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幼馴染「何?」男「アッ…ソノ…(久しぶりに一緒に帰ってやってもいいが?)」
男「…ア…(幼馴染…久しぶりに勇気出して話しかけたのに…何か喋れ俺何か喋れ俺何か喋れ俺)」
幼馴染の女友だち「幼ちゃーん!帰ろー!」
幼馴染「あっ…じゃ(タッタッタ」
男「ア…ウ…」
────────
男「…クソッ」
俺は高校2年の男。
もう何年も幼馴染と話していない。
友だちもいない。
極度のコミュ症である。
俺は幼馴染のことが、まあ…気になっているというか、一応幼稚園のとき一緒に遊んでくれたし、唯一友だちになってくれたから、その…また遊びたいかもとか思ったりしている。
ちなみに最後に幼馴染と喋ったのは小学校6年生の卒業式の日だ。
みんなが校庭で卒業を惜しみ、笑い、涙を流している中、俺はそそくさと帰る支度をして幼馴染を探していた。
男「キョロキョロ(いないなぁ…)」
人目を避けつつ幼馴染を探しながら、俺はこれまでの幼馴染との思い出にふけっていた。
幼稚園の頃、俺はいじめられていた。
理由は単純明快、俺が根暗だったからである。
散々蹴られたり殴られたりしたが、抵抗しなかった。
それをいいことに、いじめは日常的に続いていた。
最初にいじめられた日の帰り道
俺は1人で泣きながら家まで帰っていた。
夕焼けで照らされた道路が、涙で滲んでぼんやりする。
苦しい、辛い。
そんな思いで歩いていると、横影に同じくらいの身長の女の子が並んだ。幼馴染だった。
幼馴染は俺の家の隣に住んでる同い年の女子で、それまでお互いのことを認知はしてたものの話したりしたことはなかった。
幼馴染は、何も話さなかった。ただ、涙でベトベトになった手を優しく繋いでくれた。
初めてだった。
初めて手を繋がれた。
温かかった。
苦しみがだんだんやわらいでいく気がした。
その日はこれまでの人生にとって最高の1日にもなった。
初めて友だちができた。
幼馴染は家に着くまでずっと手を繋いでくれた。
家に着くと幼馴染はパッと手を離し、「またね」と言って自分の家に入っていった。
そのときには涙も収まり、ただ自分の手を見つめていた。
温かかった手。
ドキドキした。
その次の日も、俺はいじめられた。
その日の帰り、幼馴染はまた手を繋いでくれた。
その後もしばらくいじめは続いたが、俺は抵抗しなかった。
いじめられることで幼馴染と手を繋げるなら、それでいいと思ったからだ。
俺と幼馴染は次第に仲良くなっていった。
幼馴染は決して口数が多いわけではなかったが、俺のペースに合わせて他愛もない会話をしてくれた。
そしてお互いに「なーちゃん」「おーくん」とあだ名で呼びあう仲にまでなった。
このあだ名は、特別な感じがして今でも気に入っているが、幼馴染が覚えているかどうかはわからない。
とにかく、初めて会話が楽しいと思った。
今でも普通に話せるのは幼馴染だけだ。
まあ、ここ数年話せてないんだけど…。
そんなことを思いながら、幼馴染を探していた。
今日も一緒に帰るためだ。
いた。
校庭へ続く階段の真ん中で、幼馴染の女友だちらしき人たちと写真を撮っている。
男「(今日はあの人たちと一緒に帰るのかな…)」
幼稚園から小学校に上がったとき、幼馴染には友だちが増えた。
幼馴染は口数こそ少ないものの、容姿が凛としていて落ち着きがあるのでクラスで惹かれる人も少なくなかった。
一方、俺は根暗で基本的に幼馴染以外と喋ろうとするとコミュ障になるので友だちはできなかった。
まあ、別に幼馴染以外と喋る気もないので別にいいのだが。
ただ、そんな幼馴染と俺の間にはちょっとずつ距離があいていった。
幼馴染はたまに他の友だちとも帰るようになった。
まあ、別にそれはいい。
幼馴染にも多彩な交友関係を築く権利があるし。
止める理由はない。
(もちろん俺は一緒に帰る友だちが幼馴染しかいないので、それを後からこっそりつけて行く訳だが。)
ただ、学年が上がるにつれてその頻度は増していった。
小学校6年にもなると、幼馴染が放課後まれに1人になるタイミングを見計らって声をかけてやっと一緒に帰れるのである。全く骨が折れる。
その卒業式の日も友だちと帰るであろう幼馴染を遠目に眺めていた。
男「(今日も他の友だちと帰るのかな…まあ、別に中学も同じだし、別にいいけど。ただ、中学では…もうちょっと…ちょっとだけ…一緒に…)」
幼馴染「キョロキョロ」
男「!」
幼馴染と目があった。
幼馴染は一緒に写真を撮っていた友だちと何か話すと、俺の方に歩いてきた。
男「(わ…わっ…も、もしかして…ふふっ…なんだ…今日は流石に俺と一緒に帰るのかな…まあ、幼稚園からの付き合いだし…)」
などと思っていると、幼馴染はすでに目の前にいた。
男「あ…」
幼馴染「卒業だね。」
男「う、うん。」
幼馴染「今日は一緒に帰ろっか。」
男「えっ(パアァ)そ、そうだな!帰ろう!一緒に!2人で!」
続く