イギリスにおけるチャリティとチャリティショップの歴史 山崎亮「チャリティショップとその魅力その1」トークセッション #1
2020年8月30日にkudan houseで開催された「NI-WA×Loidutsによる共感を広げるクリエイティブな9日間。」内で行われたトークセッション「山崎亮が語るチャリティショップとその魅力」を元に記事にしました。
山崎亮
(studio-L代表/ロイダッツチャリティショップ総合ディレクター)
1973年愛知県生まれ。東京大学大学院修了。博士(工学)。社会福祉士。2005年にstudio-Lを設立。地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住⺠参加型の総合計画づくり、瀬戶内国際芸術祭コミュニティアートプロジェクトなど、さまざまなプロジェクトを手がける。
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チャリティの歴史と語源 19世紀の疫病と貧困
僕はチャリティショップが大好きです。
アメリカではスリフトストアという呼ばれ方をすることがありますが、そんなお店がヨーロッパやアメリカにはたくさんあります。
簡単に説明すると、チャリティショップやスリフトストアは地域の方々が寄付してくれた衣類、あるいは靴やCDや本などを販売してその収益を慈善活動や寄付に当てるお店のことです。お店ですが、もともとはチャリティという行為であり制度なのです。
「チャリティ」という慈善活動が始まったのはイギリスといわれています。中世ぐらいからその概念自体はあったのですが、19世紀ぐらいにチャリティという運動が盛んになりました。
今は新型コロナウイルス感染症が大流行していますが、19世紀の産業革命前にペストやコレラといったウイルスが大流行した時期がありました。ロンドンも例外ではなく、多くの方々が亡くなったり、貧困な状態に陥いったりしていました。
ロンドンのイーストエンド(*1)という場所が、その当時の貧困エリアで、それに対して国の制度がなかなか追いついておらず、子どもが安く長い時間労働させられるような状況でした。貧困な方をサポートするシステムとして救貧法(*2)という法律がありますが、その法律もこの時点では十全とはいえませんでした。
*1 イーストエンド:特にこの地域には17世紀という早い時期から多くの移民が流入していた。さらに19世紀後半になるとロシアや東欧から迫害を逃れるために東欧系ユダヤ人の移住が大量に増加した。工業地域であったイースト・エンドにおいて彼らの多くは単純労働の人手として働かされ、社会的地位や生活基準の低い状況が続いた。
*2 救貧法:イギリスでは1531年に初めて救貧法が制定されてから、1948年国民扶助法によって救貧法が全廃されるまで、救貧法の改善が頻繁に行われていた。初期の救貧法では専ら浮浪者や乞食の処罰に重点が置かれていたが、宗教の普及と共に貧しいことは怠惰のゆえであり、神に見放されたことを表すという見方が広がっていった。
救貧法に定められた救貧院という施設では、『社会で貧乏に暮らしている人よりも貧乏な状態に置かねばみんな甘える』という理由で、その施設の状況はとても劣悪でした。このような状態が続くと、民間が動きます。
この民間による活動の総称が「チャリティ」でした。裕福な方からすると貧困の状態の人たちを見てられない。キリスト教などの宗教が関わっているということもあり、貧しい方々に対して何かサポートをしなければ、という概念が広がります。
貧しい人に対してだけではなく、障害のある人や海外で不当に飢餓の状態に陥った人たち、病気と闘っている人たちに対しても何か支援がいるのではないか。いろんなところに支援が必要だということでチャリティ活動が盛んになりました。
OXFAM(オックスファム)とチャリティショップ
チャリティショップに関係する活動を紹介します。
イギリスが関わった戦争によって、飢餓に陥っているエリアの状況を目の当たりにし、オックスフォードの女性たちがその地域に対して寄付を送ろうということで、みんなで食料や衣服・お金などを集めて送ることにしました。
オックスフォードの人たちのチームということで、「OXFAM(オックスファム)」と名付けられました。このチームは、戦争が終わった後も色んなチャリティ活動をやり続けるのですが、チャリティの財源がなかなかうまく集まらないということで、「オックスファムショップ」というものを作ることにしました。これが、チャリティショップの第1号です。人々が寄付したものを販売し、そそれを買ってくれた方々からいただいたお金をチャリティの活動のために使うという形が出来上がりました。
これを見て、他のチャリティ団体の人たちも、自分たちのショップを作るようになっていったのです。今ではイギリス全土に1万〜2万という数のチャリティショップがあるとチャリティ協会で聞いたことがあります。
日本は歴史的な背景もあってチャリティショップはあまり多くありません。イギリスをはじめヨーロッパは、どこのまちに住んでいても商店街の中に1、2軒はチャリティショップがあるようです。
僕はオーストラリアに住んでたことがありますが、オーストラリアにもチャリティショップはありました。アメリカに行くとスリフトストアがありますが、倹約のお店という感じで大きな倉庫のような場所に寄付されたものがたくさん並んでいます。
ロイダッツチャリティショップをすることになったきっかけ
世界の色んなところのチャリティショップに行くのが楽しみになり、10年ほど前から各国のチャリティショップを巡り始め、いつか日本でもチャリティショップをやってみたいと思いながら過ごしていました。
そんなとき、東京ビエンナーレという色んなアーティストが関わるアートの祭典にアーティストとして何か作品を出さないか、と声をかけていただいたんです。
僕は普段はコミュニティデザインというまちづくりのような仕事をしていて、自分が何か作品を作っているわけではありません。だから、
「作品を作るわけにはいかないんだけれども、チャリティショップをやるというのを作品にできませんか?」
と提案して、今回東京ビエンナーレ2020/2021の中で、Loiduts(ロイダッツ)というチャリティショップをやることになりました。
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トークセッションの様子はYoutubeでもご覧いただけます。
どうぞご覧ください!
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