とにかく会話、で視野は広がる #02 【NEXT Logistics Japan株式会社 梅村幸生】
ロジ人では物流テックと分類される業界の著名人、サービスにフォーカスしていきます。今回はNEXT Logistics Japan株式会社で代表取締役を務める梅村 幸生さんにインタビューしました。#02では、起業に至るまでの道のりについてお話いただいています。
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<プロフィール>
社会課題の解決を模索した学生時代
ー 梅村さんは、学生時代はどんな学生でしたか。
学生時代は、経済学を専攻して社会課題を解決するための方法について学んでいました。例えば、交通渋滞であれば実際の車の流通量をはじめとした状況を整理して、コンピューターや他の学問を用いて解決策を模索する、といったことを専門にしていました。当時から交通や物流といった、現在仕事で取り組んでいる内容を研究していたことを覚えています。
ー 社会課題の解決を志した学生時代を経て、社会人生活がスタートするわけですが、当時はどのようなお考えで就職活動をされていましたか。
学生時代に社会課題の解決策を学んではいましたが、正直特に「経験や知識を活かせる業界・会社に入りたい」と考えてはいませんでした。当時、就職活動をするにあたって重要視していたのは「斜陽産業」であることです。今考えてみるとかなり天邪鬼的な発想だなと感じますが、将来的に衰退していく、売上が伸び悩むということは、今後何かを変えていかなければいけない組織であるともいえます。産業だったり、組織体系だったり、会社によって課題や問題は異なりますが、困難や変革の時期に直面している会社に所属するからこそ得ることのできる経験、仕事があると考えたのです。
就職活動中は、とにかく数多くの企業の人事担当者に会いにいき「50年後の御社はどうなっているとお考えですか」と質問を問いかけ続けました。最終的には、様々な企業の方々にお会いし、社員の雰囲気や企業の将来性を加味した上で日野自動車株式会社に新卒入社することに決めたのです。
ー では、新卒で日野自動車株式会社に入社した後は、どのようなキャリアをお過ごしになったのでしょうか。
会社に入社してからは、主に国内向けの車の商品企画や販売企画マーケティングを担当していました。2トン車と呼ばれる小型トラックをはじめとした様々な車両販売に携わるなかで、シェア数%台から業績を上げ、現在ではおよそ3割にまで上る商品もあるなど、キャリアを通じて貴重な経験を積むことができたと感じています。
当時の日野自動車は、大型中型トラック販売以外の新たな事業の開拓を迫られていました。時代の変化によって物流の形態が変化し、宅配サービスなどの新しいものが世の中には生まれてきます。会社の売り上げ、業績を伸ばしていくために、それまで手がけていなかった小型トラックの販売を開始し、新しいサービスを世の中に提供したことが、結果として実を結んだと考えています。
色々な業界の人と話すことで見える世界
ー 学生時代を振り返ってみて、やっておけばよかったと思うことは何かありますか。
自分の考えや価値観にこだわらず、色々な業界の人と話しておくべきだったと感じています。現在は、仕事の関係もあって幅広い業種の荷主の方とお話しする機会を持てています。およそ100社ほどの方々と会話して意見交換をするなかで感じるのは、「自分の知らない世界・知識はまだまだある」ということです。例えば、現在弊社が利用している積載効率化システム「NeLOSS(ネロス)」を開発してくださったテクノロジーのスタートアップ企業もそうですし、メーカー企業もそう、会話をするなかで自分の知らない知識や発想がたくさん出てくるから、非常に刺激的ですし勉強になることばかりです。
ー 梅村さんも就職活動を通して様々な企業担当者の方々と意見交換をしたと伺いました。
確かに私も就職活動の際には、たくさんの企業の方々とお話しさせていただきました。ただ、上述したように自分の就職活動で重視していた「斜陽産業」に限定して、人に話しかけてしまっていたことが後悔している点です。自分の希望する業種・産業にピンポイントで絞り、就職活動やインターンシップをするのではなく、まずは「世の中にはどんな仕事があるのか」と自ら視野を狭めることなく行動することが進路選択する上で大切だと感じています。
ー その後、梅村さんは日野自動車株式会社の傘下にあたる「NEXT Logistics Japan株式会社」をご自身で立ち上げられたと思いますが、起業された経緯やきっかけについて教えてください。
弊社は元々トヨタグループのメンバーで実施していたプロジェクトが前身です。自動車や自動車に関連する技術を用いて社会課題を解決することを目的に、トヨタグループのメンバーが集まりプロジェクトを開始したのが2017年になります。
ー 「NEXT Logistics Japan株式会社」を立ち上げるにあたって、ご自身のなかには社会課題の解決に対してどういった想いがありましたか。
私自身、長い期間小型トラックを販売していましたが、心の中では会社のビジネスモデルを変えなければいけない、物流の社会課題を解決しなければならないと、ずっと考えていました。現会社を立ち上げるにあたっての強い想いもあって、リーダーとしてプロジェクトに参画したことをきっかけに、物流にのめり込んで行くようになったのです。
ー 実際に物流業界に携わるようになって、業界全体の捉え方や社会課題の解決への認識など、以前と何かギャップはありましたか。
実際に物流業界に身を置くことで初めて見える景色や社会課題の捉え方があることには、プロジェクト開始当初は正直驚きました。プロジェクト以前にトラックの販売やマーケティングを担当していたこともあって、トラックは物流を支える一つの柱と捉えていました。しかし、実際に物流業界のフィールドに立つと、トラックやお客さんだけではない、物流を取り巻く様々な関係性が見えてくるようになったのです。物流業界全体の認識が変化したことで、社会課題に対しても従来の見え方とは全く異なるようになったのは、大きな発見でした。
物流業界の構造的な改善
ー 物流業界というフィールドに立ったからこそわかる、業界内の構造的な課題や今後改善していきたいと考えられていることはありますか。
一番は、トラックドライバーの業務効率化です。2024年問題に関連する話なのですが、現状ドライバーは輸送以外の業務を複数行っています。特に荷物の積み込み業務は、倉庫にトラックが到着した時点で積荷が届いておらず、無駄な待ち時間が発生するケースも多いです。貴重な運び手の労働時間をロスしないためにも、業務内容の割り振りや業界内の認識を改めていかなければならないと考えています。
ー 確かに物流業界内で配送のできる人員が限られている以上、ドライバーの業務効率化は必須です。先ほど例に挙げられた「荷待ち時間の発生」などの課題を解決するためには、倉庫とドライバーとの連携が重要になってくるということでしょうか。
どこか一部の問題ではなく、サプライチェーン全体の問題だと考えています。荷物の輸送依頼は、企業側からの商品のオーダーが起点です。現状は、オーダーを中心にサプライチェーン全体を動かしています。しかし、今後ドライバーの労働力が限られる状況下では、オーダーされた荷物すべてを先方の要望通りに配送できるわけではありません。そうした部分への理解も必要になるとは思います。
ー 現状のサプライチェーンの形を「オーダー主体」から「輸送力主体」に変化させていくことが、業界全体で求められていくわけですね。
はい。例えばお客様に荷物を届けるラストワンマイルで問題が発生したら、サプライチェーン全体のどこかがボトルネックになっている部分が必ずあります。オーダーする側なのか、倉庫なのか、はたまた配達現場なのか、というように非効率的な部分を見つけて情報を精査していくことが今後の物流業界には必要になるのです。
<取材・編集:ロジ人編集部>
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