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【二次創作BL小説】「二人のスンヒョン」(タプトリ/パラレル)4,106文字

「イ スンヒョン 氏。」

「・・へ?・・」

思わず 教壇の男を見上げる。

顔を上げて

僕を見なさい」

。。。。。。。。

(なに言ってんの? この人..)

だから、イヤなんだって。

イヤミな男。。

うちの高校は、教科によって席がシャッフルする仕組み..   よってフリー。

英語の授業、
遅く教室に入ったから一番前しか席空いてなくて、渋々、一番前に座っちゃったけど
なるべく目合わせないようにして ほとんど俯いてたら、何だよ、顔見なさいって。。。。

「スンヒョン氏?」

「は.い..」

「僕を見て」

(ハイハイ・・)

けど やっぱり顔なんて見れねーよ。
確かに女子が言うようにイケメンだけどさー。オジサンじゃん。
ちょっとばかしミステリアスだけどさー。
こんな地味な僕に絡むことなくない?

それにさー、先生と僕の共通点って・・
同じ "スンヒョン"って名前だけじゃん。

ほんと! 苦手。 勘弁して☆

..

授業が終わり、教室を出た所で また捕まった。

「イ スンヒョン!」

うぇっ?

「今日は珍しく一番前に座ってるから やっと やる気が出たのかと
思ったら、全然やる気ないんだな。 キミ、何考えてんの?
俺の話、聞いてなかったよね?」

(あぁ、ま-た 嫌みだ。。)

「僕、英語苦手なんですよ。」
(それに、アナタもね。。。)

「苦手なのはいいけど、やる気がないのは許せない。
最低限、授業を受ける姿勢は見せるべきだろ。生徒として。」

(うーわ。。先生様かよ。。。)

「でも、チェ先生、
どうしても・・」

僕の言葉を遮り、先生は言った。

「イ スンヒョン。今日の授業で顔を上げなかったのは君だけだ。
君は "壁" か?
あまりにも僕を拒絶するから、顔を上げろと言ったんだ。」

ハイハイ、分かりましたよ。
だから、絡まないでって。

ずっとそうなんだ。
1年の時から、この先生、担任でもないのに僕に絡むんだ。

「スンヒョン氏。この間のテスト、何番だった?」

「イ スンヒョン☆は、家でも勉強してるんだろうなぁ~
昨日は何時間、勉強したのかい?( ̄▽ ̄)」

そして、なぜか、僕の姿を見ると「職員室に来い!」だ。。

「チェ先生・・ 何でしょう・・」

暗い顔で問えば、

「お前は他の文系の教科はいいんだから、英語だって もっとデキルはずなんだ☆
おかしーだろ! もっと真面目にやれ!」

ぇ・・・・俺の成績全部知ってんの。。。

無茶苦茶だよ。この先生。。。。

..

あぁ~ 本当に苦手。。

本当にさぁー、何で こんなに絡まれるわけ?

この先生さぁ、けっこうオジサンなのに、身長高くて、スタイルいいから、密かに女子達の噂のヒト。

15も年違うのに、チェ先生の「ファン女子」がいる。。
いつもニヤニヤ 嫌みばっかり言ってる先生の何がいいのやら..。

「イ スンヒョン~~」

「ん? 何?」

クラスの女子Iに声をかけられた。

「イ スンヒョン いいなぁー・・今日もチェ先生に声かけられてさぁ~。
ウチのクラスで一番チェ先生と仲良しなの、スンヒョンでしょ。」

ギェッ!?

ハァ~ッ?!!?

君、見てたでしょ!? どこが仲良しなのっ!?
俺、いつも理不尽に絡まれてるだけだよねつ!? 』

「そうぉ? 個人的に絡まれてるの、うらやましいーーー☆」

もぉ、勝手にやって。。

あんなオジサンなのに、女子たちに人気があるなんて・・・
俺なんか全然モテねーのに!!

「ねぇ。イ スンヒョン君。一緒に職員室に・」

『行かねーからっ!!』

えぇぇー つまんない

(シラネーよ)

..2年になった頃、チェ先生の噂を聞いた。

チェ先生はバツイチだと.。

なるほどね。あんまり家庭の匂いないもんなー。

人間 サイボーグじゃん。

でも、あのセンセが結婚していたこと自体、俺には驚きだった。
何となく、独身だと思ってたから。..
何となくね..

聞き耳を立てるまでもなく、女子の声は聞こえてきた・・

「チェ先生の離婚の理由、訳ありみたい~

何でも、前の学校の女子生徒と・」

そこまで聞いて、俺は教室を出た。

へー。 あんな澄ました顔して、そんな情熱があるのか。

女子生徒に「好きだ」なんて言ってる先生が全く想像できない。 
どれだけ「好き!」と生徒に言われても撥ねつけて、人を傷つけるあの人しか想像できない・・

たぶん、俺のイメージする先生と実際の あの人は違うんだろうな・・
しょせんイメージなんて そんなもんだよな・・

..

しっかし、どっから そんな情報仕入れてくるんだか・・ 小娘達・・

3年にもなり、担任でもないのに 相変わらず俺を見かけると
「ちゃぁーんと勉強してるかぁー。」と声をかけてくるチェ先生。。

(アンタねぇ.. 俺の兄貴のつもり?!)

「勉強・・ してません」

「ダメでしょ。」

「いや、勉強キライだし」

「生徒だから、勉強するのが仕事! がんばれ。成績もっと上がるから」

「先生には関係ねーし」

「お前は俺の生徒だし!」

「担任じゃねーし!」

廊下の真ん中で言い合ってたら、生物のノンビリおばさんが通りかかった。

「あらあら、仲良しですねー(^^)」

満面の笑みで横を通り過ぎる。

エッ、仲良しに見えるの??

そう言えば、あの "ファン女子"も、そんなこと言ってたっけ。。

「チェ先生? 僕と先生って性格とか真逆だと思うんですよぉ。
外見もさ、真逆。

小柄でヒョロイ僕と、高身長でモデルみたいに手足の長い先生。

目力強い先生と どこまでも平凡な僕。

真逆ですよね?」

「どした、イ スンヒョン? 真逆なのが何か問題か?
生徒に指導して何が悪い?

お前の卑屈さは問題アリアリだな★」

唇の端で薄く笑われた。 ムカッ

だから、苦手なんだって、俺はアナタが!!


もうすぐ この学校も卒業する。

好きな女子さえ出来ず、何となく過ごした3年間。
平凡で淡々と過ごした3年間。

クラス代表の優等生でもなく、だからといって問題児でもなく、
同級生の人気者でもなく、でも誰とでも会話できる・・そんな俺。

きっと誰も 俺のことなんて知らない。
薄く距離を張った俺のこと。。
誰も俺に興味なんて持たなかっただろ。。

校庭の桜が、やっと散り始めた。

この学校ともお別れ。..

落ちる桜を見ながら、今思い出すのは..

" イ スンヒョン。"

" 僕を見て "

真っ直ぐに向けられた あの人の目。あの人の声。。

あの人の目をちゃんと見たのは、あの時だけだったなぁ..。

「「イ スンヒョン氏」」

げっ。

振り向くと 廊下に ニヤニヤ顔の先生がいる!

いやいや、「お世話になりましたぁー☆」そう言って逃げようとしたら、
満面の笑みで校庭に下りてくるチェ スンヒョン!!

やだって!

逃げる俺に、全力で追いつくチェ スンヒョン!!

とうとう、その長い腕で捕らわれた。。

「おい、待て!」

「何なんすか! まだ、何かあるんすか!」

「。。いや。。 最後だし。。」

いつもと違って、歯切れの悪いチェ先生..

「最後だから何すか!?」

「いや。。楽しかったから。。」

ハ・? イ・?

「イ スンヒョン 面白かったし・・」

「僕は全然面白くなかったっすよ。。
絡まれてばっかだったし。。」

「 えっ?!  喜んでると思ってた。」

「うっそ!?。」

「俺たち、仲良しだったでしょ。」

『えぇぇぇーーーーーーーー どこが!?』

「もしかして・・・・
俺の愛情..伝わってなかった.. .. . .。。」

は?

この人って こんな人なの・・・・

..

「あ・の・・ チェ先生・・」

「ん?」

「先生ってイヤミなヤツだよね・・?」

「んなこと、言われたことねーよ」

「先生って バツイチだよね?」

「よく知ってんな、そんなこと。」

「先生って女子生徒とxxxしたんでしょ?」

「何、言ってんの?」

信じられん!て顔してるな・・・・(_)

どういうことだ?

「えっとぉー、前の学校でさ・・」

「ぁあ?それは男子・・・」

へ?

「そういう男子生徒がいたってこと。

まぁ、彼に言い寄られて騒ぎになったことは事実だけど。。。 
俺が学校辞めるまで、変な噂は尾ヒレがついて止まらなかったしね。。」

「じゃ・・ 全くの嘘・・」

「彼を傷つけたことは事実だしね..。
彼は狂言自殺までして、俺の気を引こうとした。。
少しだけ揺れたのは事実だよ。
誰だって あんなに真っ直ぐに・・・・」

ちょっと待って! それで、離婚したの!?」
思わず、聞いてしまった。

「妻は、変な噂の方を信じてしまったから・・。

俺を信じてくれなかった.. .. 」

この人の中に、人間らしい感情があり情熱が隠されていることに 僕は驚いていた。。

そして、どうして 僕にそんな話をするのか、わけがわからなかった。

僕とあなたに、何の共通項があるというのか。

「先生は・・ どうして僕にそんな話をするの?」

ずっと避けてきた 先生の目を見ながら僕は問う。

先生は、困ったような笑みを浮かべた。

「どうしようもないんだよ。。

君が好きなんだ.... 」

唐突な告白・・

でも、僕は不快じゃなかった。

僕が不快だったのは

2年の時に聞いた "先生と女子生徒"との噂話だったのだ..

そのことに、今、僕は気づいたんだ。

先生に愛されたかった自分に・・気づいてしまった・・いまさらね

..「ねぇ、先生、

一つだけ教えて。

その男子生徒って もしかして 名前・・」

ハハハ。  勘がいいな。お前。

「そうだよ! スンヒョン!」kkkk

((笑いごとじゃねーだろって))

「でもな、性格は正反対。
自信家で何でもできて、世の男どもが嫉妬するような男だった。

お前と話すたび、アイツとは正反対だと笑いが出た」

「じゃあ、何でっ。僕なんかを・」

「お前が一人で俯いてたり、空を見上げてたり、考え事してるのを見たから。

自信があるのか無いのか分かんないところも、
妙に大人に見える振る舞いも気になった。

あと、お前の横顔も好き。

キレイだと思って見てた・・」

嘘だろ.. 
嫌みなサイボーグだと思ってた男が、僕の前で初めて照れた。。。

この人、こんな人だった。。。。

チェスの色が一瞬で変わるように、この人が愛おしくなる。

「僕が 好き?」

「あぁ。」

「ずっと 好き?」

「たぶん。」

アハ。

「僕も あなたが好きだよ」

「本当?」

クス。

「本当。

たぶん、好き

たぶん、ずっと….好き..。 」


イ スンヒョン

チェ スンヒョン

ふたりのスンヒョン は どこか似ている


...

..end...


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