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販売できなかった衣類のゆくえ 〜ナカノ株式会社〜

ロイダッツでは、2019年10月から千代田区番町外神田丸の内、あるときは大阪の百貨店内などに回収ボックスを設置してきました。

回収ボックスの設置から1年が経つころ、まだ着られる状態でありながらなかなか買い手が現れないアイテムの数が少しずつ増え、さまざまな想いで寄付いただいた衣類を目の前に、保管スペースが逼迫されていく状態に焦りを感じ始めていました。そんなときに、ある記事を見つけます💡

それは、「ゴミを出さない、生まない、服づくり」を目標に掲げるテンネンのオンラインマガジンでした。記事にあった衣服が積まれた写真のインパクトが衝撃的で、本当に国内かと何度も記事を読み返しました。

そんなインパクトのある工場を持つ企業の正体は、横浜市南区新川町に本社のあるナカノ株式会社

ナカノ株式会社は、安全保護具・安全靴・手袋・ユニフォーム・包装資材など各種作業用品の販売会社で、古着・古繊維の再利用にも取り組み、古着回収システムの先導役を果たす企業です。

ロイダッツの古着の持ち込みが可能か、ナカノさんのホームページの記載内容を確認したうえ問い合わせ、2020年12月に古着の持ち込みの受け入れと横浜工場にてご担当の藤田さんからお話を聞く機会をいただきました。
藤田さんから聞く「古着のリサイクル」の話は、まさに目から鱗。
今回は、お伺いしたお話の一部を、藤田さんからの質問をおり交ぜながら紹介します。


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1.国内のリサイクルの状況

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ナカノ株式会社 横浜工場

日本全国で家庭から年間約130万tの古着が手離され、1人あたり年間約10kgの洋服買って約10kg手放すといわれています

▶︎では10kg手放したうち、どれくらいがリサイクルに回っているでしょう?
答えは3kgほどです。10kgのうち7kgは燃えるゴミになっているというのが日本の状況です。

▶︎着なくなった古着はどうしていますか?
神奈川県は、昔からリサイクルがさかんです。なぜなら当社(ナカノ株式会社)が長年古着を回収しているからです。古着をリサイクルするのが当たり前の県といえます。

ドイツやイギリスと違い、古着回収をやるかやらないかを日本では市町村ごとで決めていますが、市町村の周辺に当社のようなところがないと、古着回収をしたくてもできないというのが現状です。
古着回収を行う企業は、日本海側では輸出のために大回りする必要が出てくるので、太平洋沿岸部に多く、また関東より南に多いのが現状です。さらに、製造工場がどこにあるかというのも重要です。ウエス(機械類の油など、汚れを拭き取るために用いる布)を作るにしても、使うところが近くにあった方がリサイクルが進みやすいといえます。

2.古着の回収方法

▶︎3kgのリサイクルを家庭からどのように回収しているでしょうか?
回収の種類は3つあります。
1つ目が行政回収。ある市では毎週火曜日に、古紙や段ボールと一緒に布・洋服を出すことができます。ひと月に2回出せる市もあれば、毎週出していい市もある。これが行政によって違うのは先ほど説明した通りです。全市民が対象なので、もっとも量が集まります。

2つ目が集団回収です。学校で回収していたり、公民館に指定された日に持ってきてもらったりします。集団回収の場合に主体となっているのは、地域の方達で、活動を広げていくことで焼却炉の稼働率を下げることができることから行政から奨励金や助成金が出たりすることもあります。

3つ目が店頭回収です。とある団体を支援しているというところもあれば、割引券を渡して次の購入につなげるという店舗もあります。主体となっているのは企業で、足を運んでもらい、割引券を渡してまた購入してもらうことを狙いとしています。CSR活動として取り組む企業もあり、2010年頃から増えました。

3.再利用の方法

当社に入ってきたものは、すべて手で選別します。それはどの国でも同じです。当社では、200〜240種類ほどに選別していきます。

▶︎選別後は、どのようなものに再利用されているでしょう?
一つは中古衣料全体の50%を占めています。もっともエネルギーが少ない方法ですが、国内では簡単には売れず、ほとんどが中古衣料の輸出に回ります。

中古衣料にならないような品質のものや、基準に合わないもののうち、コットンやそれに準ずる素材のものがウエスに回ります。これが20%ぐらい

中古衣料にもウエスにもならないもののほとんどが、セーター、コートといった冬物衣料です。中古衣料の輸出先は東南アジアを始めとした赤道付近の国が多く、冬物はほとんど動かないため、自動車の内装材や手袋にしていて、これが30%ほどです。

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ナカノ株式会社のリサイクルの割合

ここでは、繊維を機械でひっかき綿状に戻す「反毛」という工程を行います。セーターやウールコートをバラバラに破砕し、反毛機で生地をほぐして糸に戻します。糸をさらに戻すと繊維になり反毛綿になります。当社ではこの反毛綿から糸に紡ぎ、リサイクル手袋を作っています。名前が「よみがえり」と言います。

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ナカノ株式会社でつくられている手袋

反毛にはもう一つ、ガーネット反毛というものがあります。こちらの方が歴史は古く、明治の近代化とともにヨーロッパから入ってきました。素材はウールです。洋服をつくる工程での染色・脱色は非常に環境負荷がかかるため、染色・脱色は一切していません。50種類ほどに色分けをし、色ごとに反毛屋さんは来季の洋服のオーダーに合わせて色の綿をつくり、糸にします。

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左:雑反毛による綿 右:ガーネット反毛による綿

4.ロイダッツの活動について

東京は、リサイクル率が低いエリアです。道路の幅が狭く、回収車で回ることがとても難しいことが理由として挙げられます。日本は少子高齢化ですが、中古衣料の行き先は東南アジアで、子ども服は人気です。ロイダッツのような活動に賛同する方は多いと思いますので、がんばってください。

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活動へのエールもいただきました!藤田さん、ありがとうございます。

さいごに

今回、ナカノ株式会社横浜工場に訪れて最初に驚いたのは、持ち込んだ衣服を車に積んだまま計量し、荷下ろしした後に再度車を計量するというシステムです!

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しかも車から重量が見えるのです!

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今回持ち込ませてもらった衣服の量は70kgだったことが一眼でわかります。(窓からお姉さんがOKと指で示してくれています)


ナカノさんが、古着・古繊維リサイクルをスタートし、回収システムを確立した背景を調べていくと、創業者中野静夫さんと現会長中野聰恭さんとで書かれた「ボロのはなし―ボロとくらしの物語百年史」という書籍に行き当たりました。
衣類のリサイクルについてや出版当時(1987年)の繊維業界の現状・課題が書かれているので、私たちも読んで勉強していきたいと思います。

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