ヴォーの港で、自転車に乗った少年がひとりでぐるぐると遊んでいた。
彼は港の先まで行って戻ってきたかと思うと、民家の方へ消えてゆき、そのうちまた戻ってきた。
私は持っていたトフィをバッグから取り出して、食べる?と聞いた。
「もちろん大好きだよ」
彼は無邪気に笑った。
ずっとこの島で暮らしているのか尋ねると、
「そうだよ。でもね、ママは僕が生まれる何年か前にこの島に来たんだって!」
どこの街からやって来たのかについては知らないと答えた。
「ううん…僕にはよくはわかんないや」と優しくはにかむ。
生まれる前のことだから知らなくても無理はない。
そのあと私たちは水辺で石投げをして遊んだ。
彼が投げた石は水面を2回ほど跳ねて沈んだ。