ドレフュスは受勲されるだろう
モーリス・バレス(ラ・コカード紙、1894年12月1日号)
いまだに、ドレフュスが受けた仕打ちに関して、会話の中で時々疑問を挟んでくるようなお人好し連中がいる。
しかし、何を疑うことがあるのだろうか。彼は受勲されるのである。
政府に関して多少の知識のある人なら、昨今のいくつかの重大「事件」には陸軍大臣の収入が関与していたことをよく知っている。これは、不正取引の温床なのである。ドレフュスが漏らした国防の秘密というもその取引の一部なのである。
パナマ事件で我々が知ったものは、議会の卑劣行動の氷山の一角でしかない。レイナックが自殺したとしても、コーネリウス・ヘッスが彼を何百万もの金を恐喝していたとしても、それが単なるペテンのためではないということを、我々は見抜いている。ブルボン宮は、我々の思う通り、泥棒だけでなく、売国奴によって埋め尽くされているのである。
我々は泥棒されたのみならず、裏切られたのだ。有罪判決を許さない政治家の一味とドレフュスは結託している。
政府は裁判所が大きく門を開けて待っている手前を逃れ続けて現在に至るが、私たちが「泥棒打倒!」と叫ぶのを「売国奴打倒!」に変えれば、その危機はもっと大きくなるはずだ。
ブルドー、ジュール・ロッシュ、テヴェネ、ルーヴィエ、その他多くの凶悪強盗どもは、単なる放蕩者や軽い泥棒ということで許されているが、もし、私の望むように、ドレフュスが幅を利かせているような労働組合連中に理性が芽生えれば、彼らを首吊りにすることができるだろう。
現代社会は、最も悍ましい惨劇に終わるだろう。メディアの大物や怪しげな銀行家、議会の悪党どもが酷い侮辱を受けたのちに喉を切って殺される日は近い。その侮辱というのも、彼らの隠された事実を伝記にして大衆の前で読み上げるだけで十分だろう。
もちろん、その必要があるならば、私も喜んでその犠牲者の中に入ろう(このようなものに犠牲はつきものである)。彼らの臨終という愚劣な祭りを楽しめるのならば。
Maurice Barrès, « Dreyfus sera décoré » , La Cocade, 1er décembre 1894
https://www.retronews.fr/journal/la-cocarde/01-decembre-1894/681/1938679/1
註
・パナマ事件:ブーランジェ事件以降、急進共和化した内閣を襲ったスキャンダル事件。パナマ運河建設会社から、政府首脳が多額の賄賂を受け取っていた。
・レイナック(ジャック・ド):1840 - 1892、ユダヤ系ドイツ人の家系に生まれた銀行家。パナマ事件発覚以降、バレスの格好の攻撃相手となった。
・コーネリウス・ヘッス:1845 - 1898、レイナックと同じユダヤ系ドイツ人、運河事業に関わるレイナックをクレマンソー等政治家につなげた人物と思われる。
・ブルドー(オーギュスト):1851 - 1894、バレスがナンシー高校時代に影響を受けた哲学教師で、『デラシネ』のポール・ブッテイエのモデルとなった人物。1885年以降政治家。92 - 93 海軍大臣。93 -94 大蔵大臣。
・ジュール・ロッシュ:1841 - 1923、政治家。長く急進派で世俗化にも肯定的だったが、後に右傾し1905年の政教分離法には反対した。90 - 92 経済産業大臣。
・テヴェネ(フランソワ・マリー、マリウス):1845 - 1910、85 - 92年、急進共和派の議員。89 - 90 法務大臣。
・ルーヴィエ(モーリス):1842 - 1911、71 - 11議員。87, 05 - 06 首相。89 - 90 大蔵大臣。