が何度か勃発する。その「元凶」は、ほたるの「踊りたくない」発言だが、ほたるが悪者になってしまう原因が、ゆかりのことを思って(山本がヤバいから結婚をやめてほしいという)、大好きな先輩のことを思って、本心を出せず取り繕うため、というのが素敵(結局、ゆかりは山本を選ぶわけだが、ゆかりにはほたる気持ちが伝わっていた)。いや、本当は、そんな単純ではなくて、ゆかりに自分の理想の先輩像を求めるような危うさもあったわけで、先輩、、に限らず、人に対する憧れや尊敬って、そういう複雑な感情だと思うので、リアルだった。 

 一方で、「山本が元カレだとばらされたから」「他流派だから」というのも嘘ではないんだと思う。でも、核心ではない。こういう少し理由を変えて言う「方便」って日常でいくらでもやってるんだろうな、意識・無意識に。朝霞も、結婚する後輩を前に「離婚した」とは言いたくないから「大殺界だから」という方便を使った。

 結局、2人の取繕いはうまくいかず、樹里に突っつかれて、全て曝け出すことになるわけだが(朝霞→ゆかり→ほたるという先輩・後輩伝承関係と、ほたる←樹里という同期関係が素敵)、この「取繕い」があったから、ゆかりは本当のことをしゃべったし、ほたるも一応の受入れ・飲込みをすることができたのだろう。「取繕い」がゆかりのためであるというのが、ほたるに入り込ませてくれた。

 この登場人物が「取り繕っているもの」が段々と表に出てくる展開は、6人の感情面での納得感・受入れの過程であるということに加えて、物語の構造(情報の提示)という点からも素晴らしいと思った。「観客への見せ方」という「お芝居作っている側の意図」が「作中の世界の流れ」の中にハマっているというか(素人がすみません…)。


 冒頭、彼氏からの電話をガチャ切りしたほたるは、ラストシーンで、こだわりを譲って、彼の予定の調整を受け入れる。電話の彼からすれば、「急にどうしたの?」と思うかもしれないが、「論争」を経てほたるに変化が起きた。こういう全然関係ない人間関係が、他の人間関係に影響を与えるということは起きているだろう。本人の意識・無意識にかかわらず。
 相手に対して、「なんで急に気分が変わったんだろう」って思ったときは、こんなことがあったのかな、って思えるような、そして調整できるような余地を残しておきたい。そして自分に対しても、不完全なところを楽しむ余裕を。自分も、ほたるみたいにすぐ完璧を目指したくなって、綻びが出てしまうので。

 そして、お芝居の種類の話として、先日の「共闘者」と続けて観て、改めて感じたこととして、女性のみコミュニティのこのくらいの人数の会話劇、って面白いなと。

(あまり性差によるものと考えるのは好きではないのですが、)現実でも
・まず、会話自体を楽しもうという意識が強い
・それぞれに見せている面、共有している秘密が少しずつ違う
・思っていることと発言に微妙なずれがあり、チューニングしている
・思っていることが複雑かつ、本人がそれを意識している
・同じ人同士でも、ステータスの軸が何本かあり、話の流れで入れ替わる
・共感(同意するかはともかく、言っていることを理解する)がうまい
のあたりの傾向が(文化的・社会的な背景等から)あり、演劇にしたときにリアルでありつつ、絶妙なずれや違いが生まれて、面白くなるのかなと思った。(男性でやると、リアルさが弱まりコメディに寄りそう?)

<まとめ>
 100分間観終えて、まず何より、6人の登場人物全員が好きになりました。そして、初見で涙することはほとんどない私が、涙が何度も頬を伝わって、そしてたくさん笑って。こういう会話劇大好きだという作品でした。これから注目して観ていきたい劇団・作家さんになりました。
 また、私は、会話劇は、その場の人の会話として観ているので、あまり演技に関することを取り出しての感想は言わないのですが、6人の役者さん全員、好きなお芝居でした。皆さんの他の作品も観ていきたいと思います!

(グッズ購入)
・上演台本(「だいたいみんな踊ってる2024」、「いや、走ってよメロス」、「〆!ー男子部員ver.ー」「〆!ー女子部員ver.ー」
・〆!Tシャツ白
 DVDの到着を待ちつつ、過去作品の台本読みたいと思います!






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