ティール組織②自分らしさをさらけ出すホールネスとは
前回はティール組織を構成する3つ中でセルフマネジメントについてでした。今回は「ホールネス」についてまとめたいと思います。
自分らしさをさらけ出す
これまで、そして今尚、自分らしさを抑え職場の期待を優先することが常識とされています。組織に属するためには制服や職業で地位を表す必要があります。組織とは統制されることで機能するという考えから、個々で自分らしさを出してしまうと職場が混乱するとされてきたからです。確かに軍隊などではそうでしょう。しかし自分らしさが職場でクリエイティビティを発揮するとしたらどうでしょうか。職場で活気もあり人生を充実させることができるのではないでしょうか。
「安心」できる職場環境
自分らしさ、つまりプライベートな顔を公開することは誰かから拒絶されたり非難されるかもしれません。それを怖いと感じるのは生きるために必要な処世術でもあります。従業員が安心してありのままの自分をさらけ出せる環境を作り出すことは容易ではありません。
現場で人々がその場で判断することによりニーズに合ったサービスができるようになるためにセルフマネジメントが重要でした。そして、それと同じくらい重要なのが人間性が刺激され他社を思いやることができる安全で開放的な環境です。パタゴニア社では幼児から幼稚園児の笑い声がオフィスまで届くそうです。子供は親のデスクまでやってきて、子供の面倒をみがらミーティングに参加することも珍しくありません。確かに仕事の効率は下がるかもしれません。ただ、このような状況で人々は同僚間の関係から愛情を持つもの同士であると変化し、議論の際に激しく非難することが無くなりました。
ティール組織とされるRHD社は推奨される行為と供に受け入れられない5つの表現とその詳細を定義しています。
・恥ずべきスピーチと行動
・陰口
・見捨てるという恐怖を与える
・ほかの人々の現実を無視する
・脅迫や怒りの爆発
では、安心して自分をさらけ出す為にはどのようなことをしているのでしょうか。
ストーリーテリング
社員同士の交流を促すイベントはあるが多くありますが表面的な関係を維持するだけで深い信頼関係を築くことは難しいかもしれません。しかし自分の物語を話すことは人々をまとめる力があります。今の自分が出来上がるまでに影響を受けた瞬間を語ることも大切です。新しい採用において新メンバーに対する希望を語ることもメンバーと同僚との物語の1つとなります。
オンボーディング
会社の価値観と基本ルール、共通の基準や言語を学ぶ研修を取り入れてます。ティール組織はそれだけではなく全社員で組織の目的や価値観を学び直し、自分やチームがどこまで達成できているかを考え、多くは年に一度のイベントとして開催します。または年に一度、全社員に送る調査を行い、Monthlyで価値観の浸透に関する課題を話し合います。
ホールネスを重視する会社にとって入社後の数日間あるいは数週間は新しい職場環境に慣れるためにとても重要です。それなのに多くの会社では数時間の社内研修をオンボーディングとしてるところが多いのが現状です。
オンボーディングはコミュニティーへ加わるための通過儀礼に似ています。組織の同僚と信頼関係を築くことで自主的に人を巻き込み承認を得て物事を実現することを容易にします。
研修
ティール組織では共通の文化を確立ための研修と自己啓発研修の2種類を行っています。日常業務に関する研修はありますが、多くは通常業務の中でフォローアップ研修やワークショップなどの形式で実施されています。入社したばかりで全てを覚えるのは難しいからです。
ミーティング
サウンドトゥルー社ではミーティングの開始と終わりに「感情」を自由に話すことが許されています。この慣行によりミーティング中には明かされることが無かったフィードバックをしたり、本音で話したりする文化が生まるからです。
議論への対処
紛争をしなくなると他人の言いなりになるか、防衛的になりすぎてしまうため、人間関係を正しくするためにはある程度の紛争は必要です。それはジブらしさをさらけ出すためにも必要で、相手を尊敬しながら議論できれば安心して問題提起をすることができます。それであれば対立はつらいものでは無くなります。ただし紛争はエゴが元で起こることが多いため、エゴの声をさらけ出しながらうまく議論を乗り越えなければなりません。ティール組織では対処法として以下の3つがあります。
・人々が緊張や対立を表面化しやすい環境を整えること
・当人同士で率直に議論しながら相違する意見を尊重するプロセスを行う(例:モーニング・スター社で遵守される紛争解決プロセスという議論プロセス)
・人間関係スキル(非暴力コミュニケーションなど)を教育する
建物と地位
オフィスや工場は思想と行動を形作ります。例えば自分だけが特別な高級な環境(ステータスシンボル)にいるとエゴを抑えることができません。ビュートゾルフ社の看護師たちはオフィスを自宅のように飾ることを推奨されています。
環境問題と社会問題
自分さらけ出すことができると人はあらゆる物と繋がっている感覚を抱き、自然環境にも意識が向かいます。AES社は上場時のレターで利益を損ねることになっても価値観を優先すると宣言しています。それは長期的な利益を見越しているわけではなく、価値観に拘ること自体が目標であるからです。パタゴニア社では資源のために包装を減らしましたが顧客から受け入れられました。ティール組織は何をするかより、どう取り組むか?正しいことは何か?という問いから出発します。これまで意思決定には自分らしさではなく数値化や客観性が求められていました。しかし誠実な気持ちでなすべきことを感じて行動すれば、いずれ理解されるのです。
採用
ティール組織では組織構造は流動的なのでどこかの部署に特化したスキルや経験は最優先事項ではありません。社員がやる気をだせば新しいするキルを身につけることは短時間で可能だからです。スキルよりもセルフマネジメントに向くかどうかを重視します。ザッポス社では4週間のオリエンテーション期間中に自社の文化に合わなくて辞める人には3,000ドルを渡しています。面接では正直にいること。よく見せようとすると後で後悔します。
ティール組織では採用の際に以下の3つの適合性を見ている
・役割:スキルと態度(従来型で重視されていた側面)
・組織の価値観:価値観(Value)とセルフマネジメント(コンピテンシー)への適合
・組織の存在目的:個人の存在目的(Will)との適合
職務記述書、役職、キャリア・プランニング
ティール組織にはジョブディスクリプションがありません。例えばあるスタッフが来客を丁寧にもてなすことを文章に表現するのは困難ですし、仮に詳細に職務を記載したとしても既に勤務しているメンバーに有害かもしれません。もちろん仕事を定義されないと不安に思う人も多いですが、必要な役割を自分で考え、自分に向き合うからこそ自分らしい行動で貢献できる。それは誰かに決められるものではありません。
フィードバックと実績管理
Randy SpitzerとRob Lebowの共書であるAccountabilityによると、多くの評価システムが統制を目的としたグレード判定を含むため、生き生きと仕事をしている人でさえ評価によって人を無気力にしてしまうとあります。評価システムのフィードバックは企業の利益のための必要な方向性に誘導しますが、それを強引に導こうとすると人は本心を隠すようになってしまいます。評価とはミスを断罪する場ではなく、もっと自分らしく働くにはどうしたらいいか、もっと才能を活かすには何ができるか?その障害になっていることはあるか?を話し合うことがでより成長することができます。
フィードバックの気をつけるためには以下の3点があります
・相手の立場になって面談に臨む
・客観的な言葉ではなく、自分の意見を伝える
・点数評価をやめる
上記のようなフィードバックを年次面談だけではなく日頃から行っているサン・ハイドローリックス社では年次面談でうまくいかないことを指摘することが無く、以下の質問が推奨されています。
・その従業員について称賛すべき特徴を述べること
・会社にどのような貢献をしたか尋ねること
・会社にどのような貢献をしたいかを尋ねること
・会社がその従業員にどのような支援をできるかを尋ねること
解雇
働くことが楽しいと思えるには適正な人数規模があり、それを超えると縄張り争いを生んでしまいます。
次回は組織システムの最後を構成する存在目的をまとめたいと思います。
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