個人事業主で売上や利益率の高い業界はどこか? 〜令和4年確報のデータを見てみる
儲かる業界はなにか?
創業相談のときに、今儲かってる業界はなんですか?と聞かれるとちょっとさめます。やりたいことがあって創業するんじゃなくて、儲かることを探しているだけなのかと。もちろん儲けることは重要ですが、それにしてもその手前がないとなあ、なんて感じます。
一方で何も調べずにあまり儲からない業界に突撃創業するのも、苦労が絶えないものです。
やはり調べるべきところは調べてから創業をしたいですね。ということで中小企業実態基本調査の個人事業主のパートの内容を確認していきたいと思います。
データの出典
中小企業実態基本調査 https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/kihon/
e-Statでデータをダウンロードできます。
それではどの業界の売上や利益率が高いかクイズです
売上と総利益と営業利益から①〜⑤に何の業界が当てはまるのか?考えてみてください。
選択肢は、製造業、卸売業、小売業、専門サービス業、宿泊・飲食業の⑤つの業界です。全部だと難しいので、いくつかの業界はあらかじめ記載しています。ぜひ考えてみてください。
正解は
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正解は?
① 製造業
② 卸売業
③ 小売業
④ 専門サービス業
⑤ 宿泊・飲食業
解説
どの順番で考えてもいいのですが、私が見るならの順番で解説します。
総利益率の高さに注目
まずは総利益率に注目しました。5業種の中で、④だけが96.2%と圧倒的に高いです。元手がかからないのでサービス業の可能性が高いです。その中でも専門サービス業ということで、弁護士等を含めた士業などもこの範疇でしょうか。その他のサービス業の総利益率(63.3%)も高いですが、更に圧倒的に高いわけです。
営業利益率の低さに注目
次に営業利益率を見ました。②③の業種が8.0%、6.6%と圧倒的に低いですね。付加価値がなかなか生み出せていない業界ということになります。加工したり調理することで付加価値を足せるわけですが、モノを右から左に流していくだけになると、どうしても利益率が低くなります。そうすると卸売業と小売業ということになるでしょう。
売上に注目
②の売上が33.2百万、③の売上が29.7百万円と、大きな差はないですがやはり卸売業のほうが売上は高いことが予想されます。②が卸売業、③が小売業ということになります。
なお、3年前のデータから比べると卸売業は1百万円売上が下がっているのに、小売業は7百万円売上が上がっています。ネットショップを使って直接取引の小売業が増えていることに起因するでしょう。卸売業は厳しい状態が続きます。
一方で、営業利益率では②卸売業8.0%、③小売業6.6%となっています。卸売業のほうが薄利多売で利益率は低いのが通常ですが、小売の方が利益率は低くなっています。ネットショップで売れても競合も多くますます利益率が低下しているのだと思います。
製造業と飲食業は利益構造が似ている
最後の①と⑤は売上も利益構造も似ているので、悩ましいですね。売上も利益率もすべて⑤の方が高い。普通に考えると設備投資がかかる製造業のほうが⑤のように感じます。一方で、飲食・宿泊業の中でも宿泊業は設備投資がかかるので、⑤の可能性もありそうです。 今回の正解は①が製造業で、⑤が宿泊・飲食業でした。これはちょっと見分けがつかないかもです。
個人事業主の製造業はますます儲からなくなっていることも考えられます。一方であまり設備がなくてもできる製造業が増えているのかもしれません。
ただ、製造業の数自体は減少しているので、大規模な製造業はさておき、個人レベルの製造業は苦しくなっているように感じます。
なお、一人あたりの人件費は製造業の方が高いのでその分利益率も下がっていそうです。
加えて、2022年のデータなので、まだまだコロナ禍の影響があったことを考えておく必要もありそうですね。
上記のデータはいくつか業界を省いていたので、全部のデータも貼り付けておきます
本のデータは以下のとおりです。
まとめ
利益率が低いからその業種で創業すべきではない!ということはありません。そんな業界でも工夫次第では売上も利益も変わってきます。今回紹介したのは、所詮、統計データです。
とは言え業界の平均の数値を把握しておくことは製品企画や値付にも影響してくると思いますので、色々と事前に調べることは大事だと思います。
また、同じ業界と言ってももっと細かい業種分類によって売上や利益率は変わってきます。そんなときは、中小企業政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」を見ると、利益率などの指標がわかります。データ数サンプルが少ないので、前述の政府の統計とは信頼性は異なりますが、参考までに。
卸売業と言ってもこれくらい細分化されていくわけです。
そんなところで。
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