クババの匣
昨年末にTVで放送され、いつの間にやら都市伝説の殿堂入りした感のある「クババの匣」ですが、じつはロンギヌスキー理論が5年ほど前にブログで取り上げていました。あの時はサブテーマに留めておりましたので、今回はメインテーマとして加筆します。
立方体を展開すると十字架になる。
キリスト教もイスラム教もクババの匣を展開した教えの一つに過ぎない。
キリスト教が国教化される前の古代ローマで、キュベレーはマグナ・マテル(大いなる母)と呼ばれ500年間崇拝されました。
ローマのサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂は聖母マリア信仰で有名ですが、かつてそこには、キュベレーの神殿が建てられていました。
キュベレー神殿の御神体は黒い隕石だったものを女神像に加工したものらしいのですが、キュベレーの古い呼び名はクババ(Kubaba、Kuba、 Kube)といい、イスラム教の聖地メッカにあるカアバ(Ka'aba)の石とどうやら関係がありそうなんです。(聖域の黒い聖母伝説より)
クババは、古代メソポタミア、キシュ第3王朝の伝説的な女王です。娼婦から王になり、100年間統治したと伝えられています。
彼女の伝説が後にアナトリア半島で大地母神キュベレーへと発展していきます。キュベレーの名前は「知識の保護者」を意味しています。
古代ギリシアでは、神々の母レアと同一視されました。
小アジアのペッシヌースからローマのパラティーノの丘へ、キュベレーの御神体が運び込まれたのは紀元前203年。
第2次ポエニ戦争の時です。ローマの元老院は、ハンニバル(バアル神)に対抗するため、キュベレーを公式に招き入れ、彼女は勝利の女神となります。その「御神体」は隕石でした。
そう、彼女は宇宙から来たのです。
また、キュベレーの息子アッティスは、処女懐胎神話の典型でした。アッティスの最期は、自ら去勢し松の木に架けられるという壮絶なものですが、同時に復活劇も用意されていたのです。
アッティスの受難は3月25日に記念された。それはアッティスが生誕した冬至の祭典日である12月25日のちょうど9か月前の日である。アッティスが死んだ時刻は、また、彼が懐胎された時刻、あるいは再び懐胎された時刻でもあった。アッティスが再びこの世にその姿を現すために母親の胎内に入ったことをしるすために、彼の木-男根が母親の聖なる洞穴に持ち込まれた。(Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets)
3月25日は、キリスト教では受胎告知の日とされています。あまりにもキリストに似ているため、キリスト教徒は、悪魔が流したデマだと批判し、二元論に持ち込むことで、ローマの宗教戦争に勝利しますが、裏を返せば、キリスト教徒が悪魔崇拝と呼ぶ古代の密儀宗教となんら変わることのない物語をキリスト教も有しているということなのです。
ゆえに、キュベレーは聖母マリアに、キュベレーの息子アッティスはイエス・キリストに姿を変えたと考えてもいいでしょう。
彼女と同じく、隕石を御神体とする女神が、イスラム教の聖地メッカに祀られています。
カアバ神殿といえば、黒い立方体(cube)ですが、カアバとは、アラビア語で立方体を意味します。
かつて、カアバは部族の神々を祀る多神教の神殿で、360の偶像があったといわれます。その中でもとくに崇拝されたのが、最高神アッラーフの娘たち、すなわち、月の女神アッラート、権力の女神アル・ウッザー、運命の女神マナートの三女神でした。
ムハンマドは1つの偶像を除いて偶像を全部破壊しました。
唯一残されたのは女神アッラートの御神体でした。
それは、天然ガラスである黒曜石(もしくは隕石由来のテクタイト)でできていると言われており、アニミズム時代は「月からの隕石」と信じられていました。現在この黒石は、カアバ神殿の東南角に丁重にはめ込まれていて、聖なる石と崇められ、巡礼者は7度接吻を試みるそうです。
かろうじて女神の御神体は残りましたが、クルアーンでその信仰は否定され、カアバは父なる一神教の場へと変換されました。
しかし、女神は消えたわけではありません。
三女神の御神体については次のような伝承があります。
アッラートは「飾りつけられた白い立方石」
アル・ウッザーは「三本のアカシアの木」
マナートは「黒色石」
これらすべての条件を満たしているのが、「黒色」の「立方体」で内部に「三本の柱」しかない「カアバ神殿」なのです。
キュベレーは2頭のライオンを従えていますが、アッラートもライオンを従えています。
パルミラ遺跡のアッラート神殿のライオン像はISに破壊されましたが、現在は復元されたようですね。
ライオンは王家の象徴と結びついています。メソポタミアのクババ女王がそうであったように、女神伝承から見えてくるのは、母系制社会が古代にあったことと、神殿売春が行われていたことです。
古代のセカイは、社会のシステムや神聖さの観念が、今とは180度違うと考えなければいけません。
さらに、天体と巨石崇拝。
隕石を御神体にしていたのが何よりもの証拠ですが、メソポタミアを中心に発達した占星術は、今でいう天文学のような高等科学と宗教が合わさったものでした。
都市伝説の方では、黒い立方体型のUFOに乗ってやって来たクババが人類に知識を授けたという、やや大袈裟な表現をされていましたが、かつてはマギ(神官)が独占していた知識を、神殿娼婦と王を兼ねたクババが手に入れ、自らを御神体とした女神信仰の広がりと共に、諸民にも知識が拡散されていったのです。
しかし、キュベレーやアッラートがキリスト教やイスラム教に隠されたように、本当の知識も隠されたままなのです。
クババの匣の謎を解く鍵はインドにある。
番組ではそう言って毘沙門天の話になりましたよね。でも、どう繋がっていくのか、不明な点もあるので、その辺りについては次回!