しんどいネット広告スロット
こんな感じの広告、見たことあります?
ありますよね、あるはずなんです。
インターネット上のあらゆるところに散らばっていて、きっと誰もが何度も目にしているこんな感じの広告。
その多くは、ムダ毛・肥満・シミ・薄毛・体臭などのコンプレックスに対する内容だったり、「知らないなんて非常識!」といった恥の意識を駆り立てるような内容ばかり。
しかも、作りがほぼ同じで「このすべてをたった一人の人間が嫌がらせのために量産し続けているのか?」とすら思えてきてしまう。
見ていてアガらない、興味が湧かない。そんな広告に果たして未来はあるのか。どれも似たり寄ったりで嫌~なインターネット広告。本記事ではこれをしんどいネット広告と名付けます。
まずは知ることから。
しんどいネット広告を集めて、
募集して、
大量に集めて、
あれやこれやと考えては、
この広告たちからいくつかのエレメントを抽出することができました。
それが、
①恥の心理効果
②3つの型
③権威と非権威
の三大要素。
順を追って説明していきます。
これは「しんどいネット広告」を忌み嫌う人間がその仕組みを追求し、翻弄され、スロットにするまでの記録です。
『分析してみる』
❶心理効果と恥
数多くある広告ですが、実はそのどれもがマーケティングや購買行動につなげるための心理効果を仕込んでいるのです。
この「キケン」や「激ヤバ」、「落とし穴」「ハゲめし」といった危機感をあおる言葉がふんだんに使われた広告も心理学を利用しています。
『恐怖喚起コミュニケーション』というものです。
【恐怖喚起コミュニケーション】
「こうしないと危険な目に遭います」と伝え、恐怖を喚起して説得効果を高める表現。強い脅しほど人の行動・態度を変えやすい。
なんなんだ「ハゲめし」って。
脅して危機意識を煽る宣伝、姑息ですね。
また、こちらには「老け髪主婦」と呼ばれる一般人を登場させることによって得られる『社会的証明』といった心理効果が。
【社会的証明】
社会一般の人の考えに基づいて自身の行動・態度を決定すること。対象が身近なほど効果が高まる。「お客様の声」もその一種。
老け髪主婦、3つ星シェフみたいな語呂。
一般人を起用して親しみやすさを演出、姑息だわ。
中でも一番効果が高まるのは、「これが新しい常識、それを知らないあなたは非常識」とするような内容の広告。
「今さら聞けない!」や「これからの○○は常識」「知らないと損」といった文言がよく使われます。
世間一般の人は知っていますよというメッセージで『社会的証明』と、知らないと恥をかくことになるぞと脅す『恐怖喚起コミュニケーション』の二刀流により生まれるこの効果。
消費者行動に大きく影響を与えるのは恥をかく恐怖を喚起させることなのかもしれません。
やはり姑息!
❷3つの型
見出しの作りについて、内容を端的にあらわす形はYahoo!ニュース等のニュースサイト記事の見出しがもとになっているのではと推測しています。
しんどい広告の見出しは、カギカッコと煽り文(売り文句)で構成されています。そして「カギカッコの中」の内容によって型が以下の3つに分類できるのです。
1.セリフ型
カギカッコ内の内容がセリフになっているもの。
以下は広告より抜粋。
話し手が明確に存在しているタイプ。セリフ型ではわざと言い切らない表現や「アレ」が多用される傾向が強い。
2.感想型
カギカッコ内の内容が感想(感嘆)になっているもの。
以下は広告より抜粋。
感想型はセリフ型と似ているが、「すごい」「やばい」といった程度を表すワードを含んでいることが多く「広告商品を使用した声」「商品に対する感想」といった立場をなしている。
3.強調型
カギカッコで語句を強調しているもの。
以下は広告より抜粋。
強調させたいキーワードやポイントにカギカッコを付けている。Yahoo!ニュースにある記事の見出しも大半が強調型。
❸権威と非権威
人間には二種類います。
権威のある人間とそうでない人間です。
これは先の『社会的証明』における「一般の声」と対をなすもので、
【権威】
専門家や科学者、政治家など権威のある人々からの意見に影響されやすい心理。
人間は権力に弱い生き物。権威のある人が「これは良いんです」といえば、我々は「これは良いんだすね!」と説得させられやすくなります。
そのため、しんどい広告にも数々の権威者や肩書きが登場します。
以下は広告より抜粋。
権威ある肩書きや影響力のある人を「虎」、そんな虎の威を借る者を「狐」としました。
虎の中でもマツコの登用数はかなり多く、とりあえずマツコが絶賛してたことにすればよいといった雰囲気がしんどい広告界には蔓延しています。
「医者の嫁」は旦那が医者というだけでただの一般人なので非権威。威を借るキツネの代表格。ママ友とのお茶会でも根拠のない美容法とか広めてそうですね。
スキンケアにはきっとカタツムリのなにかの成分が入ったなにかを使っていることでしょう。
また、一般人の例は並べると「治安が終わってそうなオンラインゲームのギルドメンバー表」という感じがしてきました。
『分類してみる』
上記のことを踏まえて、もう一度しんどい広告を見てみましょう。
おばちゃんは一般人なので非権威。
「脳の体操になる…」との発言は後の文脈から無料スマホゲームに対する感想であると考えられるため感想型。
よって、この広告は【非権威感想型】であると分類できます。
東大生は一般人ですが、日本においてはトップランクの権威を有する肩書きとしてよいでしょう。最近は東大生がしゃしゃり出てくるテレビ番組も多くなりましたね。
「英語はYouTubeで十分」は感想というより教示といった印象。英語ができない人間にドヤ顔で向けられた言葉でしょうからセリフ型となります。
よってこの広告は【権威セリフ型】と位置付けられます。
『スロットにしてみる』
スロットにしました。
人間は一度に多くの情報が混在しているものを処理しきれません。広告を構成する要素を分解し、ふたたび型に落とし込んだランダム性。加えて、このフラッシュ暗算のような切替スピード。
これにより、マイナスイメージのある表現はおろか「しんどさ」さえ認識することはできません。目はしんどいですが気分は上がります。
しかし、それだけに留まりません。
従来のオーバーレイ広告やマウスオーバー広告などの追尾型で「誤ってクリック」させる、そのような広告の表示形式はもう古いのです。
これからは能動的にユーザーがクリックしてしまうスロット型広告の時代。
スロット形式の一番の強みはなんといっても止めたくなるという点。
動いているものを止めて確認してみたくなる興味にはあらがえません。
そしていつの間にか分解されたフレーズたちに意味を求めて何度も何度もスロットを回転させては止め、回転させては止めを繰り返してしまう。
クリックするたびに裏で開かれる広告サイトのタブの数も知らずに……
※そのようなプログラムは組んでおりません。
今回スロットを作るにあたって使わせていただいたのは『Scratch』というプログラミング学習サイト。無料で誰でも簡単にプログラミングの基礎を楽しく実践しながら学ぶことができます。
プログラミングのプの字も知らないまま見切り発車してしまったので、子供向けサイトで作って共有させていただくしかなかったのですが、さすがマサチューセッツ工科大学(MIT)開発のサービス。本当にわかりやすい。
>> text = ‘わかりやすい’
>>print('すっごい、' + text + 'です。')
すっごいわかりやすいです。
嫌いだと感じるものでも、とっつきにくいと感じるものでも、相手を知ろうとする姿勢とほんの少しの興味があれば、きっと何にでもおもしろさは見つけられるんじゃないかな。
苦手だけど少し気になる。その気持ちを大事にしたいと思います。
知らない領域を勉強したり、慣れないことするのも……
『しんどい広告スロット』はこちらから遊べます。