”人はパンのみにて生くるものにあらず”
ー 英国に来た経緯、理由をおしえてください
初めて来たのはロンドンの王立音楽大学(Royal College of Music)留学で、この時は既に北海道大学第二外科教室(現腫瘍外科教室)の教室員でした。帰国して関連病院の外科部長になったりしましたが、やはりヴァイオリンをもっと極めずにはいられないとの思いで再渡英し、英国医師免許と永住権を取得し、現在に至ります。
ー 3歳からバイオリンを習ったそうですが、きっかけは何だったのでしょうか?
両親ともに西欧芸術に対する憧れがあったことが理由だと思います。家にミッシャ・エルマン(ウクライナ出身のヴァイオリニスト)のLPレコードや描きかけの油彩画が乗ったイーゼルがあったことが記憶にあります。
ー 「医師」そして「音楽家(ヴァイオリニスト)」としてご活躍ですが、なぜ「二刀流」を選ばれたのですか?
”人はパンのみにて生くるものにあらず” (新約聖書―マタイ伝・四)
器楽演奏家の常で、楽器を手にしていないと、どこか具合が悪くなったり眠れなくなったり罪の意識に苛まれます。一方、音楽をするためには、たくさんの他のことをして自分を豊かにしなければなりません。ですから音楽と科学という両極端をすることは、あながちそう悪いことではないことではないと思います。そうは言っても、それを許し見守る周囲の人々はさぞ大変で迷惑なことでしょう。
ー コロナ禍でのロックダウン、どのように乗り切られましたか。
ロックダウンは初めはその意味すら分からず、どうしたものかという感じでした。ある私の友人のヴァイオリニストは、奥様のピアニストと毎晩30分のホームコンサートを永久的に配信しようとしていました。私はそんなすごいことは全然できなかったのですが、余った時間とエネルギーを新しいレパートリーの勉強に費やしたりできたのは幸いでした。例えばシューマンの3番など。でなければ一生勉強しなかったかもしれません。
ー 心に残っているコンサートは?
2015年1月 南仏でニューイヤー・コンサートのソロイストとして招かれたのですが、直前にパリでシャルリー・エブド襲撃事件とその続発テロが起きたため、厳戒態勢の中を移動し会場についてみるとあちこちに白い花が飾られた”追悼コンサート”になっていました。
ー 3月に控えているコンサートについて伺います。今回で47回目のコンサートになるとの事ですが、見どころをおしえてください
プログラムは変化を持たせるために、珍しい曲と有名な曲、古い曲と新しい曲を混ぜるようにしていて、またヴァイオリンのショーピース的なものも加えることで全体のバランスをとります。今回は珍しいウォルトンのソナタとシューマン~クライスラーの幻想曲、有名なモーツアルト唯一の短調のホ短調ソナタ、ブリテンの‘Reveille(起床ラッパ)’などです。
ー 今後の目標・ご自身のPRなどお願いします。
コロナ禍の後、日本ツアーも再開できたので、これから内外の演奏会の回数を増やし、中断していたピアノ・トリオなど他の演奏家との交流も活発化していきたいと思います。
☆動画:昨年(2023年)の来日公演の様子はこちらから(期間限定配信)
☆岡嶋さんのクリニック 「セントラル・ジャパニーズ・クリニック」