風邪とクジラと真っ暗闇の底
寒気とだるさで体調が芳しくない
喉の痛みと敏感になってるのか服が身体に
擦れると痛いと思えてしまう
葛根湯を飲んで横たわり微睡む頭の中には
煩わしい事柄が今日だけは鳴りを潜めて
くれているご様子で助かった
喉が熱を持っていて咳き込むと痛みを感じる
ゆっくりと呼吸を整えながら瞼の裏側の闇の中に
精神を沈めていく
深い海の底へて潜っていくクジラの姿を
想像していくと僕の心は落ち着いていく
すぅぅうっと眠りに落ちていける
やがて暗闇の向こうから淡く発光する
クラゲの姿を見る頃には僕の肉体から
精神は解き放たれて深い海の底を堪能する
一頭の若いクジラそのものとなる
そこは光も届かない未知の領域
想像する事でしかいく方法が思いつかない世界
真っ暗闇で何も見えないが
じっと目を凝らしていると
次第にそんな暗闇の向こうから
無数の気泡の球体が立ち上ってくるのが見えた
クジラの身体はまるっとそんな気泡に
包み込まれてぱちばちと耳元で弾ける音がした
消えずに残った泡たちは静かに
背後へと消えていく
暗闇の底には得体の知れない何かがいるのだ
何かが間違いなくそこにはいて
僕を待ち構えている
得体がしれないから怖い
怖いけども見てみたい
いつもの僕なら怖いから怖気付いてしまうが
夢の中の僕は一頭のクジラとなって
そんな事を気にするそぶりも
見せずにどんどん潜っていく
好奇心の塊の様なクジラの意思は揺るがない
ゆっくりとその何かを突き止める為に
夢の最深部へと身体をうねらせ潜っていく
悪夢と呼ぶには生々しくて
夢と呼ぶには落ち着きがないが
眠りに落ちていく僕には
クジラの夢は心地ちが良くて好きだ
潜っていく