磯辺アゲはカブトムシを食べない。
磯辺アゲはカブトムシを食べない。
しかし、
陽炎ができるような暑い日に短くなった自分の影をにらみながら歩いていると、カブトムシを入れたプラスチックのかごを横においてソーダ味のアイスキャンデーを舐めているおねえさん出会った。
「これ、無敗だから」
おねえさんは見かけには普通のものと変わらぬ少し赤みがかったカブトムシをくれた。いれるものがないと言うとかごもいっしょにくれた。
「たべちゃだめだよ。おいしくないから」
ギョッとしておねえさんの口もとを見ると、食べてないよと笑われた。
「こんな美少女がカブトムシなんか食べるわけないじゃん」
言われてみるとおねえさんは美人だった。カブトムシがゴソゴソと音をたてる。
「じゃ、少年。食べるならイナゴとかにしなね。佃煮がいいよ」
おねえさんは言い残して、おいしそうな角煮まんじゅうを連れて去っていた。
そんな夏がくるかもしれない。
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