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「遠星の追憶」楽曲製作振り返り
楽曲製作振り返り記事の後編です。
前編では「双星の約束」の楽曲を振り返りました。
こちらも興味あればよろしくお願いします。
Tr.1 「エスケープ - ろいた, SYAMO、」
「遠星の追憶」として最初に聴かれることになる楽曲であり、「双星の約束」とのシナジーを感じつつ明るい楽曲を作りたいというのが出発点でした。
「双星の約束」でもそうでしたが、現実世界とは異なるような物語作品なので、なるべく手垢のついてないような響きを使うことを念頭に置きながら、イントロやAメロを考えました。ワンコーラス分メロを書きあげるまでかなり苦しかったですが、その分今までにないメロディラインをかけた気がしています。編曲部分は「双星の約束」との連続性で「エトワール」と上物の構成はほぼ同じで、キックとベースだけ電子音を強く押し出しています。
タイトルは過去を置き去りにして知らない世界へ逃げてきたというニュアンスで、歌詞は登場するキャラに対してニュートラルに、それぞれの想いが重なる部分を取るように書きました。「唄うまま、遊ぶまま、わがままな世界を紡ぎはじめる」が歌ってて気持ちよく、音の響き的にも一番気に入っている歌詞です。
今回もSYAMO、さんに歌ってもらうという前提で作ってそれを歌っていただきました。前回に引き続き非常に歌いにくい曲を作ってしまい申し訳ないなと思いながら楽曲を提出しましたが、それでも毎回最後まで良い表現ができないか模索していただいて感謝しております。
Tr.2 「夢想 - ろいた, Utane」
今作の登場人物である「アルバ」や惑星ブリンクの元来の姿を思い浮かべつつ製作しました。人工生命体として、また人の影響が及ぼされる前の惑星の姿として、異質で静かな表現や、人間が住めるように創っていく、動的で期待や祈りに似た表現が両方ともあるように、作曲部分や編曲部分のバランス感が求められてこの曲もかなり苦しかったですが、だいぶ不思議な雰囲気のある曲になったと思います。
今回の挿入歌はサビも含めて同じ編曲を基本的にやらない(コピペ禁止)という方針で作りました。1サビのストリングスは控え目にして、そこからラスサビに向かうにつれてどんどん壮大になるようなイメージで書いています。JungleやBreakcoreのようなドラムループの再構築が持つ無機質さに、生ドラムのサンプルをメインで使ったり、ストリングスなどと組み合わさることで、「アルバ」の持つ固さやそのうちに眠る希望であったり祈りに似た感覚を表現できた気がします。
作詞について、アルバイメージソングということで、Bメロの「幾億の時を刻んでも変わらない景色を思い出す」は過去のぬくもりに目を向ける感じにして、いさらイメージソングであるTr.3のBメロの「名前のない季節はいつの間にか通り過ぎるけど重ねたこの夢をそっと撫でてく」の未来向きの言葉とは対比となるかたちで書きました。そのほかにも、Tr.3と使う言葉を一部合わせています。
この曲も前回に引き続きゲストボーカルとしてUtaneさんに歌唱していただきました。作詞が終わった仮歌の時点だと、ひとつひとつのフレーズが浮いて聴こえてしまい大丈夫か心配でしたが、実際に音源が届いて差し替えた段階で「本当にこれ以外ありえないだろう」と思うような仕上がりで毎回最終段階でお助けいただいております。
Tr.3「puzzle - ろいた, つずな」
いさらイメージソングとして明るく優しい楽曲を制作しました。いさら自身の好奇心を反映して、どんどん展開が変わっていったり、優しさとして、楽器やボーカルパートの呼応やユニゾンのバランス感を意識しました。この理念のもとに基本的には展開のコピペ禁止縛りで製作し、サビも2回目でトランペットやチューブラーベルまで入ってきて、EPの最後の曲として大団円感のある曲に仕上がったと思います。
また、製作当初からファンタジー的な作品としての没入感を生むようなフックが何かほしいという気持ちがあり、その結果、変拍子(七拍子)パートが生まれました。自分のなかでは1.5拍(6/16)+1.5拍(6/16)+4拍(4/4)の区切りで作ったのですが、製作者以外の視点でどういうふうに聴こえるのか気になります。
歌詞について、物語の終盤くらいのある程度打ち解けたいさらのイメージで、自分自身やアルバ・ブリンクへの明るい気持ちをメインに書きました。"愛"という言葉は"死"という言葉と同じくらい強力な言葉なので、使い方が難しく、自分の作詞のなかで使う頻度は低いのですが、今回のストーリーありきで、ラスサビの「こんな世界をもっと一途に愛してみる」というかたちで使えてよかったです。
ボーカルはつずなさんに依頼させていただきました。楽曲の柔らかなイメージに合う声色で、かつ各パートごとに的確な表現で楽曲の魅力を引き上げていただき、大変感謝しております。
つずなさんの「春を待つ」のCover作品。ストリングスやピアノ入ってる楽曲ではとてもやさしい歌い方をされていて、このほかにも「メリュー」のCoverではギターに掻き消されないような力強い歌い方をされており、楽曲の編曲構成に合わせた素敵な歌い方の作品を投稿されていらっしゃいます。
まとめ
以上「遠星の追憶」の楽曲製作の小話でした。
「双星の約束」よりも自分の趣味全開で楽曲を作り、細部まで拘りを通しましたが、それと同じだけの(それ以上の)熱量を持って製作に関わってくださった皆様に大変感謝しております。また、M3でCDやDLカードではない形式のものが頒布されていると参加者の皆さん的には購入するときに戸惑いがあったかと思いますが、諦めずに質問してくださり大感謝でした。
次回春M3に向けて既に動き出しており、「双星の約束」をテーマに楽曲製作を進めています(シリーズとしては一旦区切りになると思います)。最高の曲が仕上がりつつあるので、来年も是非よろしくお願いいたします。
それではよいお年を。