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子どもの付き添い入院


子どもと感染症

2021年の夏のことです。新型コロナウィルス感染症の流行の陰で、RSウィルスという感染症も大流行しているというニュースを見ました。RSウィルス感染症には、苦い思い出があります。そんな今回のテーマは、感染症で入院した子どもの付き添いについて取り上げようと思います。

小さな子どもの入院に保護者が付き添うことはよくあることです。病院から付き添いを求められることもありますし、乳児の場合は母乳を与えるためや精神的な安定のために、とりわけ母親が付き添い入院をしています。
この付き添い入院は、多くのケースで深刻な問題を引き起こしているといいます。
少し検索するだけでも、付き添い入院の過酷さに触れられます。
どのように過酷か検索してみた例を挙げます。「寝食は子どもと同じベッドで。」「24時間、子どもから離れられない。」「子どもと同じベッドでは休まらない、食事も出ないのでコンビニなどで自力調達をするしかない。」ましてコロナ禍では、付き添いの交代も叶わず「缶詰め状態」。

もちろん、入院期間の長短で、保護者の疲弊度や課題感は少し変わってくるかとは思います。

RSウィルスって


RSウィルスとは呼吸器の感染症。国立感染症研究所によると飛沫や接触によって感染し、1歳までに50%以上、2歳までにほぼ全員が感染すると言われています。
大人や健康な子どもは、発熱や鼻水、せきなどの風邪症状で済むようです。ただ、初めてかかった乳幼児は症状が重くなりやすく、肺炎や気管支炎で入院が必要になることも。ほぼ全員が感染するこのウィルスは、いわゆる風邪の一つと侮るなかれ。
月齢の小さい乳幼児にとっては、注意が必要な感染症です。

そのRSウィルス感染症が、2021年は大流行していました。
これは新型コロナウィルス感染症の流行とも関係しています。
新型コロナウィルス感染症が発見され、感染の第一波から第三波がきた2020年。
この年にはRSウィルス感染症の報告は例年になく少なかったそうです。マスクや手洗い、アルコール消毒などコロナ対策で行った数々の取り組みが、その他の感染症の予防にも役立ったということは記憶に新しいことと思います。
 こうした経過から、免疫を獲得しなかった子ども達が増えてきたのですが、そのことでいったん持ち込まれたウィルスがまたたく間に大流行を起こしたのではないかと言われています。

 重症化リスクの高い生後6ヶ月未満の乳児や、息が苦しくて眠れないなど重症の場合は入院になることが多いのも特徴的です。

 

小児病棟、親も疲弊



わたしは、子どもがRSウィルスに感染するまで、RSウィルスという感染症という存在を知りませんでした。
存在を知ることになったのは、長男が生後2ヶ月のときにRSウィルス感染症にかかったからです。
月齢が小さかったため、すぐに入院となりました。
入院して2,3日は熱もなくパルスオキシメータで測った酸素飽和度も悪くはなかったため退院となりました。
しかしながら、退院したその日の夜に呼吸がしんどくなり眠ることができず、再度受診、再入院となりました。


前日まで寝ていた同じベッドに通されたときは、「出戻り」ってなんて辛いのだろうと悲しくなってしまいました。結局、合計で一週間ほど入院し、その間は母親であるわたしが付き添いをしました。

付き添い入院で最もしんどかったことは、わたし自身が眠れない、食事は病院地下のコンビニしかないことでした。

そんな状態で、RSウィルス感染症にかかった子どもたちばかりの大部屋にいたこともあり、抵抗力の落ちたわたし自身も感染してしまい余計にしんどい思いをすることとなりました。

わたしの他にも2人の母親が付き添い入院をされていましたが、そのうちの1人はあまりの過酷さ故になのか、個室に移動されていきました。
夜中に、その方がすすり泣いている声が聞こえてきて、追い詰められている様子が伺えましたが、まさに当事者であるわたしは何もできませんでした。

子どもの病状は当然心配でしたが、自宅で一人看病をしていることを思うと、病院にいる安心感はありました。

付き添い入院中は、「お母さん、お薬飲ませておいて」「熱を測ってください」など看護師さんからの指示に従って、子どものケアをしていました。

看護師さんは機械を使って鼻水を吸ってくれることと、何度も見回りに来てくれました。深夜も一定時間ごとに見回りがあります。

看護師さんの持っている懐中電灯の明かりで照らされそのたびにわたしが起きてしまい、そのことでも休まらない思いをしました。
小児病棟なのですから、保護者のケアをするところではないのだからと自分に言い聞かせていましたが、深夜の見回りの懐中電灯の光はわたしにとって苦痛でした。

2日間ほどほぼ寝ない状態で、病棟に「軟禁」状態になると、頭がぼーっとしてきます。感情の麻痺が起こり、ポジティブなことは考えられなくなってきました。
入院初日は悲しくて心配で涙が出てきましたが、その後はぼーっとした頭で涙も出てきませんでした。

当時は、授乳は絶対にしなければならないものだと思いこんでおり、粉ミルクをあげてもらい自分は自宅に帰って休むという発想すら起こりませんでした。
今なら付き添い入院をしたとしても、しんどくなったら粉ミルクを与えてもらい自分は自宅に戻るという選択をすると思います。

そのくらいわたしにとっては過酷な付き添い入院の体験でした。

また、このウィルスの影響で、その後息子が喘息を引き起こすようになってしまったことで、この入院のしんどい経験と相まって一層ネガティブな感情をもつことになってしまいました。


最後に

子どもと感染症について、集団保育では感染症はつきものです。
また子どもの場合、免疫を獲得しておくことが後の生活にとって必要なことでもあります。
感染症にかかったとしても重症になった場合、入院すると子どもの医療的ケアはしてもらえます。
しかし、付き添う保護者へのケアは十分ではありません。
自宅で看病するのも疲れるのですが、自宅ではなく病院という場所で付き添い入院をすると睡眠や食事の問題、気軽に代わってもらえない重責感など、様々な問題に直面します。

小児病棟は保護者へのケアをするところではないから、付き添う保護者がしんどくなっても感染症にかかっても診てはもらえません。

心配だから、母乳を飲ませたいから、子どもが不安定になるから、付き添いたいという保護者もいることでしょう。
一方で、保護者の負担は計り知れないと思います。

一週間でも自身が体験することで、小児病棟にはそんな世界があることを知りました。

ホテル並みのサービスをしてもらいたいのではなくて、保護者も元気に健康で付き添える、そんな入院のあり方を考えていきたいと思うのでした。

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