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石を積む│月山

月山に登った
地球の偉大さに畏れさを抱き
一歩一歩、自分の選択した地に足を置いていく
入れものの中に自分が戻ってきた時間だった


在る

冷たい、植物は地と共存している、弱いが故に強い

人間は岩と共に進化してきた

そう教えてくれた人がいる
山にはそれだけの過去が詰まっているのだと思う
進化をなぞらえてきたというより、もはや生物が存在しない時代すら超越したものが記録されているのだ
石を見つめ、大昔この地に広がっていたであろう海を思い浮かべるのに、時間はかからなかった

山は、ずっとここに位置する
どんなに風が吹き荒れようとも、微動だにせず
己の活動で形を変えてきた

肌で感じる温度が冷たくなっていく
裸だ、裸のままからだに戻ってきた

試される

まだかまだかと頂きを待ち望む

お前の身体はお前しか動かせない

記憶を思い返し、様々な言葉や光景を彷彿とする脳内は序盤で消える

気づいたら足取りを数える数字しか浮かばない
呼吸が乱れてきた
上を見上げても視界は白く山頂は見えない
それでも、次の1歩は、わたしが決めていくしかないのである
「お前の身体はお前にしか動かせないぞ」と問われている
わたしは生きているー!(歓喜!!!!!)

そこには極楽浄土があるはずだった

目で感じる風、感動したつかの間、心地良さは消える

吹き上げる風を浴び続ける
身体は雨で濡れている

楽しさに疲労が交えてきたころ、あることを知る

出羽三山の参拝は、江戸から生まれ変わりの旅と言われてきた

羽黒山、月山、湯殿山はそれぞれ
現在:現世の幸せを願う山
過去:死後の安楽と往生を祈る過去の山
未来:生まれ変わりを祈る未来の山
とされているそうだ

ここに日が落ちる光景を思い出す
あの美しさ故か、最も高く聳え立つ故か
古の人々は、祖霊が鎮まる山と認識してたのだ

今だって、太陽を阻む雲がなければ、
ここ極楽浄土が望めたのかもしれない

あの光景といま目に映るもの
どちらかは幻想なんだろうか

そんな考えがちらつくほど
わたしはここまで生意気で傲慢で恩恵のある道を歩んできた

自然が試してくる
この状況ににやにやしてしまう

積む

寒い
ここで歩みを止めたら、凍ってしまう
冷たい風がごーごーと身体を倒そうとしてくる
ここまでくると、もう、生命の危機すら感じる

白闇のなか石が積まれている

人は数千年前から石を積んできました。
私はここにいた、生きていたのだ、と伝えるために

『ケルン:石のメッセンジャー』
デビッド・B・ウィリアムズ

はて、この地を辿った人々は、自分の存在を示すために石を積んだいたのだろうか
なんとなくそのようで、別のなにかがある気もする

きっと、石ひとつひとつには、自然に対する人々の畏敬の念が込められている

自分がちっぽけでありながらも、その存在に感謝したのだろう

積むという行為は、想いを重ねていく作業なのかもしれない
見えない誰かが積んだ石の上に、誰かがまた重ねて形作られている

わたしは、明日からも着地する岩を選び進みつづける
その先でどんな石を積んでいこうか

2024/09/06

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