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追記 - After Reports - 栃木・永野川・桜篇

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 昨年12月にアップした栃木市を流れる永野川の記事において、大きな浸水被害を受けた栃木工業高校と隣接する永野川緑地公園の桜について書いた。そこで今年3月に見頃を迎えた同地の桜を撮影したのでお届けする。

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 2019年10月12日、台風19号による大雨によって発生した、永野川に架かる上人橋付近の決壊で、そのごく近くに学び舎を置く栃木工業高校と、その河川敷にある永野川緑地公園が浸水で甚大なダメージを受けたことは以前の記事でも述べた。
 この時から約4か月、栃木工業高校は被災後、2019年10月29日には残った2階以上の教室などを使用して授業自体は再開されたものの、ほとんどが浸水被害を受けた実習用の工作機械に関しては修理・入替えの目途が立っておらず、昨年12月から今年2月まで、他校の設備を借りて実習を行っていた。

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 そのような困難を乗り越えた生徒たちも、無事今年3月2日に卒業を迎えた。コロナウィルス一色の世相の中、在校生の不参加、校歌・国歌の斉唱なし・全員のマスク着用など、徹底した感染防止対策を施し卒業式を執り行った。同行の体育館の改修が進められていたものの式には間に合わず、残念ながら学び舎ではなく栃木文化会館での開催である。幾多の苦難を経験した総勢194名が、高校生活に終止符を打って卒業していった。

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 同校の周囲を歩くと、まだまだ被害の大きさを実感させる。曲がったネット、校舎に寄せられた災害ゴミ、ひび割れた敷地の土など、これからまだまだ手をつけなければいけない箇所は山積している。
 工事用の車両の出入りも多く、重機や作業員の姿も見受けられる。一時期よりはずっと少なくなったが、復興はまだ道半ばだ。

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 反面、永野川緑地公園の方は概ね元通りになりつつある。栃木工業高校から続く水路近辺を重機が整地しているが、ほとんどの部分は立ち入りは許されるようになった。この永野川緑地公園の河川敷の堤に咲く桜は本当に美しいので、余計な描写はいらないだろう。まずはご覧いただきたい。

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 この日は日の出直前から撮り始めたが、晴れ間が垣間見えたのはほんの少しだった。世間はコロナ禍による外出自粛が騒がれる直前で、桜が見頃なのにもかかわらず見物客はほとんどいなかった。
 わずかに確認された人たちも多くは地元の方で、散歩などの途中に通っただけと思われる。桜を見に来ている人間は僕だけだった。
 個人的な意見を書けば、桜という花はそれを見て喜ぶ人たちの表情とともに撮るのが最も風情があると考えている。しかしながら、今年はそのような風景を撮ることは難しいようだ。代わりと言っては何だが、点景として数枚を撮ったのでそちらも見て欲しい。

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 上人橋付近の決壊地点も、補修用に積まれたフレコンバッグが既に景色の一部となり春のよそおいだ。こうして人為的なものも次第に自然の一部となっていく。
 風景として撮るだけではこういった異物は排除される方向なのだろう。以前は僕もそう考えていた。しかし、そういったものも含めての景色なのかなと最近は考えている。瞬間的な画で言えば、重機であれコーンであれ桜とは似つかわしくないのであるが、美しい桜だけを撮っているわけではない。美しい桜のある風景を撮っているのだ。そこには時系列的な風景の積み重ねが少しずつ存在しており、主題と副題としてなのか、あるいはその他の手法としてなのかはわからないが、写真として納めることに意義を見出している。

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 もちろん同じ春は二度と来ないし、その時その時を大切にすべきだ。だがそれでも、再生とは等しく訪れるものである。東日本大地震後でも、東日本豪雨後でも、あるいは今回の令和元年災後でも、再び桜は咲くだろう。

 ではまた来年。

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