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ルビンさんの壺

ルビンさんはイタズラ好きです

やぁ ご機嫌よう
ここだけの話だがね と
ニンマリ 耳打ちをしてきます

ふたりは相変わらず
見つめ合ったまま

本当はね
もうひとり いるのだよ
誰にも話しちゃいないがね

もうひとり?
そうだとも 探してごらんなさい

ハハァ なるほどね
壺をどけてみよう
ヨッ ずっしりとくる重さだ 
腰を入れて ゴロンと転がしてみた けど誰もいない
ふたりは チラッとボクを見て薄笑いを浮かべている
どうせ見つからないよ
かくれんぼじゃないの そんなところにはいないわよ

ハハァ なるほどね
そういうことか
壺の中を覗いてみる
でも 暗闇が広がるばかりで何も見えない
そういうことか しかたないな
縁をしっかり掴んで エイヤッと胸元まで潜り込んでみる
でも 何も見えない 上も下もなく 右も左もない
眉間に力を込めて 目を凝らしてみる
やっぱり 誰もいないようだ

チェッ
ルビンさん ウソじゃないでしょうね
ホントにもうひとりいるんでしょうね と思ったら
あ 目が合った
パッチリとした目がふたつ 壺の底からボクを見上げている
きっと 子ネコみたいな女の子に違いない
なぁーんだ そんなとこにいたのか

ヤァ 
初めまして こんにちは
それにしても どうして そんなところにいるんだい
と思った その途端

あれ 身動きが取れない
手足が まったく動かせない
ここはどこなんだ
どういうことだ
まさか まさか そんなこと ないよな
ホントかよ マジかよ

ねぇ キミ お願いがあるんだ
ボクを 引っ張り出してくれないかな
ヘラヘラ笑ってないで 助けておくれよ
オイオイ 元気でね じゃねぇだろ
あ ウィンクなんかしやがった
テッメェ こっから出せっていってんだよ
コラ なにしてんだよ
バカ やめろ フタなんかするん……

反転するの 知らなかったのかしら
とぎれとぎれに さんにん分のクスクス笑いが聞こえてくる

ねぇ ルビンさん 少々イタズラが過ぎませんか




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