『あいミス』とファンタジー文学とのつながり②
こんにちは、泉のエクセリオンです。前回の『あいミス』とファンタジー文学とのつながり①の続きを書いてみようと思います。
1 星を愛するエルフィンたち
『あいミス』に登場するアイリスたちの聖装の中には「星」をモチーフにしたと思われるものが、数えるほどですが、あります。
特に顕著であるのが、エルフィンであるアイリスのティセの聖装でSSR聖装「永遠を結ぶ星詠人」とSSR聖装「愛しむ夢幻の可惜夜」の二つです。
又、このティセはプロフィールにも書いてありますが、「典型的な誇り高きエルフィン」とあります。ティセの他にアイリスであるエルフィンは三人いるのですが、アナスチガル、ソフィ、セシルにも少々典型的なエルフィン像がありますが、ティセに最もその多くの要素があると考えます。(ここで言う典型的とは古典ファンタジー文学に見られるエルフの姿と解釈します)
話が逸れますが、アナスチガルは結界を張っているというエルフィンの女王という点、これは『指輪物語』に登場する作中最古のハイエルフ、ガラドリエルの奥方に、ソフィは秘跡聖装に鷲のような生き物を連れていることから、典型的なエルフの要素がある、と見ることも出来ると考えます。
話を戻して、典型的なエルフィンであるティセが上記のような「星」をモチーフにした聖装があるのは偶然ではないと解釈出来ます。星とエルフとは実は切っても切れない関係があったりします。それはエルフが生まれた時と関係しています。
2 異世界ファンタジーの起源?
この話をする前に、エルフが『あいミス』の中に見られるような姿に、つまり、金髪で、不老不死で、人間に近い容姿をしていて、耳がとんがっていて、白鹿のいる森に住んでいて、結界を張って・・という像を創ったのは20世紀のイギリス人作家J・R・R・トールキンではないかと言われています。理由としてはこの作家こそ、世界で初めて最初から最後まで、異世界が舞台の物語を書いた作家という説があります(諸説あり)。
又、何故トールキンの作品を持ち出すのか、と問われれば、その理由としてこういった異世界ファンタジーの作品としては最も古い文学作品であると考えるからです。中つ国の物語をトールキンが書き始めたのは1916年から1917年とされ、最初に出版された『ホビット』は1937年です。
そしてトールキンが創造した世界が、RPGゲームに与えた影響も計り知れないとされています。『あいミス』にも少なからず散見されることを考えればどれほどの影響力かが想像出来ます。
3 エルフたちの目覚め
話を星とエルフに戻します。トールキンの『シルマリルの物語』の中にはエルフの起源が描かれています。以下上述の本から引用します。
まずは原文から引用します。
・・By the sterlit mere of Cuiviénen, Water of Awakening, they rose from the sleep of Ilúvatar; and while they dwelt yet silent by Cuiviénen their eyes beheld first of all things the stars of heaven. Therefore they have have ever loved the starlight, and have revered Varda Elrentári adove all the Valar.
J・R・R・TOLKIN『THE SILMARILLION』
Chapter3 OF THE COMING OF THE ELVES AND CAPTIVITY OF MERKOR
p38
「・・星明りに照らされたクイヴィエーネン湖、即ち〈目覚めの湖〉のほとりで、かれらはイル―ヴァタールの眠りから起き上がった。そして、まだものも言わずにクイヴィエーネン湖のほとりに留まっている間、彼らの目が最初に見たものは天空の星々であった。それ故、彼らは今に至るまで常に星明りを愛し、すべてのヴァラたちの中で誰よりもヴァルダ・エレンターリを崇めるのである・・」(田中明子 訳『新版 シルマリルの物語』99頁 第三章 エルフたちの到来と虜囚になったメルコールのこと)
又、固有名詞が多すぎたので省きましたが、エルフが誕生する前に魂の管理者であるヴァラはエルフは「暗闇の中で生まれ、星を仰ぎ見る宿命にある」とし、同じくヴァラのヴァルダは天空に星を散りばめ、エルフの目覚めに備えます。
イル―ヴァタールとは唯一神で『あいミス』でいうところの原初の神、ヴァルダは世界を創りし緒力で『あいミス』でいうところの、天上人である冥王、フリッカ、ゼロノス等が該当するでしょう。
まとめ
このように物語があることから、エルフにとって星は親のようなものであり、神のようなものであり、深い関係があることが分かります。『あいミス』において、典型的なエルフィンであるティセに、星をモチーフにした聖装がある理由はこれではないかなと考えています。又、ティセ以外にもソフィが聖装ストーリーで「スターエルフィンでございます!」と苦し紛れに言っていたり、夏にゲーム内で開催されていた「アイリス・フェス」においてセシルのSSR聖装に星のモチーフがあったりとティセ以外のエルフィンにも星との関わりが見られるのは、面白いなと思っています。
参考文献
J・R・R・TOLKIN『THE SILMARILLION ILLUSTRAED BY THE AUTHOR』2022
トールキン 田中明子 訳『新版 シルマリルの物語』 評論社 2003年
トールキン 山本史郎 訳『新版 ホビット 下』原書房 2014年
トールキン 瀬田貞二 訳『指輪物語4』評論社 2003年
成瀬俊一 編著「シリーズ もっと知りたい名作の世界⑨指輪物語」
ミネルヴァ書房 2007年