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物流課題の重心をつかむ、パレート図を用いた物流改善


 物流改善を実行していく場合には、改善の目的や優先すべきことを明確にし、実行に関わるメンバーと意識の共有をしながら進めていくことが大切です。本稿では、問題の影響度や改善の優先度を可視化し、メンバーとの意識共有に有効なツールであるパレート図の作成方法と活用例について述べたいと思います。

パレート図とは

 パレート図とは、問題の発生件数や数量などを項目ごとに棒グラフで降順に表示し、その累積構成比を折れ線グラフで表した複合グラフのことで、問題などの影響度(比重)の高い項目を視覚的に分かりやすくするためのツールです。また、QC7つ道具という品質改善活動のためのデータ分析ツールの一つでもあります。

 下記は、EC物流現場の返品の理由と件数をまとめた例です。このように、各項目の件数をパレート図で表すことで、どのような事象が全体に対してどれくらい影響しているのかが視覚的に判断できます。


 この事例の場合、注文間違い・写真とイメージが違う・商品の説明と仕様が違うという3つの返品理由が全体の約80%を占めていることから、優先的に取り組むべき改善施策や改善の方向性はWEBサイトの写真の撮り方や、商品の説明文の見直しなどが考えられます。発生する問題を手あたり次第改善しようとすると膨大な時間と労力を費やしてしまいますが、問題の影響度を可視化し、影響度の大きい項目から重点的に改善していくことで、効率的に全体の改善に繋げることができます。

マイクロソフト社のExcelのパレート図の作成方法

 パレート図の作成方法はいくつかあります。一つは、問題の発生件数などのデータを集計し、集計したデータを降順に並べ替え、各項目の累計構成比を算出し、棒グラフと折れ線の複合グラフを使って作成するやり方です。このやり方の場合、凡例やラベルの追加など細かなカスタマイズが可能であるため、視覚的に見やすいパレート図の作成が可能です。

 もう一つ、お手軽な作成方法として、Excelの「挿入タブ」から「グラフメニュー」を選択し、「ヒストグラム」の中の「パレート図」というコマンドを実行して作成する方法もあります。このやり方の場合、データ内の重複している項目を集計しなくても、同一項目はExcelが自動で合算してくれますし、降順の並び替えや累計構成比の算出も必要もなく、データを選択してコマンドを実行するだけで簡単にパレート図の作成が可能です。

※Excelのバージョン2016以降の機能

 

 倉庫現場でのパレート図の活用例

 倉庫現場で改善施策を検討する際、倉庫現場の作業内容(作業の動作)ごとの所要時間をパレート図で可視化してみると新しい気づきがあるかも知れません。古典的な手法による計測値ではありますが、下記は各作業工程の動作をストップウォッチなどでワークサンプリングとして1時間ずつ計測し、一か月の総作業時間実績から、一か月の作業の動作ごとの所要時間を推定したデータです。

 そして、各工程の動作の推定所要時間をパレート図にするとこのようになります。

 この事例の場合、ピッキングの歩行時間に最も時間を要しており、全作業の約30%の工数を占めていることから、重点的に改善すべきポイントであることがわかります。仮に、保管ロケーションの最適化などによって歩行時間を1割削減できれば、全体の約3%(30%の1割)の作業時間が削減されるということになります。

 また、このような分析は、新たなマテハンへの投資などを検討する際にも、どの工程のどのような作業時間(動作時間)を短縮すれば、どれくらいの効果が出せるのか、マテハンの選定や投資の有効性の判断にも有効な手法です。

その他の活用例


 その他にも、品目別の出荷数や出荷頻度分析による最適な保管レイアウトの設計、作業ミスの内容と発生件数分析による作業品質の改善、品種別の在庫量分析や品種別の欠品発生件数分析による在庫の適正化、仕入先別の納期遅延件数分析による納期遵守率の改善など、パレート図は様々な場面での活用が可能です。

パレート図を使って効果的な改善活動を推進


 本稿ではパレート図の作成方法と活用例をご紹介しました。改善活動は、さまざまな人と協力して進めていく必要があります。なぜその改善が必要なのか、何を優先して取り組むべきなのかということを可視化し、参加メンバーとの意識を共有して進めることができれば、メンバーの一体感も高まり、円滑で効果的な改善活動が推進できると思います。物流現場の改善の際には、パレート図の活用を試してみてはいかがでしょうか。

(文責:加藤 正文)

 
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