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とりあえず、まさかの1日に2回……(1回目)

予定があり出かける。近辺にどこか面白そうなところはないだろうか?

ほほーん。

芥川龍之介は、自身が幼い頃、最初に触れた“文豪”だ。リズム感が好きで、声に出して読みたくなる文章だなと思っていた。

この印象は大人になってからも変わらず、ある時、調子に乗って声に出して芥川を読んでいた。すると、当時保育園児だった子が「蜘蛛の糸」にどハマりしてしまい、3ヶ月くらい永遠“蜘蛛の糸”ごっこに付き合わされることとなった。

地獄に落ちたレゴのドロボウたち。期待を持たせ、糸に群がったところで、仏(子)が切り離す……
ひたっっっすら同じストーリーを繰り返す地獄……。
獄卒(母)にとっても地獄である。思い出深い。

そういえば、子どもの小学校での読み聞かせボランティアでも、「白」を抜粋して読んだのだった。どんだけ芥川を声に出して読みたいんだ? 自分?(笑)

しかも、染色家の柚木沙弥郎さんも幼きころ田端に住んでいたはずだ。

いうことで、なんだか予定ルートから外れた気はするが、田端文士村記念館に行ってみることにした(入館料も無料だし)。


だが、ぼんやりとした不安もある……
これまで「文学記念館」のような場所に行ったことがなかった。楽しめるのか? ハマらなかったら時間がもったいない……?

まぁ、メインが不安ならサイドを楽しんでしまえと、まずは記念館の周りを軽く散策してみる。

芥川のお家があった場所へ。
有名な本人“画”の河童図が添えてある。
現在は看板のみ。

少し歩き、田端八幡神社と東覚寺へ。

田端八幡神社。御神輿の蔵が並んでいた。
狛犬たちはオーソドックス。
石灯籠にハトー! 微笑ましい。

境内や参道には黄色や赤の落ち葉が散っていて、銀杏の実も落ちている。これから人に会うのに銀杏臭を漂わせるの不味い。踏まないように気をつけて下を見て歩いていたのだが、顔を上げると

立冬の日、片隅に芙蓉の花。

立冬なのにまだ、夏がいる! 
静かな場所に黄色、赤、緑、桃色、異界のような鮮やかさ。

すぐ隣の東覚寺は赤紙仁王尊で有名。赤紙(悪魔を焼く炎)を仁王像に貼ると、貼った部分の病気が治るのだそう。

埋め尽くされる顔。

仁王の顔でバタバタとはためく赤札。もはや阿吽のどちらなのかわからないほど。みんなに期待されてるなー。

願いが届いたらわらじを納める
あれ、お地蔵さまもいらっしゃる
お顔がめちゃかわいい。蓑虫山人の土偶風味。

さらに、板谷波山(陶芸家。出光美術館でその言葉に触れたばかり)の窯があった場所にも。

こちらも現在は看板のみ。
ちょっぴりさみしい。

本当は記念館がおすすめする“文士村の散歩道”を巡りたかったのだが、尋常ならざる方向音痴さと余計なモノ(草花とか、メインじゃない地蔵とか)を写真に収めるのに時間を取られてしまった。急いで文士村記念館へ戻る。

田端文士村記念館

今回の企画展は、芥川龍之介が専業作家として立つまでの心のうちを、書き残した手紙を通して紐解くものだ。
近代とはいえ、いにしえの人の手書きの文字。ちゃんと読めるか不安だったが、

読める! 読めるぞ!

手紙の文字を見て気分が上がってしまった。

芥川先生の文字、読みやすい!!

字は小さめだけれど、1画1字が丁寧に書かれている。やっぱり、繊細で真面目な人だったのだろう。

主軸である本人の手紙と合わせて、幼少期からの友人達の芥川の印象、写真パネルなども展示されている。
微笑ましかったのは野口真造の幼稚園での芥川の思い出で、“送り迎えをしてくれる女中の言葉をこっくりして、よく聞き分けていた”“好もしい子”という言葉が、麦わら帽子をかぶった幼少期の写真(おでこー!)と相まって、あたたかい気持ちになった。

名だたる文豪たちの芥川の記憶では、久米正雄の話がダントツに面白かった。

最初の印象は、学校の健康診断で肺病を疑われるガリガリなヤツ。真面目な秀才で、ふざけた秀才の自分たちとは一線を画したヤツだと思っていたが、付き合ってみれば“妙なゴヤ的な妖怪”を描くし、三木露風より詩作はうまいし、斎藤茂吉並みの詩も詠むし、大川の水の匂いをかいで育っただけあって5、6町(1町は約109m)は泳ぐ。しかも、浄瑠璃の一中節(いっちゅうぶし)までうまくて、本気で取り組まないかと勧誘され、困っていた。高校は2位の成績で卒業している。大学卒業時も2位の成績だったな。
できない、知らないが嫌で、真面目に勉強していた。本を読むのを止めたら成長も止まったような気がしていたのだろう。

もとの本人の言葉の方がずっとずっと良いのでそちらを見てほしいのだが、紹介のためかなり簡単にしてまとめている。芥川の真面目なだけではない、ユーモアリアルに河童的な側面も垣間見せてくれる文章だ。
大親友という印象だと、菊池寛などの方を思い浮かべるが、毛色は違えどお互いに一目おき、親しんでいる様子がうかがえる。
(ちなみに、芥川が毎日新聞に入社した時久米に宛てた“俺の顔を立てて15、16枚分の原稿を書いてよこせ”という恐ろしいハガキも展示されている。簡単に言ってくれるなよと、久米だって、本人評でちょっとくらいディスりたくもなるはずだ)


と、ここまで書いてきたのに、まだメインである手紙についてほぼ触れられていない。
自分でもある程度読むことができる上に、内容も面白い……予定があるのに、全然読みきれない。そうか、
文学館の展示って、本を読んでいくのに近いんだな……
と気付かされる。

どうしよう、読みかけで面白い本をやめるのは嫌だな……

……。

しゃーない、

予定を済ませたら、もう1回戻ってこよー。


とりあえず、面接をしおり的に挟むことにして(苦笑)、次回へ続ける。

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