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幼少期の振り返りにより自身の感情発生源を理解する


ここ数年来、noteで記事を書いていなかったのですが、とある本と出会い、そして自分の内面に大きな変化がありそうだ、そしてこの変化のきっかけを言語化しておこうと思い久しぶりにnoteを書くことにしました。

そのきっかけとなった本は「本当の自分がわかる心理学~すべての悩みを解決する鍵は自分の中にある」です。


自分の弱さを認めたい、という思いからこの本に出会う

実は再び転職をしようか、と半年ほどかけて悩んでいたのですが色々と考えた挙げ句、「様々な出来事の自分自身の捉え方が変わらない限り、どこにいっても転職したくなるだろう」との結論に至り現職を続けることを決意しました。僕の場合、転職を考える理由はあれやこれやともっともらしい理由はつけるものの、「人間関係」に対する不満が大きく、転職を検討するきっかけは今回もそうでした。そのような状況だったため、前述のような結論を出し現職に留まることにしたのです。

一方で、自分自身の捉え方を変えるというのはどうしたものか、と思い定期的にコーチングを受けることを決意しました。そのコーチングを受けた中で僕自身は「自分の弱さを周囲にオープンにすることが苦手だ」ということに気がつきその解決策を探していた、というのがこの本に出会ったいきさつです。

「弱さ 認める 書籍」、といった検索ワードで本を探すと、自己肯定感を高める系の書籍がたくさんヒットします。もちろん、自己肯定感を高めることは大切だと思うのですが、今回はどちらかというと自分自身の根底にある「なぜそのような感情が起きるのか」に着目するためにインナーチャイルドと向き合うことが必要そうだ、となんとなく感じレビューなどをみてこの書籍を選びました。

インナーチャイルドと向き合うことが自己防衛で発生する感情を理解する鍵

この本の主軸として書かれているのは人の感情は発生した出来事に対して信念というフィルターを通してみることで得られるものだ、という考え方です。この考え方は、認知行動療法のABC理論(Activating Event(出来事)、Belief(信念)、Consequence(結論))という考え方で感情に関する書籍で良く目にする内容です。その中でもこの本の特徴は「ネガティブな感情を湧き起こす信念」と「ポジティブな感情を湧き起こす信念」をそれぞれ分け「影子」と「日向子」という呼び方を付けて様々なワークを通じて自分自身の影子と日向子がどのような信念を整理していく点です。この影子と日向子というのは、言い換えるとネガティブな感情を湧き起こすインナーチャイルドと、ポジティブな感情を湧き起こすインナーチャイルド、ということです。

インナーチャイルドという言葉、文字だけみると内なる子供、ということで自分の中の子供っぽい部分?と予測されますがそうではありません。幼少期(本書では人格形成がされる6歳頃までと記載がありますがここは諸説ありそうです)に形成される感情を引き起こすトリガーやものの見方を作るフィルター、つまり先のABC理論で言うところの「信念」にあたる部分がインナーチャイルドです。

そして本書はこの影子と日向子を整理する流れが本当に良く出来ていて、まずは「小さな頃に親からどのようなことを言われたのか」「そのときにどんな感情だったのか」「両親の関係性はどうだったのか」「そこから考える自分の信念が何なのか」ということを洗い出します。その上で、それぞれの信念がどのような感情や行動を引き起こすのかをいくつかの信念に場合分けをしながら説明されていきます。

漠然と自分の信念(固定概念、とした方がわかりやすいかもしれません)がなんなのかということを問われると、中々答えにくいものです。ただ、上述の思考の流れや、いくつかの信念の例を元に自分の幼少期を振り返ってみると「あぁ、こんな信念があったのか」と気付きます。

また、ポジティブな感情の信念である日向子とネガティブな感情の信念である影子の両方を本書では説明していますが、特に優先的に考えた方がよいのは影子です。人はどうしても生存本能として自分にリスクのあるネガティブな状況に対して過剰に反応するようにプログラムされており、ネガティブな信念を癒さない限り、表面上でポジティブにはなれるかもしれませんが根幹が変わらないため取り繕った対応になってしまいがちとなります。
少し話がズレますが、以下のリンク先で紹介しているファストアンドスローの話も若干繋がっています。ファストアンドスローで書いてある感情的なシステム1の一部は、人類に共通する生物的な反応に加えて、このインナーチャイルドによる反応も含まれています。それくらい、人の無条件の判断にインナーチャイルドは影響を与えているのです。


「自分はここにいてはいけない」という信念(固定概念)への気づき

前置きが長くなってしまいましたが、本書を読んで僕自身が気がついたこと、それが「自分はここにいてはいけない」という信念があるということです。

先程のワークの中で取り上げた両親からどんな言葉をかけられていたのか、という点を振り返ってみると「お前は橋の下から拾ってきた」「(言われたことをできないやつは)家を出ていけ」「早くしろ」等の言葉が出てきました。

僕の親は未成年で僕を産んだという引け目があり、周りから「子供が子供を産んだ」と言われないようにするためにも厳しく育てられたのだと思います。そのことについて、僕はこれまで「厳しく育ててくれたおかげで今ある程度ちゃんとしていられる」とポジティブに解釈をしてきていました。ただ、実はこの解釈は自分の親を正当化しているだけで自分自身の内面には向き合っていなかったのです。

これらのことを振り返ったときにいくつかネガティブな信念があるものの、その中でも「自分はここ(家)にいてはいけない子なんだ」という信念が一番強いことに気がついたのです。

これまでも自分自身に自信がなく、自分は取るに足らない人間だ、自分程度の人間はどこにでもいる、という思いと共に、その裏返しで勝負に勝ちたい、優秀でありたいという思いもありました。これらを踏まえてこれまで僕は、「自分は自己肯定感が低い人間なんだな」と漠然と思っていました。

しかし、実はこの自己肯定感の低さは「自分はここにいてはいけない」という思いから発生していたということに気がついたのです。
例えば、以下の様な思い込みです。

  • (自分はここにいてはいけないから)自分に自信がない

  • (自分はここにいてはいけないから)自分は取るに足らないと思う

  • (自分はここにいてはいけないから)自己主張はしない方が良い

また、こういったネガティブな信念には、その信念を隠すための防衛戦略を行動として引き起こさせます。それが完璧主義や権威主義、人に弱みを見せられない、といった行動や思想に繋がり、それが邪魔されたり脅かされるときは怒りや人によっては悲しみを引き起こすのです。

「怒り」の感情がなぜ発生しているかがわかるように

この「自分はここにいてはいけない」という信念とその信念が引き起こす防衛戦略に気がついてから改めて自分の感情の動きに向き合ってみると、大半が「自分がここにいてはいけないという信念を脅かさないように怒っている」ということがわかってきました。例えば、以下の様なケースです。

  • 仕事上で相手から否定されると(自分の存在価値がないと思われないように自分の正当性を示すために)怒る

  • (自分の仕事を誰かにお願いすると自分の存在価値が減ってしまうためそうならないように)他者に仕事をお願いできない

  • (弱い自分には価値がないと思われないようにするために)完璧でないといけないと思うしそれが崩れると怒る

もちろん、怒るといっても実際に癇癪を起こして大声をだしたりしているわけではなく、不機嫌になったり苛立ったりする程度が大半です。ただ、大なり小なり怒りといった感情はやはり物事の捉え方を濁らせ、そして判断を鈍らせます。
一方、この信念に気がついてからは、何か怒りの感情が湧いた時に「今、自分の価値を脅かされてるから怒っているんだな」とか「この信念(僕の場合だとちゃんとしないといけない、というのも信念なのでこいつがひょこひょこ顔を出します)が今の感情を湧き起こしているんだな」といった具合に自己整理ができるようになります。
どちらかというとこれまで僕は、何か感情が発生した時は論理的な正しさや客観性に基づいて説明しようとして、だからこそ「最もらしさ」や「正しさ」という点が僕の中では非常に大きな判断材料となっていました。でも、これは本来の感情の発生トリガーにはアプローチせずに表面的な理解をしていたためいつまでたっても同じような感情がグルグルと渦巻いていました。それがこの信念に気がついてからは怒りの感情に対して上手く対処ができるようになっているように感じています。

ネガティブな信念への気付きははじめの一歩

ネガティブな信念はただその信念に気がつくだけでも十分価値がある内容なのですが、ネガティブな信念を持つ影子を癒すことで、ポジティブな信念である日向子が人生の前面にでてきやすくなるそうです。そしてこの書籍にはネガティブな信念に対する向き合い方や癒し方も記載されています。

インナーチャイルドワークといった形でカウンセリングでも使われる手法らしいのですが、以下の様なステップで進めます。

  1. 当時のネガティブな信念の現況となった幼少期の環境(僕の場合は、家から出ていけと言われた環境でした)を思い出し、当時の自分になりきる

  2. その時の感情をできるだけリアルに思い出す

  3. 今の自分が当時の自分に声をかけ寄り添う

  4. また会いに来ることを約束する

当時の自分に声をかけるときは、今の自分からみて親の言っていることの間違っているポイントや、言われたことをそこまで気にしなくてもよい理由をわかりやすく説明することが大切です。その際に意識しなければいけないのが当たり前かもしれませんが大前提として「子供は1人では生きていけないため、親は子供の生活を保護する義務がある」ということです。
子供のときは自分の命を守るために親の言うことに従う必要があり、その言われたことが無意識のうちに刷り込まれているし、親のことを否定することは難しいものです。(僕もなかなか腹落ちできていません)でも、大人になって自分の足で生活ができている今、過去の親からの言葉をいつまでもトラウマとして抱えている必要はどこにもありません。だから僕は当時の自分にこのように声をかけました。「たしかに、あなたは○○というところはよくなかったかもしれない。でもね、だからといってあなたを叩く必要はどこにもないし、ましてや家を出ていけなんていうのは親として責任がなさすぎるよ。だからあなたも気をつけないといけないところはあるかもしれないけど、あなたにはちゃんとここに居場所があるんだよ」と。

もちろん、このようなワークを1回やったからといって全てが劇的に変わる訳ではありません。でも、自分の中のネガティブな信念である影子に気をかけ、寄り添うことで少しずつ防衛戦略が緩まり、安心できるようになっていくそうです。
防衛戦略の緩まりにより、逆に自分の中の楽しみを表現する日向子が前面にでやすくなりきて、ポジティブな感情が得られやすくなります。
また、防衛戦略が緩まることで人に弱みを見せやすくなり、相手を理解する際にネガティブな感情のフィルターを外すことができます。これにより、人とのコミュニケーションを円滑に、より充実したものとすることができます。

終わりに

これまでもストレングスファインダーやMBTIなどの診断を受け、自分とはなんなのか、どういった価値観があるのかといったことを色々と考えてきました。ただ、これらの診断は今の現状を点で捉えた結果であってその根本となっている部分の気付きにはなかなかならないと感じていました。
それに対し、幼少期の振り返りによる自己分析は自分の根源を遡りアプローチをしていくことが可能となります。そのため、真剣に取り組めばその分だけ非常に価値の高いものとなりそうだな、と感じています。(例えば、僕の場合はストレングスファインダーで最上位志向が最も強い資質なのですが、これは僕の影子の防衛戦略から生まれているものなのであり、自分自身が好きでやっているわけではないのだ、というのことに気が付きました)
もちろん、これらの診断に意味がないとは言いませんが、インナーチャイルドやその防衛戦略の理解と合わせらことでより自分自身の理解につながり、そして自分自身が生きやすい環境を作る一助になってくれるのだと思います。

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