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P71の法則
有名な「星の王子さま」(サン・テグジュペリ)という物語がある。
かつて、この物語を読んだ時、最初の10ページで挫折したのである。(何が面白いのかわからなかった…)
そのうち、この本はどこかへ行ってしまい、見えなくなった。(捨てた記憶はないが、行方不明になった)
その後すっかりこの本のことは忘れていたのだが、挫折したときの忌々しい気持ちだけは、心のどこかに持ち続けていたのは確かで、その後1度、中古本を買って再チャレンジしたことがある。
そして、案の定、再び挫折した。
2回目はもうちょっと読み進めたのだが、相変わらず、その面白さが分からず、何とも単調な展開に心が折れてしまったというわけである。
そして、お決まりのように、中古本はどこかへと姿を消した。
3度目の出会いは、唐突だった。書店をいつものように徘徊していると文庫本の中に、みたことのない装丁の「星の王子さま」があった。
物語の内容は度外視して、手に取ってみると、これが素晴らしい装丁なのである。表紙はエンボス加工が施され、金色の箔まで施されているのだ。
それに価格が480円(税別)ときたものだから、もはや買わない手はない。全く読む気はしないのだが、かわいくて素晴らしい装丁の「星の王子さま」は所有することに意味があるのだ。
そしてしばらくは、本棚の肥やしとなっていたこの物語だったのだが、先日意を決して再読にチャレンジしたのである。
これまた案の定、淡々とした話が続いていく。何が面白いのか分からないというより、この文体に自分自身が馴染んでいない気がしてきた。でも、今回は最後まで読む気満々ではあった。
もう挫折は嫌だ。
期待せず淡々と読んでいるうち、とあるページに差し掛かったところで雰囲気が変わった。
ふと気づけば、これまでの雑念が消え去り、物語の世界に入っている。
慌てて、ページを確認する。
P71
まさに物語のちょうど半分に差し掛かった頃、ついに「星の王子さま」を読めるようになったのである。
このときのことを子ども達にも伝えたい。
「P71の法則」▶︎どんなに苦手な本でも、半分は読んでみよう。もしかしたらあたらしい世界が開けるかも知れない。
今も教室には「P71の法則」という言葉が掲げてあるのだ。