小飼弾氏の『知性の限界』書評!
小飼弾氏といえば、中学卒業後15歳で大学検定に合格、17歳でカリフォルニア大学バークレー校に入学した天才である。1999年には「株式会社オン・ザ・エッヂ」(その後の「株式会社ライブドア」)の取締役、翌年には最高技術責任者に就任し、「Perl」の「Ver 5.8」など多彩なプログラミング言語の開発に携わった。2004年には書評ブログ「404 Blog Not Found」を開設し、その影響力から「アルファブロガー」としても知られるようになった。
『知性の限界』書評
小飼弾氏の「404 Blog Not Found」に『知性の限界』書評が掲載されたのは、2010年04月23日である。深く感謝を込めて、彼の書評を紹介しよう!
このつぶやきを見てソッコーニュー。
知性の限界 不可測性・不確実性・不可知性 高橋昌一郎
shinapple: @dankogai 高橋昌一郎著『理性の限界』の続編『知性の限界』が発売されてましたよ!今回も白熱のディベートが繰り広げられてまつ
前著「理性の限界」に勝るとも劣らないスゴ本。本書の「おわりに」に私の書評が引用されているのがちょっぴり誇らしく、そしてそれ以上に激しく気恥ずかしい。
まったくすごい人もいるものだ。スノーの「二つの文化」をこれほど上手に架け橋する人を私は知らない。
本書「知性の限界」は、名著「理性の限界」の続編。國學院大學文学部教授(!)という著者の職業を考えれば、むしろ本編はこちらかも知れない。
知性の限界 不可測性・不確実性・不可知性 高橋昌一郎 講談社
目次
序章 シンポジウム「知性の限界」開幕
「理性の限界」懇親会場より
第1章 言語の限界
1 「論理哲学論考」のパラドックス
2 ウィトゲンシュタインの言語ゲーム
3 指示の不可測性
4 言語理解の限界と可能性
第2章 予測の限界
1 帰納法のパラドックス
2 ポパーの開かれた宇宙
3 予測の不確実性
4 予測未来の限界と可能性
第3章 思考の限界
1 人間原理のパラドックス
2 ファイアアーベントの知のアナーキズム
3 究極の不可知性
4 人間志向の限界と可能性
おわりに
参考文献
仮想パネルディスカッション形式は前回と同じだが、仮想人格の「自然さ」が本書ではさらに向上している。それぞれの人格ごとに twitter の ID を取ってディスカッションさせた後、Togetterでまとめたら、とても「自作自演」には見えないだろう。本当に本書は単著なのか?それも一つの不可知だったりして。
というのは冗句だが、本書ではユーモアの質量も向上している。それも各人格が、その人格に応じたユーモアを発露するというのではなくて、対話の中で自然に生じる不整合が結果的に笑いを誘うという、「リアル」な対話では自然でも、仮想的にやるにはかなり高度なものである。本書で一番多い台詞はおそらく
司会者 そのお話は、また別の機会にお願いします。
というものなのだが、このタイミングがまた絶妙で、ディスカッションの臨場感をさらに高めている。これだけ多彩な人物たちを脳内展開するだけですごいのに、「自然」に「オーバーラン」させた上で、それを「モデレート」できるとは。著者は劇団ひとりならぬ学団ひとりなのか!?
404 Blog Not Found:Indivisual we are not - 書評 - 英会話ヒトリゴト学習法
私がどもっている瞬間は、口という「マイクの奪い合い」が起こっている瞬間であり、私の肉声を聞けばそれがどれだけ煩雑かはおわかりいただけるかと思う。
本書の「司会者」が私の脳内にもいればなあ。
404 Blog Not Found:不可能性・不確定性・不完全性 - 書評 - 理性の限界
本書「理性の限界」は、まさにタイトルどおり、理性が理性であるがゆえに生じる限界--実は矛盾を、理性的に留まらず感性的にも、理系にとどまらず文系にも届く言葉でまとめた一冊。
これに対して本書は、知性が知性であるがゆえに生じる限界--実は自家撞着を、知性的に留まらず「野性的」にも、文系に留まらず理系にも届く言葉でまとめた一冊。
全段落の「まとめ」は、決して単なる言葉遊びではない。ファイアアーベントは比喩抜きで野性的だし、そして科学--における限界--が主題であった前著に対し、哲学--における限界--が主題である著書は、前著以上に自然科学における言及が多く、また「文系なんてどうせ Fashonable Nonsense 」という理系のホンネに、理系にわかる例をあげて答えているという点において「文系に留まらず理系にも届く言葉でまとめた」は真実である。
そしてなにより、本書の登場人物たちが、「~者」の区切りからはみ出ている点が、リアルかつビューティフルなのである。例えば「予測の不確実性」で「銀河帝国興亡史」をもちだしたのは、「運動選手」。サイエンスどころかサイエンス・フィクションまでカヴァーしている点も素敵だが、それが「運動選手」の「与えられた役割」から「思わずはみ出た」結果であり、にも関わらず、いやだからこそディカッションの文脈にしっくりととけ込むという「構造の不備による構造の完成」という会話の流れ方もすばらしい。
パラドックス。それが前著と本書に共通する主題なのであるが、両書を読むと、パラドックスこそが「知のよろこび」の源であることが改めてよくわかる。パラドックスがあるからこそ…
404 Blog Not Found:不可能性・不確定性・不完全性 - 書評 - 理性の限界
すぐに読めるのに、何度も読み返したくなる。でも読み返すのがちょっと怖い。
すぐ調べるのに、何度も調べたくなる。でも調べ直すのが「ちょっと」怖い理由なのだから。
Dan the Wildly Cultivated
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