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労働市場の変遷

こんにちは。採用せんぱいの教授です。
本noteでは日本の戦後の労働政策史、労働組合、労働者派遣、副業・兼業、再就職支援、開業支援、外国人労働者、公共職業安定所、職業訓練、若年就業支援など、多岐にわたるテーマを扱っており、採用の歴史そのものを直接的に記載しているわけではございません。

しかしこれらのテーマは間接的に採用と深く関わっています。例えば、
●労働者派遣法の改正
→派遣労働者の雇用期間や就業可能な業務内容に影響を与え、企業の採用戦略に大きな変化をもたらしました。
●同一労働同一賃金の導入
→非正規雇用労働者の待遇改善を促し、正社員と非正規社員の採用におけるバランスに変化が生じると予想されます。
●副業・兼業の促進
→企業が人材を獲得する新たな方法として注目され、従来の採用手法に加えてプロジェクトベースやスキルベースの採用が増加する可能性があります。
●外国人労働者の受け入れ拡大
→人材不足の解消に貢献する一方、企業は多様な文化背景を持つ人材を適切に採用、育成する必要性に迫られています。

これらの政策や社会変化は、企業の採用活動に直接的・間接的に影響を与え、採用の歴史を形成してきました。
より深く採用の歴史を理解するためには、個別のテーマについて掘り下げ、時代背景や社会構造の変化と合わせた考察が必要です。


労働者派遣法の改正点について

労働者派遣法は何度か改正が行われており、特に2003年6月と2008年11月に改正案が提出されています。
2003年6月公布の改正
●期間制限の見直し
従来の1年間の期間制限が見直され、個別事業場ごとに最長3年まで労働者を受け入れ可能になりました。
○派遣期間(1〜3年)は、派遣先事業主が派遣先事業場の労働者の過半数代表の意見を聞いて定めることになりました。
●専門26業務の期間制限の廃止
いわゆる専門「26 業務」の3年間の期間制限に関する指導が廃止されました。
●短期間雇用の反復更新への配慮
契約の締結にあたり、派遣労働者の雇用の安定に配慮することが求められるようになりました。
●派遣期間制限違反時の措置
派遣期間の制限に違反した場合、派遣元事業主は派遣先と派遣労働者に派遣停止を通知しなければならず、派遣先が引き続き就業させようとする場合は、当該派遣労働者に雇用契約の申し込みをしなければならないとされました。
2008年11月提出の改正案
この改正案は、2008年9月に労働政策審議会から建議された内容に基づいています。
●派遣労働者の保護
派遣労働者の待遇改善と雇用の安定化を目的とした改正が行われました。
○派遣元事業主に対して、マージン率(派遣料金に占める賃金の割合)などの情報公開を義務化しました。
○雇入れなどの際に、派遣労働者に対して、1人当たりの派遣料金の額を明示することが義務付けられました。
○労働者派遣契約の解除の際の、派遣元および派遣先における派遣労働者の新たな就業機会の確保、休業手当などの支払いに要する費用負担などの措置を義務化しました。
●違法派遣への対策強化: 違法派遣の防止と迅速な対処を目的とした改正が行われました。
○違法派遣の場合、派遣先が違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合には、派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなされました。
○処分逃れを防止するため労働者派遣事業の許可などの欠格事由が整備されました。
これらの改正は、労働者派遣法の歴史における重要な転換点となり、派遣労働者の権利保護と雇用の安定化に大きく貢献しました。


同一労働同一賃金の導入について

背景
ソースは、パートタイム労働法、労働契約法、男女雇用機会均等法などの改正について言及しています。これらの改正は、労働者間の不合理な待遇差を解消し、より公平な労働環境を整備することを目指したものであり、同一労働同一賃金の導入と密接に関係しています。

●特に、パートタイム労働法では、通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取り扱いの禁止、事業主に対し、短時間労働者の待遇改善や通常の労働者への転換を推進するための措置を義務付けるなど、同一労働同一賃金の考え方に基づいた改正が行われました。

●労働契約法では、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた場合に無期労働契約への転換を認めるなど、有期雇用労働者の雇用安定化を図るための改正が行われ、これは同一労働同一賃金の実現に向けた重要なステップとなりました。

関連政策
ソースは、2016年に政府が掲げた「働き方改革」について言及しており、その中で「同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善」が主要な政策として挙げられています。

●働き方改革は、労働生産性の向上、賃金の上昇、需要の拡大などを通じて経済成長を図ることを目的としており、同一労働同一賃金は、その実現のための重要な手段として位置づけられています。
その後の展開
2019年に施行された働き方改革関連法についてこの法律には、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法などの改正が含まれており、同一労働同一賃金の考え方が具体的に法制度に反映されるようになりました。

●これらの改正により、正社員と非正規社員の間の不合理な待遇差は解消に向かうことが期待されていますが、実際にどの程度の効果があるのか、今後の検証が必要です。


副業・兼業の促進について

背景と政策
●働き方改革
2010年代後半からの働き方改革の流れの中で、副業・兼業は「柔軟な働き方」の一つとして位置づけられ、政府主導で促進が進められています。

働き方改革の目的は、労働生産性の向上、賃金の上昇、需要の拡大などを通じて経済成長を図ること であり、副業・兼業は、その実現のための重要な手段として位置づけられています。
●ガイドライン策定とモデル就業規則改定
厚生労働省は2018年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、モデル就業規則の副業・兼業に関する部分を改定しました。
これは、企業における副業・兼業のルールを明確化し、労働者が安心して副業・兼業に取り組める環境を整備することを目的としています。
同ガイドラインは、副業・兼業を希望する労働者が適切な職業選択を通じて多様なキャリア形成を図っていくことを促進するため、2020年9月と2022年7月に改定されています。

メリットとデメリット

副業・兼業には、企業と労働者の双方にとってメリットとデメリットが存在します。
企業側のメリット
●人材育成
従業員のスキルアップや新たな視点の獲得につながります。
●優秀な人材の獲得・流出防止
副業・兼業を認めることで、優秀な人材を獲得しやすくなるだけでなく、従業員のモチベーション向上や帰属意識の強化にもつながり、人材流出の防止にも役立ちます。
●新たな知識・顧客・経営資源の獲得
従業員の副業・兼業を通じて、新たな知識や技術、顧客基盤、ビジネスパートナーなどを獲得できる可能性があります。

企業側のデメリット
●本業への支障
従業員が副業・兼業に時間を割きすぎることで、本業のパフォーマンスが低下する可能性があります。
●人材流出などのリスク
従業員が副業・兼業先でより良い条件で働く機会を得て、転職してしまうリスクがあります。
●従業員への健康配慮
副業・兼業による労働時間の増加は、従業員の健康を損なう可能性があります。
●情報漏洩などのリスク管理
従業員が副業・兼業先で会社の機密情報などを漏洩してしまうリスクがあります。

労働者側のメリット
●所得増加:副業・兼業によって収入を増やすことができます。
●自身の能力・キャリア選択肢の拡大:新たなスキルや経験を積むことで、自身の能力を高め、キャリアの選択肢を広げることができます。
●自己実現の追求、幸福感の向上:興味のある分野や得意なことを活かすことで、自己実現や幸福感の向上につながります。
●創業に向けた準備期間の確保:副業・兼業を通じて、将来の独立・起業に向けた準備を行うことができます。
労働者側のデメリット
●就業時間の増加による本業への支障等:副業・兼業に時間を割きすぎることで、本業のパフォーマンスが低下したり、疲労が蓄積したりする可能性があります。
●本業・副業間でのタスク管理の困難さ:本業と副業・兼業の両立には、時間管理やタスク管理のスキルが求められます。

課題と今後の展望

●労働時間管理: 副業・兼業の場合の労働時間管理は、企業にとって大きな課題となっています。
厚生労働省はこの課題に対処するため「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」を立ち上げ、2019年8月に報告書を公表しました。

労働時間管理の明確化は、副業・兼業を促進する上で重要な課題であり、今後も議論が継続されることが予想されます。

●公正な処遇の確保: 多様な働き方が認められる社会において、副業・兼業を行う労働者に対しても、正社員と同様に公正な待遇を確保することが重要です。
これは同一労働同一賃金の考え方にもつながるものであり、今後の法整備や企業の取り組みが求められます。

●社会全体の意識改革: 副業・兼業に対する社会全体の理解を深め、多様な働き方を認め合う文化を醸成していくことが重要です。
従来の「会社に尽くす」という働き方から、「個人の能力やスキルを活かす」という働き方への転換を促す必要があります。

副業・兼業の促進は、労働者にとって収入増加やスキルアップなどの機会を提供するだけでなく、企業にとっても人材の多様化やイノベーション促進などの効果をもたらす可能性があります。
今後、副業・兼業はますます普及していくと考えられますが、その過程で発生する課題を解決し、より良い制度設計や運用を行っていくことが重要です。

外国人労働者の受け入れ拡大

政策の変遷
●高度外国人材の受け入れ促進
2000年頃から、日本は高度外国人材の受け入れ促進政策に力を入れ始めました。
ポイント制による出入国管理上の優遇措置(2012年5月導入)、高度外国人材認定要件の緩和(2013年)、高度外国人材に特化した在留期間無制限の新しい在留資格の創設(2014年)など、様々な政策が実施されてきました。

●技能実習制度
日本の企業等が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受入れて技能実習を実施する制度です。
○実習期間は最長5年で、技能実習1号、2号、3号の3つの段階があります。
○実習生は、実習実施者(企業)または監理団体による指導・支援を受けながら、技能を習得します。

●特定技能制度 2019年4月に導入された、一定の専門性・技能を有し、日本語能力要件を満たす外国人を受け入れる制度です。
○対象となる業種は、介護、外食業、建設業など、人手不足が深刻な分野が中心となっています。
○在留期間は最長5年で、家族の帯同は認められていません。


現状と課題
●外国人労働者数の増加
日本における外国人労働者数は増加傾向にあり、2023年には約180万人に達しています。
○これは少子高齢化による労働力不足を背景に外国人労働者への依存度が高まっていることを示しています。
●不法就労者問題
不法に入国して就労する者、在留資格の範囲を超えて就労する者、在留期間を超えて就労する者などが依然として存在します。
○不法就労者は悪質な労働ブローカーによる搾取や低賃金での雇用などのリスクにさらされています。
●外国人労働者の受け入れ体制
外国人労働者の生活支援、日本語教育、労働環境の整備など、受け入れ体制の整備が課題となっています。
○外国人労働者が安心して働き、生活できる環境を整備することが重要です。

今後の展望
●更なる受け入れ拡大: 人口減少が加速する中、外国人労働者の受け入れは今後も拡大していくと予想されます。
○労働力不足の深刻な分野を中心に、受け入れ対象の拡大や在留資格要件の緩和などが検討されています。
●受け入れ体制の強化: 外国人労働者が直面する様々な課題を解決し、多文化共生社会を実現するために、受け入れ体制の強化が求められています。
○日本語教育の充実、生活相談窓口の設置、差別や偏見の解消など、多岐にわたる取り組みが必要です。

今後も採用や人材に関連したトピックを共有していきたいなと思いますので、リアクションいただけると嬉しいです! 人数限定ですが、採用について壁打ちやお話ししたい方はこちらからどうぞm(_ _)m