東畑開人「雨の日の心理学」
臨床心理士の東畑開人さんの新刊 「雨の日の心理学」を一読しました。感想を書いてみたいと思います。
<きっかけ>
ゲンロンのイベントが開催されるということで知り、2,3日で一読した。大学では、法律学と経済学を中心に学んでおり、心理学はふれてこなかったが、以下の背景から、本書に関心を持った。
①精神疾患を抱える友人が自殺に至った経験
② (①がきっかけで)厚労省職員であること
③近年、人に話(悩み)をきいてもらうことが多いこと
④演技・観劇をする視点
<感想>
こころは産地直送(印象)で届くということと、「きく」ことは、自分のこころを相手のこころに重ねて、重なった部分をつかって「わかる」こと、といった説明が、演技でやってること(役を自分に引き寄せる、状態を作る)や、観劇(第三者の話を目にして、自分の経験と照らし合わせて心を動かす)に近くて、とても腹に落ちた。
先月、ハイバイ・岩井秀人さんの「ワレワレのモロモロ」ワークショップ https://note.com/iwaihideto/n/na87111ca825d で、「自分がヒドい目にあった話」をして、みんなで演じてみるワークに参加したが、そこでは、経験を共有する、当事者(一義的にケアされる人)と他の参加者(一義的にケアする人)が「一緒に互いのこころをつかっている」感覚になった。まさに本書で書かれている「ケア」であり、「演劇がケアになる」という岩井さんの話(参照:「精神看護」11月号)だと思った。
そして、「わからない」から「わかる」に至る過程では、東浩紀さんの『訂正する力』で言うところの「訂正」が行われているのだとも思った。
また、PSポジション、転移などの説明からは、自分がここ数年、悩み相談など人とのやりとりの中で上手くいかなかったときの自分を思い出した。「きく」ことばかりがケアだと思っていたので、「おせっかい」というのはなるほどと、物理的な気遣いが大切である、というのは見落としがちだった。
最終章の「ケアする人のケア」は、セルフケアの話でもあるし、社会篇の話は、行政が担う課題でもある。以前担当していた母子保健行政においても、専門家によるケア、流産など同じ経験をした方々によるピアサポートなどがあるが、「ケアする人のケア」はまさに行政の比重が大きい仕事。
亡くなった友人とのことを思い出すと、本人の意向というのもあって、一緒に話していたもう一人以外の共通の他の知り合いには相談していなかった。自分だけが知っている嬉しさみたいなものは間違いなくあったし、仲間を増やすべきだったと、改めて今思う。
一読したばかりの雑感ということもあり、まだ読み込めてないところもあると思います。今日のイベントを経て、また、日々の中で思い返して読みたいと思います。気づいたことがあったら、追記していきたいと思います。