「双星の約束」制作を振り返る
お久しぶりです。
2023年の楽曲振り返り後は無限に曲を作るorアニメを観るorありそうなアニメのストーリーを作るを繰り返して何も書けておらず、ところで今現在ある程度区切りが良くなったので、ライナーノーツ的なものを書いていこうと思います。
制作のきっかけ
今回、架空のアニメを題材にして楽曲を制作するというかたちを取りました。このタイプの制作手法は、M3-2023春のarukotonaikotoというサークルで頒布された「そらの青より ボーカル・ソングコレクション」に出会って知りました。
楽曲が魅力的である、というのはもちろんですが、アニメーションがほとんど公開されていないというのがかなり衝撃的でした。それは、アニメ作品においてストーリーやキャラ設定・キャラの関係性などの文脈的な楽しみ方をしているという気づきでもあり、また、アニメ制作から程遠い自分のようなアマチュア音楽家でも、アニメの元となるアイデアがあればこのような制作・演出の手法を取ることで、音楽とアニメという自分の好きなものを同時に発信できるのではないかという気づきでもありました。
また、自分の音楽活動の歩みの中でも「Pollaid」という、自分のローカルな友人達とやってきた営みを通じて、アニメ周辺の音楽に対する解像度がちょうど上がってきていたタイミングでもありました。Jpopやアニソン・キャラソン・声優ソングなどの分析を通じて、それらのなかの好きな要素もだんだんと言語化が進んできた段階で、そろそろちゃんとしたものを作れそうなくらいの煮詰まり方になってきていました。
Pollaidのコンセプト上、「女性ボーカルのアニソン&声優ソングを理解する」→「Pollaid(男性ボーカル)としての解釈ができるような楽曲構成を考える」という、複数段階にわたる理解と実践が必要であり、ここを各ステップに分解せずに実践してきた結果、Pollaidと一緒に作ってきた作品に対して完全な満足感が得られていませんでした。そこで一旦「女性ボーカルのアニソン&声優ソングを理解したうえで自分なりの女性ボーカルのアニソン&声優ソングを提示するところから考えてみよう」という心持ちになりました。
かくして、自分の考えた最強の女性ボーカルアニメ音楽と自分の好きな要素の詰まった架空のアニメ作品を発信することを目標にこのEP制作が始まりました。
作りたい"今よりちょっと背伸びしたくらいの"アニメ音楽
音楽を作ることに対しての価値観は人それぞれで、自分のなかでもいろいろな気持ちが浮き沈みしているわけですが、今回は「今よりちょっと背伸びしたくらい」の音楽を作れるといいなという気持ちを優先しました。
M3の存在を知っている人、参加している人には音楽がかなり好きな人が多くて、中には特定のジャンルの音楽に関しては既存の曲ほぼすべて知ってるのではないかくらいのコアな人もいると思います。自分自身も好きなジャンルや曲調に関しては、かなり掘り下げる方の人間なので、何か新しいと思える好きな音楽がないか割と常に飢えている状態で探しまくってます。そういった個人的な事情もあり、こういう空腹気味な人たちを少しでも満たしながら、ライトな方でも「ちゃんとしたアニソンっぽいな」と感じられるような音作り・作編曲・作詞を目指しました。
ここ数年のアニソンやJ-pop周辺では、かなりリハモ部分にも重心がある曲が増えてきているように感じます。メロディは割とありそうだけど、その上でなっている構成音があまり見かけない(もしくは機能的には同じだが遠い)、みたいなところを楽曲のフックにしていて、そこを聴く側もある程度楽しんでいるように感じます。また、展開の持たせ方もかなり多様になってきていると感じます。ABサビという構成のなかでもAをめちゃ細かく分割したり、Bの割り方を偶数小節で割らないみたいなものも見かけます。
またボカロPがアニメ作品の楽曲を手掛けることも増えてきました。今期のアニメだと「夜のクラゲは泳げない」「ブルーアーカイブ」という作品で40mPさんが関わっていたり、「神は遊戯に飢えている」でカラスヤサボウさんやemon(Tes.)さんが関わっていたり、「終末トレインどこへ行く?」で傘村トータさんが関わっていたり、「変人のサラダボウル」で100回嘔吐さんが関わっていたりなど、ボカロ畑由来のアニソンも増えてきています。
そこで、将来的にはボカロやアニメ作品の楽曲の垣根がほぼなくなって、お互いがお互いに影響を強くうけた作品が登場してもおかしくないなと考え、ボカロ感も含んだリハモもりもり多展開アニソン風楽曲が「ちょっと背伸びしたくらいの」アニメ音楽として成立しうるのではないかという着想を得ました。
一方で、ボカロ楽曲は合成音声を用いるほかにジャンルをくくるような大きな音楽的な特徴はなく(そこがボカロ楽曲を面白くしているポイントでもありますが)、この際、リハモもりもり多展開かつボカロ感のある曲も押さえておきたいなと思いリファレンスを探していたところ、じん(自然の敵P)さんの楽曲が大きなヒントとなりました。2010年代のカゲロウプロジェクトの作品を作っていたころから結構特殊なリハモをなされていましたが、この1年くらいの作品は特に多展開感もマシマシになっており、「NEO」や「JUVENILE」との出会いを通じて今回のEPの楽曲の指針が立ちました。
また、こういった多展開性のある楽曲を作るうえで、曲のなかで声の表情を変えながら丁寧に歌っていただける方を日夜探しまくり、今回の4名のゲストボーカルさんを見つけました。どの方も楽曲の魅力をより引き立てるように歌っていただけて感激でした。
「双星の約束」というテーマを考える
この作品のスタート地点は「流星の君に」でした。この楽曲は、もともとMCTCさんの歌詞が好きで、宇宙テーマの歌詞書くぞというモチベで書いた曲ですが、結構気にいっており、このまま宇宙テーマの作品を考えたら楽しいかも・・・!という思いがありました。同時にこの楽曲をアニメで起用するとしたらEDテーマ(序盤は歌詞とのリンクが見えてこないが最終回に近づくにつれて歌詞と作品の関連性が見えてきて嬉しくなるやつ)だろうと考え、ここをほぼ終着点に置く形で作品を作り始めました。
楽曲を作る時にはあまり考えてませんでしたが、この楽曲のストーリー的には、遠く離れたところにいる「君」に向けて歌うような内容となっているので、最終的に別れがあって終わりを迎える作品を考えることにしました。別れがあるのでキャラクターは一人を主軸に置くよりは二人いる方がよいかと考え、また宇宙の壮大感も得たかったので二つの惑星にそれぞれ住んでいる二人が出会って別れるまでを書くことに決めました。この別れとなるイベントやその展開を掘り下げていって、今回のイントロ部分を思いつくに至りました。
ところで、自分の好きなアニソンは元気の出るようなアップテンポな楽曲が多く、自分としてもそういった楽曲を作りたいという気持ちがあったので、世界観はある程度シリアス寄りになっても、登場するキャラクターはポップであってほしいというところから、二人のキャラ設定やキャラデザインをどういうイラストレーターさんに頼むとよいのかを考えました。アニメっぽい塗り方でポップなキャラデザインができる方を日夜探しまくったところ、小鳥かのんさんという素晴らしいイラストレーターさんに出会えて本当に良かったです。
このようにして、楽曲の土台となるテーマ性や架空のアニメ作品のテーマの大枠が決まりました。というところで、今回の振り返りはここまでにしようと思います。次回からは各楽曲について振り返っていきます。かなりだらだらと書いてしまいましたが、お付き合いいただきありがとうございました。
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