ハインケル HE111
フェア島の飛行場のある丘をくだると、集落への道が続いている。
その道を外れ、牧場の中を海の方向へまっすぐ進む。
牧草地の中は泥濘んでいて、ところどころ水たまりになっていた。気をつけないと足を取られる。靴は泥で汚れたけれど、私は気に留めず歩いた。
そして、ずっと遠くから小さく見えていた残骸に、私は辿り着いた。
Heinkel HE111。
この残骸は1941年にフェア島へ墜落したドイツ軍の爆撃機らしい。
もう80年近く、この地に横たわっている。
私には不思議と、この残骸たちがまるで遥か遠い宇宙からやってきたもののように思えた。