個が活きる新しいチャンスを ー Gaussyの挑戦 #01 【Gaussy株式会社CEO 中村遼太郎、Gaussy株式会社CTO ケイレブクレイン】
ロジ人では物流テック(LogiTech)と分類される業界の著名人、サービスをインタビューしていきます。今回は、「物流の世界を新たなチャンスを生み出す場所」に変えていく、Gaussy株式会社のCEO 中村遼太郎さんと、CTOのケイレブ クレインさんにお時間を頂きました。#01ではGaussyの設立経緯、目指すべき世界観についてお聞きしていきたいと思います。
設立経緯と目指すビジョン
ー 貴社は2022年7月に、三菱商事が提供していた「Roboware(ロボウェア)」や「WareX(ウェアエックス)」という倉庫の新規事業をさらに成長させるために、三菱商事から分離した新会社として設立されたと理解しています。会社設立までの経緯や目指すところ、そして会社設立によって実現したいビジョンについて教えていただけますか。
中村さん:私は三菱商事で物流の仕事に従事していました。
三菱商事では、新しい経験を積む機会を提供してくれる文化があります。その関係で、2017年にシリコンバレーに行く機会をもらいました。当時、シリコンバレーではUberやLyftのライドシェアが全盛期で、TeslaやGoogleのWaymoなど自動運転が出始めていた時期であり、モビリティ業界が大きく変わるタイミングでした。
それに伴い、ヒトの動きに変革が起こるのと同じように、モノの動きでも変化が起こりつつあり、物流関連のスタートアップが多く勃興していました。当時ですと、国際輸送業界でe-forwarderingを提供するFlexportが先駆けてユニコーンになり、物流領域のスタートアップが注目を浴びつつありました。
また、倉庫ロボットは2012年ごろからメーカーが現れはじめ、2017年当時はすでに形が整い、販売拡大の時期に差し掛かっていたんですね。
物流の世界は広大で、フォワーディング、海上輸送、航空輸送、倉庫、トラック、ラストワンマイルなど、多様なチェーンが組み合わさっています。その中で、新たな取り組みを始めたいと思いました。それが倉庫だったのです。我々は倉庫市場に焦点を絞り、シェアリングモデルを始めることにし、またロボットのサービス事業も視野に入れました。海外ではRaaS(Robot as a Service)と呼ばれる、倉庫ロボットをサービスとして簡単に使えるモデルが既に出始めていました。
これら2つの新しい事業にチャレンジするために、日本に戻りました。
ロボットについては、米国をはじめとするスタートアップとパートナーシップを組み、物品売買ではなく、サービスとしてロボットを使えるようにする方法を議論したんですね。
また倉庫のシェアリングについては、シアトルに本社を置くスタートアップ、Flexeと資本提携しました。彼らのモデルは非常に魅力的で、現在ではユニコーン企業となっていますが、当時はまだ小さな企業でした。これが私たちのビジネスの始まりです。私たちは2つのビジネス、倉庫ロボット(Roboware)と倉庫シェアリング(WareX)を立ち上げました。
そして私たちが目指しているビジョンについては、私が商社にいた経験から、サプライチェーンが大きなテーマになっています。
サプライチェーンとは基本的に「点」と「線」があると考えています。「点」は倉庫での保管、「線」はトラックや海上、航空などの輸送を指します。生産地から消費地までを「点」と「線」でつないでいくのがサプライチェーンです。しかし、その中で「点」が固定化していることが課題だと感じていました。この「点」が流動的で柔軟に変化できるようになるにはどうしたら良いか、ということを今でも探り続けています。
ビジョンの具体化と難しさ
中村さん:最近はフィジカルインターネットという言葉が出始めていますが、たしかに倉庫はデータセンターと同じように、商品をストレージしプロセシングする機能を持っています。しかし、大きく違う点があります。それは、倉庫では有形のモノを保管していることで、無形のゼロイチのデータを保管しているわけではないことです。倉庫で保管されているモノは形状もさまざまで、匂いもあります。これらがすごく物流を複雑化する要因です。これを標準化するのはとても難しい。
データを運ぶのは今の時代では非常に安価で単一的です。しかし、モノを輸送するコストは様々で、時間もかかり、単一化することは難しい。新しく生まれたインターネット業界と、昔からあるロジスティクスを見ると成り立ちが全く違います。一言でフィジカルインターネットと言っても、デジタルにおけるパケット輸送よりはずっと難易度が高いと感じています。
もしフィジカルインターネットの概念が、Amazonのようになんでもどこでも買えるような概念に近い場合、言い換えると、どこでもどんな貨物でも保管できるようなクラウド倉庫を目指しているとします。その場合、拠点はセントラル化し、中央集権型の巨大倉庫群でどこでも保管ができますという世界かもしれません。しかし我々Gaussyは、メルカリやShopifyのように、各個人や各EC事業者が、自由に取引ができ、もっと分散化された世界観を倉庫業界で実現したいと考えています。
すごく難しいことですが、我々は倉庫事業者の皆様をエンパワーできるような存在になれればと思っています。倉庫の最大の特徴は物理的な立地であり、その個が活きるような分散型の世界を実現したい。各社がつながることも大切なことですが、クラウド化することにより各事業者様の特徴や優位性が活きない世界にはしたくないと考えています。
集中と分散というより、分散した後に個々が生きることを考えているということですね。
Gaussyの由来と目指す役割とは
中村さん:次にGaussyという会社の名前の由来です。ちょうど1年前に決めた名前で、由来は学者のガウスから来ています。ガウスは天才科学者といわれていますが、私たちは彼のように様々な発明ができるようになりたいと思い、Gaussy(Gaussらしくという意味)という名前を付けました。
もう一つはガウス加速器をイメージしました。ガウス加速器はネオジム磁石など強力な磁力が急に引き付けることによって潜在的な運動量の何倍ものパワーに変換する原理を利用しています。我々はそれぞれのポテンシャルを10倍にも20倍にもすることができるようになりたいと考えています。
ー 等倍の力ではなく、何倍にも大きな力に変えて価値を提供したいということですね。
中村さん:そうです。一つの動きで我々が磁石のような役割を果たせ、それを何倍にもしてエンパワーできるようになりたい。Gaussyは、各倉庫の運営者様が自らのビジネスを伸ばせるために、必要な価値を届けられる存在になれたらいいなと考えています。
ー 業界に携わる者として素晴らしいと感銘を受けました。ありがとうございます。
中村さん:まだ、新しい時代の1合目にいる為、あまたある山のうちどの山が最適かわからないことも多くあります。その中でGaussyは“個が活き、分散化された世界”を目指していきます。
また、弊社は去年カーブアウトし、パートナーを迎え入れることが出来ました。三菱商事出身の会社ですが、ベンチャーのようにアグレッシブに事業を展開していくことを意識しています。
<取材・編集:ロジ人編集部>
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