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矢作厩舎から見る「逃げ」という戦術について

ドバイを見ていた時にパンサラッサが逃げ切りを決めたのを見て、久々にコラムを書く気持ちになりました。

今回は、「逃げ」という戦術について自分の考えを書いていこうと思います。
*今回の内容については、ローエングリンの見解を述べているものになり、データとの照合や事実確認などを行い、内容を保証をされているものではありません。こちらは御了承の上で読み進めていただければと思います。

内容については、息を入れることが求められる1600以上の内容を中心に書いていきますが、息を入れることをしない1400以下の内容でも一部の内容は使いまわせるので、この辺りは読んでいる皆様が補完いただければと思います。

では、いきなりなのですが、今の矢作厩舎の獲得賞金順に馬を並べてみます。
「ステイフーリッシュ」「ジャスティン」「パンサラッサ」「ユニコーンライオン」「ダノンファラオ」「ミッキーブリランテ」「ホウオウアマゾン」「エントシャイデン」「バスラットレオン」「キングオブドラゴン」

まあ、見事な逃げ馬ばかり。過去のスーパーホースに当たる
「コントレイル」「リスグラシュー」「ラヴズオンリーユー」などは逃げ馬のイメージはありませんが、今の矢作厩舎は意図的に逃げ馬を作っている状況にあると見て取れますね。

話しが飛んで申し訳ないのですが、次は「逃げ」という戦術を考えていきます。
自分なりに考える「逃げ」のメリットについて書いていきますね。

1.ペース設定を自分ですることが可能
2.距離ロスが一番少なく競馬ができる
3.芝のレースについては外に馬を置かない限り進路を自由に設定できる
4.揉まれる・前が壁になるなどの不利を受けることがない
5.前に馬を置かないのでダートや荒れた芝の場合などのキックバックの不利を受けることがない
6.前に馬を置かないで走ることで、自分のストライドで走ることができ、気性面でも安定がしやすい

こうやって書いてみると、逃げは最高の戦術であることは間違い無いですね。
「最短距離を走れて、不利を受けにくく、芝であれば進路まで選べる」
じゃあ、なぜこの戦術を皆が採用してこないのか、というと、理由は2つだと思います。

①.逃げ馬はレースにおいて1頭しか存在できない
②.番手の馬のプレッシャーなど自分の力以外の部分で敗因が出てくる

まずは①についてですが、考えてみれば当たり前の話しなのですが、逃げ馬が2頭いればどちらかは逃げられないわけです。また、逃げ馬が2頭いること争いをうむことになり、隊列を作るまでに時間がかかれば負荷が大きくかかることを意味します。

次に②についてですが、隊列が仮にできたとしても、自分の力を出し切れるかどうかは自分の力以外の部分で決することが大きくなります。例えば番手の馬の仕掛けのタイミングが早ければ自分のスパートも早くなり負ける可能性が高くなりますし、スローペースの逃げを選択することはまくりを許すことになり、展開がキツくなってしまうことになります。

ここまで読んでいただけるとわかると思いますが、「逃げ」というのは勝つか負けるか、ピンパーの選択肢になりやすい、ということになります。

また、「逃げ馬」と「追い込み馬」を比べた場合のレース負荷については、これは過去のコラムでも触れましたが、
「逃げ」については、「ダッシュ」→「ジョグ」→「ダッシュ」
となるのに対し、
「追い込み」については、「ジョグ」→「ダッシュ」
となることで、負荷が大きくなりやすいです。競争馬の現役寿命という意味でも、「逃げ馬」の方が心臓負荷も大きく、大敗が続くことでレースをやめてしまいやすくなるデメリットもあり、短くなることが多いと推定します。

では、このデメリットがある中で矢作厩舎が「逃げ」の戦術を積極的に利用している意味は何かと考えると、「着とりをするよりに頭をとる」ことに徹しているからかなと思います。

矢作厩舎の今年の成績については、
勝率が「9%」連対率が「18.7%」複勝率が「23%」
となり、過去の成績を見ても連対率が20%を超えたのは1回、複勝率が30%を超えたことはありません。

比較として適当に上げてみた厩舎として友道厩舎を上げて見ましたが、
勝率が「12.8%」連対率が「20.5%」複勝率が「33.3%」
となり、年によっては複勝率は「40%」を超えてきます。

もちろん、すぐに結果を求める友道厩舎と数を使ってくる矢作厩舎のそもそもの取り組みの違いなどもありますが、勝率に対しての複勝率の差は見てわかりやすいかと思います。

また、去年の勝利内容を見てもわかりますが、逃げないし先行押し切りの競馬が上記のように多くを占めています。

これは、矢作厩舎が安定的に賞金を持ち帰ることよりも「勝つ」ということに大きなこだわりを持っている、サラブレットの価値を高める本質は勝利ということを掲げていることを示すのでは無いかなと思います。

日本の競馬においては、色々とペースがあり、縦長だったり団子の隊列であること、芝のコンディションもさまざまあり、かなりのレースバリレーションがありますが、特にヨーロッパのレースでは団子で全体が動き、揉まれる競馬に慣れている状況になること、また、ほぼ全てのレースで挑戦するレースにおいて内外の有利不利が少なく、芝のコンディションが一定であり距離ロスが少ない方が有利であること、海外挑戦を中心としている矢作厩舎が日本馬で結果を出すことを突き詰めた結果であることもあるかなと思います。

話しは変わって、逃げ馬にも大きく2パターンのやり方があります。

(1)隊列ができてからためを作って最後の直線でポジションの優勢性を持ったままスパートをするタイプ
(2)隊列ができた後もためを作らずに一定のペースで走り続け、後方の足を削った状態を作り出すタイプ

(1)について過去のスーパーホースを例に出すのであれば、ダイワスカーレットやキタサンブラックでしょうか。

このタイプの逃げ馬については、競りかけられることがやりやすくなる(溜めができるということは、そこで番手がアクションを起こしやすい)ため、状況により逃げの形は崩れやすくなります。ただ、逃げないと競馬できない馬が少なく、仮にプッシュをされても、溜めさえきけば好走する可能性はあることも特徴ですね。
※スーパーホースについては、溜めが入っても競りかけられることが少なく感じます。これは、馬の生態として、ボスと認知されて周りが圧倒されるからなのか、強い馬に絡んで自分が損をすることを嫌うのか、いずれかなきはしますが、どちらと明言をするのは難しいのかなという印象です。

(2)については、サイレンススズカや最近だとパンサラッサなども対象になってくると思います。矢作厩舎の逃げはこのパターンが多いです。

このタイプの逃げ馬については、スタミナを活かす逃げになり、一定スピードで走り切ることに優れています。周りの馬はついていくことでバテてしまう恐れがあり、逃げの形を崩すことがかなり難しくなります。ただ、その形でもプッシュをされた場合には、大きな敗戦になることも多く、このタイプは逃げないと好走できない馬が多くあります。

ただ、難しいこととして、騎手の信用度というか、度胸が試されることになり、どこまで行っていいのか、という部分で周りの馬に合わせない分、難しい挙動になりがちです。ここで矢作厩舎の度量というか、強く逃げていいぞ、負けても仕方ない、ということを騎手(馬主や関係者にも)にしっかりと認知させていることが、異なる騎手を使っても結果を出していることにつながると思いますし、愛弟子の坂井流星騎手については、逃げる時にしっかり動かし出すことに長けている部分からも、見てとれると思います。
*新人騎手や逃げの下手な騎手については、とにかくこの動きが苦手で、隊列ができると緩めてしまいます。(1)の逃げを打つことで、スタミナをできる限り使わないようにすることで、競られやすくなり、全馬余力のある中で直線を迎えて脚力勝負になり敗戦する、なども多く見られます。矢作厩舎の逃げはこの状況を極力作らないように徹底をしていますね。

もちろん、逃げの形を作りやすくするために、逃げる騎手は大きなアクションで周りの馬に逃げることを主張し周りを攻めにくくすること、ゲートからのダッシュ力を鍛える調教をしており、二の足でついてきにくくするような状況を作ることも意識をしているかと思います。

そのため、馬券戦略上見て取れるのは、矢作厩舎の逃げ馬が出てくる時には、人気馬の好走がしにくい土壌にある(スローの脚力勝負になりにくい、現代競馬においてスローの方が多く発生し、脚力のある馬が人気になりやすい)ということを考えることができるようになりますね。
*自分はデータ派ではありませんので、細かな内容をチェックはしていませんが、このような厩舎がどんな色を持って競走馬の育成に取り組んでいるのかはある程度意識をするようにしています。そうすると、パドックで馬をみるときにこの厩舎だからこの作りになるのか、と意識もできますし、馬の使い方などである程度何を考えているのかを読み取れるようになるので。

海外騎手が少なくなり、無難な結果を求める(スロー信仰が根強い)騎手がかなり多くなっている現代の日本競馬においては、この戦略はかなり有効であると思っていて、いつものレースと違うことが求められる状況になり、他の厩舎が求めるレース質とかけ離れていることで、矢作厩舎の現在の成績にもつながっているんだと思います。
*他の厩舎はスローで足を使える馬を中心に馬づくりをしていることも多く、流れるペースで追走に足を使い、いつものパフォーマンスを発揮できない、といった結果になりやすいです。

では、ここまでで本日のコラムについては以上となります。

一つおまけになりますが、今週の大阪杯に出走するジャックドールについては、(1)のタイプに値すると思います。一定ペースで逃げて結果を出すというより、前でしっかりと上りを使って突き放すことができる、ということですね。
今回が初めてのG1、前述をしているように、逃げの形を崩されることになりやすい形ではあるので、他の馬がプッシュをしてくるのかどうかはかなり大事なポイントになってきます。スーパーホースとして周りに圧をかけることができる逸材なのか、仮に逃げられなかった場合にパフォーマンスを落とすタイプなのか、をしっかり精査することが、的中のポイントになってくるのかなと。

ここまで長文お読みいただきまして、ありがとうございました!
皆様の競馬ライフの一つの気づきとなれば幸いです。

最後に宣伝となりますが、もう約2年ほどとなりましたが、私は競馬コミュニティを主催しております。

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今週は3/31(木)22:30よりツイキャスもやりますので、この内容の補足もしつつ、他にも色々な話しもできればと思っております、よかったら遊びに来てくださいね。

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ローエングリン
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