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“最後の砦”になる覚悟──トップが立ち、言い続ける本当の価値
1.はじめに──トップが“立ち続ける”ってどういう意味?
リーダーや経営者といった“トップ”の立場にいる人には、大きく分けて2つの役割が求められます。一つは「立ち続けること」、もう一つは「言い続けること」。
• 「立ち続ける」とは、組織やチームの先頭に立ち、最後まで責任を持って姿勢を崩さないこと。
• 「言い続ける」とは、目指すビジョンや価値観、やり方を、組織が嫌になるくらいまで繰り返し発信し続けること。
なんとなく「そんなの当たり前じゃない?」と思われるかもしれません。しかし、実際にやってみるとこれが意外と難しいんです。なぜなら、“トップ”というポジションは、嫌われ役になることが多く、その結果「言っても反発されるだけだし」と挫けてしまいがちだから。
だけど、トップが立ち続けて言い続けないと、組織はあっという間に方向性を見失うこともあります。今回は、このテーマを深掘りしつつ、うるさく言いながらも嫌われ役をやることがどんな成果を生むのか、いくつかの具体例を示してみたいと思います。
2.“トップが立ち続ける”重要性とは
2-1.責任の所在を明確化する
トップが“立ち続ける”というのは、一言で言えば「組織の最後の砦として責任を負う姿勢を崩さない」ということです。
たとえば、企業が新規プロジェクトに挑戦するとき、周囲は「これ本当にうまくいくの?」と不安を抱えますよね。でも、トップが堂々と「最終責任は私が取るから、思い切ってやってみよう」と言える人だと、メンバーは安心して動けるんです。
逆にトップがコロコロ意見を変えたり、「結果が出なければお前らのせいだ」とばかりに責任を部下に押し付ける姿勢だと、組織全体が萎縮してしまいますよね。だからこそ、トップが“立ち続ける”ことは、チームに安心感と方向性を与える点で非常に大事なんです。
2-2.組織の帰る場所になる
もう一つ、“立ち続ける”ことには「組織が迷ったときに立ち返る場所を作る」という意味合いがあります。
たとえば社員やメンバーが「この方針でいいのか不安だ……」と感じたとき、トップがズレた場所にいると「どこに戻ればいいかわからない」状態になってしまう。だけどトップが「ここが我々のビジョンだ」と、ずっと立ち続けてくれていたら、人は「ひとまずあの人のところに戻って話を聞こう」となるわけです。
まるで灯台のように、組織が迷いそうになったときに指針を出してあげられるのが“立ち続けるトップ”の存在なのかなと思います。
3.“言い続ける”ことの威力
3-1.メッセージはすぐには浸透しない
トップが「言い続ける」ことの大切さって、本当にしみじみ感じる瞬間があります。どんなに素晴らしいビジョンや戦略を打ち出しても、1回や2回言っただけでは、人々の心に届くとは限りません。むしろ、人間って聞いたそばから忘れますし、仕事に追われていると「あれ、上司が何言ってたっけ?」となりがちです。
だからこそ、うるさいくらいに繰り返してメッセージを発信する必要があるんです。いっときは「また同じこと言ってるよ」「耳にタコができるわ」と嫌われたりもするでしょう。でも、そこを諦めずに言い続けることで、徐々に「そうか、これは本当に大事なことなんだ」と周囲が認識してくれるようになります。
3-2.嫌われ役が生む成果
トップが「言い続ける」際には、正直嫌われ役になりやすいんですよ。「うるさい」「めんどくさい」と思われるのはほぼ確実です。
しかし、その嫌われ役を買って出るからこそ、組織全体の成果が上がるという側面があります。たとえば、有名なスポーツチームの監督やコーチが「徹底的に基礎を繰り返せ」とうるさく言って、それを乗り越えたチームが全国大会で優勝……みたいな話は珍しくないですよね。
企業経営でも同じで、トップが「私たちの価値観はこう」「これを守らないと顧客満足は得られない」と繰り返し説き続けることで、メンバーは「やるしかないな」と腹をくくるわけです。実際、「お客様に対しては常に挨拶を欠かさない」といった当たり前のことですら、言い続けないと徹底できません。うるさく言う人がいなくなると、組織はすぐに緩み始めてしまうんですね。
4.嫌われ役をやることの具体的な成果
4-1.行動の統一感が生まれる
うるさく言い続けるトップがいると、メンバーは最初こそ「もう勘弁してよ」と思うかもしれませんが、時間が経つうちに「この組織ではこれがスタンダードなんだ」と理解し始めます。結果として、行動の統一感が出てくるのが大きな成果の一つです。
たとえば「納期厳守」「顧客対応での言葉遣い」「報連相(ほうれんそう)の徹底」などのマナー的要素も、しつこく注意されるからこそ、習慣化されるわけです。これが徹底できると、企業としての品質や信用度が自然と上がります。
4-2.組織の結束力が高まる
もう一つの大きなメリットは、組織の結束力が高まること。「あのトップがあそこまで言い続けるってことは、やっぱり本気なんだな」と感じると、メンバー同士で「この会社の理念って大事にしなきゃな」と話がまとまりやすくなります。
逆にトップがフラフラしていたり、言うことが毎回変わっていたりしたら、部下は当然「どっちの方向に進めばいいの?」となってしまいますよね。嫌われることを恐れず、同じメッセージをずっと投げ続けるからこそ、共通の方向性がはっきりして組織全体がまとまるわけです。
5.具体例:厳しさが生んだ成果
5-1.スポーツチームの監督例
先ほど少し触れましたが、スポーツの世界でよくある話として、「普段はめちゃくちゃ厳しく指導する監督がいると、選手たちから“鬼監督”と嫌われがち。でも、結果を出すと、選手は『あの監督のおかげで勝てた』と感謝する」というパターンです。
この監督は、まさに「立ち続ける&言い続ける」を徹底しているわけです。練習で怠けようとする選手を見逃さず、何度も何度も「基礎を怠るな」と注意する。最初は嫌われても、最終的にチーム全体のレベルが上がり、試合で結果を出せる。その後に選手は「あの時の鬼監督の言葉があったからやれたんだ」とわかるんですね。
5-2.カスタマーサービスでの徹底例
企業のカスタマーサービス部門でも、リーダーや上司が「クレーム対応では何があっても誠意ある姿勢を貫きなさい」とうるさく言い続けることがあります。最初はスタッフが「そんなに徹底しなくても、お客様だってわかってくれるでしょ」と不満を言うかもしれませんが、実際にクレームが大きくなる場面で、その“徹底”が役に立つ。
結果的に「本当にこの会社は最後まで真摯に対応してくれた」という評判が広がってリピート客が増えた、なんて例があるんです。ここでも、“うるさく言う嫌われ役”が最終的には企業の価値を高めることにつながっているわけです。
6.トップが立ち続け、言い続けることで組織が向かう先
トップは、どうしても孤独な立場になりがちです。自分が「ここまで言うのは嫌われるかな」と気にしてしまう瞬間もあるでしょう。
でも、トップが「嫌われてもいい」「うるさいと思われてもいい」と腹をくくって、ビジョンや方針を何度も何度も示し続けることには、確かな価値があります。それこそが、組織が進むべき道をはっきりと示す“灯台”となり、人々の行動を統一させ、最後に大きな成果につなげるきっかけになるのです。
そもそも、トップという役割は“最後の責任”を背負うのが仕事。それを放棄してしまうと、「言いにくいから言わないでおこう」となってしまい、組織はどんどん迷走し始めるでしょう。「嫌われ役にならないといけない場面がある」というのは、ある種トップの宿命とも言えます。しかし、そこにこそトップとしての意義があるのではないでしょうか。
結局、トップが立ち続けることで責任の所在が明確になり、言い続けることで理念や価値観が周知徹底される。
その結果、生まれるのは「一体感」「行動の統一」「成果の最大化」。最初は嫌われても、時間が経てばメンバーが「あのうるさかった言葉があったから、今の結果があるんだ」と感謝する可能性すら高いのです。
もしあなたがトップの立場にいるなら、ぜひ「自分は灯台のように立ち続け、同じメッセージを言い続けるんだ」という覚悟を持ってほしい。うるさいと言われても、きっと後で組織が感謝してくれるでしょうし、何より結果が伴ったときの達成感は格別だと思います。
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