株式会社ワントゥーテン長井様に聞くAIエージェント「QURIOS AGENT」【突撃!隣のプロンプト!】
生成AIサービスのプロダクトオーナー、エバンジェリストなどトップランナーの皆さんへのインタビュー特集「突撃!隣のプロンプト!」へようこそ。
今回は「株式会社ワントゥーテン」取締役副社長 最高技術責任者 QURIOS事業部長 長井健一様にお話を伺います。
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近未来を実現するクリエイティブカンパニー「株式会社ワントゥーテン」
——読者の方に向けて、御社と長井様のご紹介をお願いします。
株式会社ワントゥーテンの長井です。私たちは、クリエイティブとテクノロジーの力で、誰もが笑顔になる近未来をいち早く目の前に創りだし、社会課題の本質を浮き彫りにして解決します。
そのために、AIやXRの注力をはじめ、独自のコンテンツ、ソリューション、プラットフォームの提供とカスタマイズで、持続可能な企業や社会の成り立ちに貢献してまいります。
私は副社長兼CTOという立場で、AIを活用した新規事業の立ち上げに注力しています。
19年前に京都の本社に入社し、当時はクリエイティブエンジニアとして、広告をリッチにし、アニメーションや動画を多用したスタイリッシュなプロモーションをWebで展開する業務に携わっていました。
2013年にはソフトバンクと電通の仕事を通じて、Pepperプロジェクトに初期フェーズからに参加し、ロボット制御やAI技術の分野に関わるようになりました。
約5年間、ロボット制御の仕組み作りやAIの部分に携わり、その後、子会社の社長を務め、統合後はワントゥーテンでCTOとして活動しています。
事前の期待通りの汎用性を感じたChatGPT
——ChatGPTのファーストインプレッションを教えてください。
ChatGPTがリリースされてすぐ、ウェイティングリストに登録して、使ってみました。
ファーストインプレッションとしては、事前の期待通りの汎用性を感じました。汎用的な質問にはかなりの精度で答えられる一方、特定の知識が必要な質問についてはハルシネーションが見られることもありました。
それでも自然な日本語での応答は素晴らしく、APIが公開されるのを待ち望んでいました。
私たちも言語モデルのR&Dを行っていました。過去、BERTやTransformerなどのモデルに触れてきましたが、ChatGPTは大きな可能性を秘めていると感じました。
対話型デモのイベント展示などの実証実験から「QURIOS AGENT」が誕生
——QURIOS AGENT誕生までの経緯を教えてください。
ChatGPTがリリースされ、APIが公開されたのは2023年の3月です。当社ではAPIを用いて「QURIOS AGENT」のプロトタイプを迅速に作成し、「まゆまろAI」という対話型のデモを、2023年4月末に京都で開催されたハードウェアやクリエイターが集まるイベント「Maker Faire Kyoto 2023(以降、メーカーフェア)」で展示しました。
「まゆまろ」は京都府のご当地キャラです。「まゆまろAI」はメーカーフェアの展示作品を約120点紹介する役割を担いました。RAGの情報を基に紹介する形です。
この展示を通じて、柔軟な対応が可能であることやハルシネーションの発生率を調査しました。
メーカーフェアの後には、自治体総合フェアという別のイベントに参加し、京都府の観光地のオープンデータを使って、京都全体の観光案内を行いました。
この展示会にて、千葉市のスマートシティ推進の方々から興味を持っていただき、千葉市での実証実験に繋がりました。
OpenAIを搭載した、働く人をアシストする AIエージェント「QURIOS AGENT」
——「QURIOS AGENT」について、詳しく聞かせてください。
QURIOS AGENTは、OpenAIのAPIと連携した、働く人をアシストする AIエージェントです。
お客さま独自のデータでAIをカスタマイズして、人手不足、新人スタッフの教育、多言語対応など様々なビジネス課題に対応します。
OpenAIのAPIを活用し、アフターコロナ&インバウンドバブルのチャンスに、ビジネス拡大をサポートします。
QURIOS AGENTは、スマホやタブレットでかんたんに導入できます。音声やテキストで、OpenAI APIによる自然言語で対話できます。
また、幻覚を抑えた高い情報精度を誇り、日英中をはじめその他多数の言語対応、安全安心の高セキュリティを備えており、ワントゥーテンが10年以上にわたり蓄積してきた独自のAI制御技術を組み込んでいます。
区役所総合窓口の課題解消に向けてカスタマイズしたQURIOS AGENTを千葉市で実証実験
——QURIOS AGENTで実施した、千葉市における実証実験について、詳しく聞かせてください。
「QURIOS AGENT」は、千葉市のスマートシティ推進ビジョンにおける「市役所がスマート」の実現に向けて、生成AIを活用したコミュニケーションサービスの実証実験を行いました。
実証実験は2月の中旬から3月末までの7週間行われました。実施場所は稲毛区役所と美浜区役所で、人口規模はそれぞれ16.0万人と15.5万人です(2024年8月1日現在)。
千葉市では、区役所総合窓口において繁忙期における窓口滞留や多様な手続きによる職員負担が発生しており、これらの課題の解消が求められています。また、千葉市ではコンシェルジュが、申請すべき窓口がどこか案内する役割を担当していますが、言語の壁が問題となることがあります。特に非英語圏からの住民も増えており、中国語やベトナム語などの英語以外の対応が求められていました。
そこで、我々は窓口案内対応用にカスタマイズしたAIタブレットを導入し、コンシェルジュが翻訳機能を使ってサポートできるようにしました。
手続きに関する窓口、書類、手続き情報を提供し、窓口の混雑緩和に寄与。特に多言語対応の評価が高い
——千葉市における実証実験では、どのようなお声がありましたか?
実証実験の期間中は、引っ越しに伴う問い合わせやマイナンバー関連の質問が多く寄せられました。AIタブレットが手続きに関する窓口や、準備すべき書類や手続きの情報を提供し、窓口の混雑緩和に寄与することができました。
特に寄与できたのは多言語の箇所です。コンシェルジュの元に外国語を話す市民が訪れた場合、その言語を話せる数少ない職員がコンシェルジュのところまで出てきて、通訳を行うケースがありました。
QURIOS AGENTはこれに対して、多言語での音声入力で問い合わせができたり、多言語版の操作画面の下に、日本語表示を併記して、コンシェルジュがAIタブレットを用いてサポートできるようにして、この問題の解消に努めました。
実証実験後に実施したアンケートでは、コンシェルジュの皆様から「私でも案内ができた」「操作するだけで市民の求めている情報がわかるので、窓口までスムーズに案内できる」といった評価をいただきました。加えて、外国籍の市民の方からも目的達成ができたと高く評価を得ることができました。
また、市民からの評価の中には「区役所に来る前にWebなどでこのチャットポットを使って情報を知りたかった」という要望も多く頂戴しました。
基本的に、技術はツール。それをどう活用して課題を解決するかが重要
——千葉市の実証実験において、長井様が特に重視されたポイントは何ですか?
生成AIのハルシネーションについて特に注意を払いました。市民に対して誤った情報を提供しないことが重要であり、そのためには信頼性の高いデータを元にAIを訓練させる必要があります。
具体的には、市民便利帳やWebサイトのFAQデータを基に、AIが自動でFAQを生成するシステムを構築しました。この取り組みでは、約550のFAQを1ヶ月で作成し、内容を千葉市に監修していただきました。
また、多言語対応にも力を入れました。FAQを翻訳し、各言語の正確性を確認するために翻訳パートナーと協力しました。これにより、外国人市民へのサービス向上が図られました。今後はさらにAIを活用し、自動化と精度向上を目指していきたいと考えています。
生成AIも含め、基本的には技術はツールであり、重要なのはそれをどう活用して課題を解決するかという点です。信頼性と利便性を確保しながら、お客様の課題解決に役立つものをリリースしていきたいと考えています。
「生成AIをとにかく使ってみる」という方針を意識
——自社サービス以外に、生成AIを業務で活用されていますか?どのように活用されていますか?
業務に限らず「とにかく使ってみる」という方針を意識しています。例えば、普段の生活の中で、犬の散歩をしている時に考え事をすることがありますが、その時に音声でChatGPTに質問を投げかけて返答をもらうことがあります。
これにより、空いた時間にさまざまな質問を試し、後で正確さを確認することができます。
エンジニアリングについては、この10年間はあまり行っていなかったのですが、今回の実証実験では久しぶりに自分でコードを書きました。プロトタイプや内部ツールの開発において、ChatGPTを使ってコードレビューを行いながら進めました。
また、専門家からアドバイスをもらえるGPTsを作って、経営課題に対する解決策を模索したりすることもあります。
生成AIはツールとして、どのように活用して課題を解決するかが重要です。様々な場面で生成AIを利用し、業務の効率化と精度向上を図っています。
生成AIはアプリをダウンロードすれば無料で誰でも利用可能。書店に行けば生成AI関連書籍も多数
——この記事を読んでいる方に生成AIをお勧めしていただけますか?
まずは触ってみることをお勧めします。アプリをダウンロードすれば、無料で利用可能ですので、ぜひ試してみてください。そして、ご自身で評価を行い、どのように役立つかを実感していただければと思います。現在、書店には生成AI関連の書籍が多数並んでおり、これらを参考にしていただくのも良いでしょう。
また、AIに関する講座もあります。私自身も以前、東大の松尾豊先生のAI経営寄附講座を受講しました。そこで得た知識は非常に有益で、会社経営にAIを活用する上での大きな助けとなりました。
人口減少期における労働力不足から高まる機械やAIによる自動化のニーズに応えていく
——QURIOS AGENTならびに御社の将来展望について、聞かせてください。
将来展望については、二つの方向性を考えています。
一つは、現在の日本が直面している人口減少期における労働力不足の問題に対応することです。多くの企業が「人手が足りない」「予算がない」といった課題を抱えている中で、機械やAIによる自動化のニーズが高まっています。
例えば、現在ではデータをAIに学習させ、FAQを事前に準備しておいて、ハルシネーションや誤答を抑止する機能の元で、回答を出力させるというプロセスを採用しました。
千葉市の実証実験では、1ヶ月で550件のFAQを作成し、千葉市さんの確認を経て、多言語対応用に翻訳して、翻訳パートナーにチェックしていただきました。
このプロセスをさらにAIを活用して自動化し、精度を向上させていく予定です。人の手間を減らす、できるだけ自動化できるようプロダクトを成長させていきたいです。
もう一つは、ユーザー体験を向上させることです。現在はソリューションの提供が中心ですが、エンドユーザーの体験が非常に重要だと考えています。
よくお客様と話しているのは、ソリューションだけではどの企業も同じようなことをしてしまうという点です。
インターフェースやデバイスのデザインにも力を入れ、ソリューションの先にあるエンドユーザーの体験を重視し、より良いサービスを提供していくことが重要だと考えています。
現時点ではキャラクターが完全に受け答えできるとは言い難いですが、一方で親しみのあるキャラクターには、大きな可能性を感じています。
お話を聞いた方
取締役副社長 最高技術責任者 QURIOS事業部長 長井健一 様
(聞き手・撮影:ロコアシ事業部長 あさい)
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