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家問題がやってきた

今、我がパートナー・Kの頭の中は、寝ても覚めても家の問題でいっぱいだ。
彼は寝ているあいだに考える人なので、もともと長い睡眠が、さらに長くなっていて、先日は18時間も寝ていたという。
よくもそこまでノンストップで眠れるものだなと感心してしまう。
もはや特異体質といってもいいんじゃなかろうか。

もともとよく気がつく神経の細やかな人だから、心配や考え事が多いのだけれど、今回ばかりは彼の気質のせいばかりとは言えない。
だって「家」問題だから。

彼は昨年大家から連絡を受け、貸している家を売りたいから今年の初夏には出てほしいと言われている。
彼にとって、今年は重要な仕事の年であり、子どもたちの学業のことを考えても、あと2年はこのまま住み続けられるのがベストと考え、家賃を上げての延長希望のほか、購入というオプションも提示したらしい。
大家からのまだ返事は来ておらず、現在は待ちの状態だという。

購入まで視野に入れちゃったら、そりゃ、落ち着かないに決まってる。
交渉が成立せず引っ越しとなった場合でも、物理的なバタバタが生じて忙しくなるのはもちろんのこと、子どもたちの通学路が変わり、習い事や友だちの家に遊びに行く動線が変わり、ロジスティクス(送り迎え)担当の彼としても、生活の時間配分が変わる。
また、彼は自宅がオフィスの頭脳労働者でもあるから、当然、仕事の環境も変わる。
新しい環境に移るとしたら、彼が毎朝リビングの大きな窓から眺めていた庭に匹敵するものはあるだろうか。
たとえあったとしても、いまの家の庭に棲みついている、ほぼ「家リス」と化したあの小さくて機敏な生き物とはお別れだ。
新しい家が集合住宅だったら、きっと上下左右の住人の生活音に彼の敏感な耳は反応して、神経が休まらないかもしれない。
家は、物理的な拠点であるばかりでなく、精神的なパワーチャージスポットでもあるから、ここがどうなるか分からないという状態はストレスフルなで当然。
ここまでは、私も分かる。

加えて彼は「条件次第で購入」という選択肢も検討しているので、ずっと賃貸暮らしの私からすると、そこから先は、未知of未知の世界だ。
変数が多すぎる。
彼の子どもたちは、将来、今住んでいる街どころか、母国に住むかどうかすら分からない。
そんなヨーロッパ生まれ、ヨーロッパ育ちの学力の高い子どもに、どういう形で資産を残すのがベストなのか。
不動産を買って自分の拠点としつつ、巣立っていった子どもたちが時折帰ってくる「実家」としても機能させ、自分が老後日本で暮らすことにしたら処分して、現金として子どもたちに分配するのか。
(子どもが複数人いる場合は、争いの種をあらかじめ残さないようにするのが一番平和だろう。)
あるいは、老後も住みつづけるか、夏のセカンドハウスとして親子で使うか。
不動産を持つなら、いま住んでいるこの場所は最適解といえるのか。
ヨーロッパの他の国の、他の街でもいいのではないか。
とはいえ、子どもが大学や就職で遠くにいくとは限らず、たとえ行ったとしても、いずれ現在住んでいるこの街で良い条件の職を得て再び戻ってくるかもしれない。

などなど、彼は自分の未来というより、不確定要素がより大きい子どもたちの将来を考慮しているから、その思考に要するエネルギーたるや、膨大にちがいない。
つねに4次元思考(=今後どうなりうるか)がデフォルトの彼も、社会問題や仕事上の問題でなく、自分もどっぷり関わっている「家」問題を考えるのは、さぞ大変だろうなと思う。

子どももおらず、さしあたって家を買う予定もない私は、彼に限らず、世の中の人はこういう問題を背負ったり、乗り越えたりしながら生きているんだなあ、と誰もが知っている「家」問題の煩雑さをいまさらのように理解した。

きわめてエゴも少なく欲のない彼は、「そのつど、合理的な選択を積み重ねるしかない。強運なR(←私)の運にあやかりたい」と言っている。
そんな彼に私が言えるのは、「お掃除がおススメだよ」ということだけ。
家を綺麗にして、視界も心もクリアにして、よい運気をつかまえてほしい。

(彼の4次元思考によって、このあと家問題は新たな展開に)


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